地球温暖化が引き起こす海面上昇に湾岸部の都市は対抗しなくてはならない
地球温暖化が進むに従って極地の氷が溶かされ、海面上昇が引き起こされると考えられています。海岸沿いには多くの都市が存在していますが、海面が上昇すると豪雨などにより沿岸部が浸水する被害が増えると見られており、ニューヨークなどの都市では海面上昇に備えたプロジェクトを進めているそうです。
This is what sea level rise will do to coastal cities
世界には多くの湾岸都市があります。ニューヨークや……
アレクサンドリアなど、世界有数の都市が湾岸沿いに位置しています。
2019年の時点では、これらの都市の海岸線はくっきりと都市と隔てられていますが……
サイエンスエディターのMary Beth Griggs氏は、「100年後にはどのような海岸線になっているのか想像してみてください」と語ります。
地球上昇による海面上昇は、2100年までにかなり進行していると考えられます。すると、海岸線は今の都市部にまで浸食するおそれがあるとのこと。
ニューヨークのマンハッタン島なども例外ではありません。地球温暖化によって多くの湾岸都市が大きな変化にさらされている中、ニューヨークなどお金のある都市では大金を使って海抜上昇から都市を守ろうとしているそうです。
地球温暖化などの気候変動に関する研究報告などを行うNPOのClimate CentralでCEO兼チーフサイエンティストを務めるBenjamin Strauss氏は、「私たちは地球という冷蔵庫のプラグを抜いてしまいました」と語ります。
Strauss氏をはじめとする研究者らは、2100年までに地球の海面はおよそ4フィート(約1m20cm)ほど上昇すると見積もっています。
「一度冷蔵庫のプラグを抜いてしまっては、もはや元に戻せません。極地の氷は溶けていってしまいます」と、Strauss氏は警鐘を鳴らしました。
海面上昇の影響は湾岸都市に住む多くの人々に影響を与えます。国連によれば、6億人以上の人々が海抜30フィート(約9m)以下の場所に住んでいるとのこと。
今のところ2100年までの海面上昇は4フィートとされていますが、これまで以上に大量の温室効果ガスが排出された場合、海面上昇は10フィート(約3m)~20フィート(約6m)に達してもおかしくないとStrauss氏らは考えているそうです。
すでにマイアミのような都市では、豪雨や満潮が重なると道路に水があふれる事態も発生しています。
もはや海面上昇は現実の問題だとStrauss氏は語っています。
Climate Centralがリリースした「Surging Seas」というネットサービスは、海面が上昇するとどこが浸食されてしまうのかが視覚的にわかるようになっており……
世界中の都市について調べてみることが可能。
「気候変動は抽象的になる傾向にあり、多くの人にとって遠くにある問題に見えるものです。私たちはこれを現実的で身近なものにしたいのです」と語るStrauss氏。
そんな海面上昇問題に直面するニューヨークでは2019年の初め、マンハッタン島の最南端に位置する「ロウアー・マンハッタン」を守る野心的なプロジェクトが発表されました。
ニューヨークでは50フィート(約15m)~100フィート(約30m)の外壁を作り、海抜の低いマンハッタン島南部を守る計画を立てています。
もともとニューヨークは都市空間を拡張するために海を埋め立ててきましたが、今度は海から町を守るために工事を行うことになります。
しかし、プロジェクトにかかる費用は膨大なものになるとみられており、推定100億ドル(約1兆1000億円)もの費用がかかる可能性もあるとのこと。
ニューヨークの減災市長オフィスディレクターのJainry Bavishi氏は、マンハッタン島南部が直面する気候変動リスクに関する研究に協力しました。
Bavishi氏らは海面上昇だけでなく降水量の変化や気温上昇など、さまざまな危険に対処する措置を講じているとのこと。「満潮のたびに都市へ水が流れ込む様子を想像してみてください。ドアを開ければ通りに水があふれているような状況です」とBavishi氏は話します。
地下鉄に水が流れ込めばインフラに大きな影響があると予想され……
建物の基礎が腐食するおそれがあります。
こうした問題に対処するため、洪水のタイミングで跳ね上がる水門を都市の主要部に設置する計画があるとのこと。
洪水時には水門が跳ね上がり、低地に水が流れ込むのを防ぎます。
しかし、記事作成時点では資金をどのように調達するのかは不明であり、プロジェクトの詳しい部分については決定されていません。
しかし、水面上昇は都市計画に大きな変更を加える結果になるとGriggs氏は語ります。
ロウアー・マンハッタンには金融の中心地であるウォール街があり、経済の中心地となっています。
そのため、多くの仕事がロウアー・マンハッタンに集中し、地下鉄も多く通っているとBavishi氏は指摘。
ニューヨークの経済を守るためには、ロウアー・マンハッタンを守らなければならないとのこと。
海面上昇はすでに一部地域で被害をもたらしており、アラスカ州やルイジアナ州の一部では、海岸の浸食が進み移住を余儀なくされている人々もいるそうです。
また、アメリカでは2045年までに31万軒以上の建物が慢性的な洪水に対し脆弱になるそうです。
人々や経済が集中した都市を動かすことが現実的でない以上、都市は多額の資金を費やして現在の都市を守るだろうとStrauss氏は指摘。
海岸線が一瞬で上昇するという可能性は低いですが、海面上昇のスピードが上がる可能性は十分にあるため、湾岸都市は現実的な脅威として海面上昇に対処する必要があるとムービーは訴えています。
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