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「海に沈むヴェネツィアを救う」としつつも完成が延びに延びていた防潮堤「MOSE」がようやく試験稼働に成功

By brando

水の都とも称されるイタリアの都市、ヴェネツィアは、1200年以上も前から高潮、アクア・アルタによる水害に悩まされてきました。過去には2メートル近くの浸水被害にあったヴェネツィアを、アクア・アルタから守るための防潮堤「MOSE」の試験稼働が2020年10月3日のアクア・アルタに合わせて行われました。

Venice holds back the water for first time in 1,200 years | CNN Travel
https://edition.cnn.com/travel/article/venice-flood-barrier/index.html

ヴェネツィアの防潮堤、「MOSE」がどんなものかは以下のムービーを見るとよく分かります。

Venice tests a new flood barrier system - YouTube


海中からせり上がってくる黄色い塊。


この大きな黄色いブロックのようなものがMOSEです。


MOSEはヴェネツィアをアクア・アルタから守るため、以下のようにブロックをいくつも連ねてヴェネツィアの潟とアドリア海を分断するようにして高潮を防ぎます。


MOSEは最大で300cmまでの高潮を防ぐことができるとのこと。


もともとヴェネツィアでは以下の画像のように、地面が見えなくなるほどの海水が街に押し寄せていました。


海水を避けるため、鉄の支柱と木の厚板で作られた歩道、ギャングウェイの上を歩く住民たち。


低層階に住む人は、アクア・アルタが発生するたびに家具などを避難させなければなりませんでした。


そんなヴェネツィアで、防潮堤MOSEが2020年10月3日に発生した約135cmのアクア・アルタに対して試験的な稼働を行いました。満潮となる現地時間の午後12時5分、以前は同等の高潮で約90cm浸水していた街が、MOSEの働きにより排水溝に大きな水たまりができる程度で済んだとのこと。

Twitterでも、ヴェネツィアで暮らす住民たちのMOSEの成功に驚く様子や喜びの声を垣間見ることができます。「もうすぐ満潮のピークですが、サン・マルコ広場は干上がっています。上手くいきました!」と喜ぶ人や……


「うまくいった! MOSEが高潮を止めた!今日のヴェネツィアでは高潮もなく、アクア・アルタもないなんて、信じられない」と興奮を隠しきれない人もいました。


「ヴェネツィアからの驚くべきニュースです。今シーズン初のアクア・アルタがMOSEで止まりました。朝から床から荷物を片付けていたのは、高潮のためではなく、ただの整理整頓のためだったようです。2020年に希望を持つのは怖い気もしますが……」とやや後ろ向きな感想を述べる人も。


MOSEの稼働を見守ったルイジ・ブルグナロ市長は「これはヴェネツィアにとって歴史的な日です。これまでは街のいたるところに水が流れ込み、大きな被害が出るのを何十年もの間どうすることもできませんでした。今回のMOSEの成功には非常に満足しています。私たちは、MOSEが高潮を防ぐだけでなく、19ノット(風速35km/h)のシロッコが吹く悪天候でも、MOSEが機能することを示すことができました」と語りました。

MOSEプロジェクト自体は1984年から進められてきましたが、建設コストの上昇や工事に関する元市長の汚職などもあり建設期間が延長。MOSEの工期がずるずると延びる中、アクア・アルタの頻度と被害は気候変動の影響により年々深刻さを増していきました。2019年11月12日に発生したアクア・アルタは最大で187cmの高さに達し、ヴェネツィアのほぼ90%が浸水被害にあっています。こういった事情もあり、ヴェネツィアにはMOSEに対していいイメージを持っていない住民も数多くいました。

2019年のアクア・アルタで大きな被害を受けた店舗経営者のセレナ・ナロン氏もその1人で、今回のMOSEの成功について「信じられません。私はMOSEをすごく疑っていました。MOSEは今まで何の結果も出さず、ただ多額の費用がかかっているだけだったので、ほとんど期待していなかったんです」と語っています。ヴェネツィアでバーを経営するフェデリカ・ミッシェラン氏も「潮流の予測を見たときは心配でしたが、MOSEがうまくいったときには、信じられない気持ちと幸せな気持ちの中間でした。期待していないときの方が、物事に感謝してしまいますね」とコメント。

Twitterでも「半信半疑だったけど、認めざるを得ない」とあまりMOSEに期待を寄せていなかった人もちらほら見られました。


MOSEは2021年12月に完成予定で、それまでは潮位が130cmを超える可能性があるときにMOSEを稼働するとのこと。MOSE完成後は基準が下げられ、潮位が110cmになるとMOSEが稼働します。しかし、この基準は90cmの高さで浸水してしまうサン・マルコ広場でアクア・アルタの水害が続くことを意味しており、住民からは懸念の声が上がっています。実際、2020年10月3日の時点では浸水被害はなかったものの、MOSE稼働から1日後のサン・マルコ広場は106cmの高潮によって水浸しになってしまいました。

以下のツイートでは、「(アクア・アルタが)戻ってきた」という言葉とともに、広場中が水につかった様子が掲載されています。


サン・マルコ広場のカフェでマネージャーを務めるロベルト・ペペ氏は「ヴェネツィア人としてはMOSEの成功はうれしかったですが、サン・マルコ広場で働く者としては何も変わらず、つらい気持ちが残ります。サン・マルコ広場は街の中心地であり、たくさんの人々に多くの仕事を提供しています。私たちはただここで働きたいだけなのです」とコメントしました。

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in 動画, Posted by darkhorse_log

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