サイエンス

10日連続で深酒すると脳のニューロンがぶっ壊れるという研究結果


「酒は百薬の長」という言葉はありますが、実際にはアルコールが体にどんな影響を与えるのかは詳しくわかっておらず、記事作成時点でも研究が続けられています。そんなアルコールを連日大量に摂取すると、脳のニューロン(神経細胞)が破壊され、不安を誘発することが実験で確認されました。

Daily alcohol intake triggers aberrant synaptic pruning leading to synapse loss and anxiety-like behavior | Science Signaling
https://stke.sciencemag.org/content/13/650/eaba5754


Ten days of binge drinking disrupts neuron connections, causes anxiety and other cognitive problems
https://www.zmescience.com/science/biology/binge-drinking-synapse-disruption-0523532/


研究を発表したのはポルトガルのポルト大学細胞分子生物学科の主任研究員であるJoao Relvas氏の率いる研究チーム。Relvas氏らは、アルコールが脳に与える影響を調べるため、オスのマウスに10日間連続でアルコールあるいは水をチューブで与えました。アルコールを与えられた中毒群のマウスは、体重1キログラムあたり1.5グラムのアルコールを摂取したとのこと。


すると、水のみを与えられたマウスにはほとんど変化がなかったのに対し、アルコールを与えられたマウスにはシナプスの機能障害が見られ、不安を思わせる行動が目に見えて増加したとのこと。そこで、マウスの脳組織を分析したところ、大量にアルコールを摂取したことで、脳で最も重要な部位である前頭前野にある神経細胞がミクログリアによって破壊されていたことがわかりました。

以下は、水を与えられたマウスのミクログリア(左)と、アルコールを与えられたマウスのミクログリア(右)の写真です。右の写真には、前頭前野の神経細胞を巻き込んでいるミクログリアが写っています。


脳脊髄中に存在するミクログリアは、神経細胞と共に脳を構成するグリア細胞の1種で、脳と脊髄を守る免疫細胞としても機能します。また、前頭前野は複雑な認知や意思決定処理を担当する部位で、脳の最高中枢と考えられています。

Relvas氏は「アルコールによるシナプス機能障害は、神経伝達を低下させ、マウスの不安な行動を増加させました。これは、アルコールの大量摂取が神経細胞の接続を破壊するミクログリアを活性化させ、不安を誘発させていることを示唆しています」と述べています。

また、研究チームが多発性骨髄腫の治療薬であるポマリドミドをマウスに投与したところ、炎症を引き起こすTNFという物質の産生が阻止され、シナプスの破壊が起こらなかったこともわかりました。

研究チームは、今回の研究結果は、TNFを調節する薬物がアルコール依存症の治療や脳へのアルコールの影響緩和に役立つ可能性を示唆していると主張し、人間による臨床試験で調査する必要があると述べています。


ただし、「大量のアルコール摂取は脳のみならず、心臓・肝臓・すい臓・免疫機能にも悪影響を及ぼします。そのため、脳の影響緩和に役立ったとしても、連日お酒を飲む酒飲みにTNF阻害薬を安易に投与すべきではありません」と、Relvas氏。研究チームは「アルコールによって生じる問題の最善の治療法は予防であり、アルコール摂取を適度に抑えるか、あるいはまったくお酒を飲まないのに限ります」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
気絶するまで飲酒すると認知症のリスクが倍増する - GIGAZINE

アルコールを飲むと免疫機能はどんな影響を受けてしまうのか? - GIGAZINE

「適量」の飲酒であっても脳卒中のリスクは高まるという研究結果 - GIGAZINE

アルコール入りの消毒剤を手に塗った男性が「謎の二日酔い」で病院送りになってしまう - GIGAZINE

ビールを飲み過ぎた男性の膀胱が破裂する事件が発生 - GIGAZINE

ロシアにおける「アルコール問題」の歴史とは? - GIGAZINE

新型コロナウイルスによって「女性の飲酒量」が増えている - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.