インタビュー

「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」京極尚彦監督&近藤慶一プロデューサーインタビュー、「子どもが『誇らしい』と思える展開を」


アニメ『クレヨンしんちゃん』の映画シリーズ第28弾、「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」が、新型コロナウイルス感染拡大の影響による延期を経て、2020年9月11日(金)に公開されました。

本作で監督を務めるのは『ラブライブ!』や『宝石の国』で知られる京極尚彦監督。自身で「怪作」と表現するこの作品をどう作ったのか、京極監督とシンエイ動画・近藤慶一プロデューサーに話をうかがいました。

『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』公式サイト
https://www.shinchan-movie.com/

GIGAZINE(以下、G):
今回の『クレヨンしんちゃん』の映画、いろんなことがてんこ盛りになっていて「やりたい放題やっている」ように見せつつも、「絶対に子どもだましにはしない」というようなリアルさと執念をあちこちの描写の細かさから感じました。SF映画っぽさも感じたのですが、今回、どういう映画を目指して作られたのでしょうか?

京極尚彦監督(以下、京極):
今までの『クレヨンしんちゃん』にもそういう作品はあるけれど、気取らず笑ったりワクワクしたりできる冒険活劇を単純に作りたいと思っていました。むしろ、変に力まないように自然体で自分が作れる料理を次々と出していったという感じです。

G:
映画公式サイトに、2020年8月1日に掲載された公開日決定のお知らせの中に、京極監督から「私は映画が大好きです。子供の頃、映画館に行くとワクワクしたのを覚えています。でも、一瞬で映画館の存在を遠く感じてしまうような状況が生まれてしまいました」とコメントが寄せられていました。監督が子どもの頃に映画館で見てワクワクした映画とはどういったものでしたか?

京極:
『ドラえもん』と『ゴジラ』、あとはスタジオジブリ作品……。わりと『ドラゴンボール』とかも見ていた、普通の子どもでした。

G:
今回の映画を制作する上での「楽しくワクワク」というイメージは、子どもの頃に見た映画の延長線上というものがあるんでしょうか?

京極:
そうですね。子どもが見たときに「よくわかんなかったな」と言われるのが一番嫌だと思っていました。『クレヨンしんちゃん』はすごくいろいろな人が見てくれますが、本筋としては冒険活劇ではありながら、全ての世代にサービス精神を向けて自分が思いつくものはなんでも入れていったので、そこが見方によっては「てんこ盛り」と感じる部分なのかなと思います。それでもその中で、「何を見せたいか」という点はブレずにできたかなと思います。

G:
そのような中で、特に一番強く見せたいと思ったのはどのような点ですか?

京極:
冒険活劇を作りたいなというものと同時に、制作として『クレヨンしんちゃん』をずっとやってきたわけでもない僕の視点から、子どもたちがずっと知っている『クレヨンしんちゃん』の中に「クレヨン」ってあまり出てきてないなと単純に思いました。

「描いたものが現実になる」というアイデアは自分の中にあったのですが、似たイメージが原作にも登場していると耳にしたので、それならば結果としてSFっぽくなってもギリギリ大丈夫だろうなと勇気をもらって、「クレヨンで描いたラクガキが現実に」というイメージを推しだしていくことになりました。


G:
双葉社のムック・声優MEN Vol.17に掲載されたインタビューの中で、まず劇場版のオファーがあった京極監督は「アニメの世界観を全く知らないので、まずはTVシリーズをやらせてほしい」ということで2018年にTVシリーズの絵コンテ・演出を数本手掛けた、とのことでした。TVシリーズを手がけてみて、監督が理解したところの「クレヨンしんちゃんの世界観」というのはどういったものなのでしょうか?

京極:
言葉にはしづらいですが……しんちゃんたちの世界は基本的に、映画で見るようなしんちゃんがはりきって駆け回るドラマではなく、日常や家族といったたたずまいがあるんです。そういった雰囲気の部分をTVシリーズでやらせてもらったというのは大きいと思います。

G:
近いところを近藤プロデューサーにも伺いたいのですが、どういう理由で京極監督にオファーをしようということになったのでしょうか?

近藤慶一プロデューサー(以下、近藤):
僕が長編をプロデュースする作品としてはこれが1本目になっていて、担当するにあたって監督を考えなければならなかった。となったとき、アニメ監督として京極さんはそれ以前から気になっていたんです。『宝石の国』を見て、僕は原作も読んでいましたが、原作ものアニメとしてわかりやすくかみ砕かれた上で演出されていました。加えて、原作ではなかったキャラクターのコミカルな演出も、ギャグではなく動き回ることでの面白さ、アニメーションの原点というような部分をしっかり掴んでいる方だなと。

また、『ラブライブ!』第1話のぶっ飛びっぷりを見て、これができる人は相当だと思っていました。「TVシリーズなのにこれは映画だ。映画の構造をしっかり理解しているし、アニメとして魅力的に見せる部分を分かっている人だ」と思い、一緒に仕事をしたいとオファーしました。これを直接監督に言うのはアレですが(笑)

京極:
ありがたいですね(笑) 仕事を受ける前にもお会いして、そのことはなんとなくうかがっていました。

G:
実際に近藤プロデューサーから映画クレヨンしんちゃんのオファーを受け取って、どのように思いましたか?

京極:
オファーをもらったとき、オファーだと思わずに家に帰りましたからね(笑)。本当、かみ砕いて理解するのにはそれぐらい時間がかかりました。僕からすると『クレヨンしんちゃん』って、はるか遠くの人が作っている作品だなぁという感じだったので、急に「アメリカに行かない?」と言われたくらいピンと来ない感じでした。でも、直感的にやってみたいなとは思いました。『宝石の国』から『クレヨンしんちゃん』に行くとは誰も想像しないだろうし、CGも好きで作画も好きな自分としてはそれらが混ざっていいものができるのではないか、と思う部分もありました。

G:
CGといえば、京極監督のプロフィールに「宝塚造形芸術大学卒」とあるのですが、ここを選んだ理由は何かあったのでしょうか?

京極:
単純に近かった……近かったといっても距離は遠いんですが、コンピューターで美術をやる1期生か2期生だったんです。当時、家ではコンピューターグラフィックス(CG)はできなかったので。完全に勢いですね。そのときは、アニメを仕事にとは思っていませんでした。

G:
そうなんですね。そもそもCGをやりたいと思ったきっかけは何だったのですか?

京極:
……なんでしょうね? もともと作るのは好きだったので、子どものころは紙にマンガを描いてみたり、ビデオテープで映画を撮ってみたり、そういうのが好きでした。その流れで「近所の大学でCGできるぞ」と耳にしたので行ってみたいなと。何か作りたいと明確に思っていたというよりは、そういうものに触れていたかった時期なのかもしれません。

G:
そのような中でアニメの業界に行こうと思った経緯はどういったものだったのでしょうか?

京極:
大学で学んだCGを生かせる仕事に就こうと、初めはミュージックビデオの監督を目指していたんですが、ツテもないし関西在住でどこの会社がいいというのも分からなかった。実写も含め複数の企業を受けていく中にサンライズがありました。ただひとつ勘違いをしていて、サンライズは正規採用じゃなくてアルバイトを募集していただけだったんです。それで受かって、バイトで入りました。

G:
勘違いからバイトで入って、今や『クレヨンしんちゃん』の映画を制作とは、ものすごい。

京極:
おおらかな業界だったから向いていたのかもしれないですね。

G:
近藤プロデューサーにキャスティングのことを伺いたいのですが、ぱっと目についたのは、きゃりーぱみゅぱみゅさんが声優を担当している点です。映画を見てみると、違和感なくハマっていましたが、どのような経緯でキャスティングされたのでしょうか?

近藤:
きゃりーさんに関してはしんちゃんと親和性が高い方というのが第一にありました。TVシリーズでOPを歌ってもらったり、本人役で本編に出演いただいたこともあったり。その後、OPが変わって少し経ち、NHKできゃりーさんが声を当てている作品をそれと知らずに見た時に「上手い方だな」と思ったんです。調べてみるときゃりーさんだった。プロデュース陣と確認して、京極監督に予告編などで演技指導して頂き、本編アフレコに臨めました。

G:
監督としても声のイメージでいけるなと感じたのでしょうか?

京極:
最初は、他がベテランの声優さんなのでタレントさんだと差は出るかもしれないと思ったのですが、結果として、きゃりーさんの出している声を変に加工せずにそのまま出そうとしたのが、お客さんにとって自然に見えるようになったのは良かったかなと思います。声優さんは声優さんでちゃんとした声を作られますが、タレントさんに当ててもらうなら声優さんと一緒のことをやりすぎてもつまらないし、かといって浮いてしまうとお話を邪魔してしまう。毎回そういったところはバランスをとるのが難しいなと神経を使うので、違和感なく見てもらえたのであれば嬉しいです。

G:
公式サイト掲載の京極監督のメッセージは「今作は、しんちゃんと新たな仲間たちとの出会いが織りなす明るく楽しい冒険活劇です。思いっきり笑ってハラハラドキドキして、少しホロリとくる場面もあったりなかったり…!? 難しい事なんて考えなくていい、とにかく夢がいっぱいでワクワクする映画を作りたい。そうした気持ちがラクガキングダムという作品を生んでくれました。今はただただ、この映画を一人でも多くの人に見て欲しいです。公開の瞬間を、私を始めスタッフ一同、しんのすけたちと一緒に、お待ちしております!」というものでした。今回、実際に映画を拝見した直後の印象は「すさまじい映画を見てしまった……」というものでしたが、勢いよく突き進むような方向性は、オファーがあった段階から監督が決めていたものなのか、それとも作っていくうちに方向性が固まっていったものなのでしょうか?

京極:
最初から冒険活劇がしたくて、クレヨンが勇者の剣のようなキーになる、というところからイメージがありました。ニセななこなどは原作にも出てくるので、桃太郎とかロビン・フッドみたいなベタな感じもいいかなと。そういった方向性は固まっていて、それぞれの展開などはプロデューサーさんや脚本の高田亮さんと打ち合わせながら書かれていった部分もあります。


G:
最初の展開から、ものすごい勢いでした。

京極:
ラクガキングダムが危ないというところから始まって、尺が限られている中で「一度逃げた人物が仕返しをする」というような時代劇のような流れで討ち入りっぽい感じになったのは、結果としてそうなったかなというところです。

G:
プロデューサーとしては、激しい導入部分はどうでしたか?

近藤:
高田亮さんによるロングプロットの中で既に形ができていたもので、この映画がどのような対立構造のある映画なのかを見せ、どういう解決をしなければいけないかを冒頭で提示してくれたんだと感じました。空に浮かぶラクガキングダムが落ちてしまうかも知れないという構造をただ説明するだけではつまらないので、激しいアクションシーンの流れの中で描くという計算された構成だと感心しました。

G:
本作はアクションシーンで印象に残る部分が多々ありました。春日部が混乱に陥っていくめまぐるしい展開は、見ていてとにかく面白かったですが、これは制作側としては大変だったり苦労したところでしたか?

京極:
僕も、しんちゃんだからそこまでできたというのはあるかもしれません。シンエイ動画の方々には「なんて絵コンテを描いているんだ」と思われたかもしれませんが(笑) 個人的にはやはり『クレヨンしんちゃん』は動いているイメージがあって、それに子どもは2回同じアクションがあっても飽きちゃうだろうと。動かしまくっても疲れちゃうから、逆にどこで止まるかということも意識しました。ここまで動かすのは僕としては経験にないことでしたので、挑戦ではありました。


G:
今回、『クレヨンしんちゃん』ならではの演出の難しさなどはありましたか?

京極:
TVシリーズで慣れちゃってて、わかんないかもしれない(笑) 「笑ったときは正面を向けない」などのお約束があるので、最初はそういった「様式」を入れていくのが難しいなと感じました。それを「自分が知らないからやらない」というのは避けたいなと思っていたので、TVシリーズをやったことは力になったなと思います。

今のアニメだと時間をかけてたくさんの人で作ることもあるけれど、しんちゃんは今でもひとりの作画さん、ひとりの演出さんが時間をかけて担当していくなど、個人の色が出やすくなっています。意外と今のアニメは分業化が進んでいて、深夜アニメなどでは、演出家に注目する機会が減ったと思います。「今回は絵が違うな」みたいなことも減って。でも、『クレヨンしんちゃん』ではそれがあるので、個性を出して映画を作りたいなとは思いました。

G:
劇中に出てくるラクガキ、いかにもリアルなラクガキだなと思っていたら、エンディングにものすごい量のクレジットが出て「ホンモノだったんだ」と納得しました。子どもたちがよく描くようなラクガキがある一方で、かなり上手なものまで、かなり幅広いものが出てきますが、劇中に登場するラクガキはどのような基準で選んでいったのですか?

京極:
あれは、製作委員会のみなさんで、ラクガキングダムのエネルギーといえば「子どもが持つのびのびした力」だということで、実際の子どもたちのラクガキが出た方が説得力も出るしみんな嬉しいだろうと。しんちゃんの映画の中でやって損なことはないし、いい面がたくさんあったのでぜひやりたいとなりました。それでも募集するとなると、精査して切り取ってと工程が必要になるので、その面では僕じゃないところで苦労を任せてしまいました。選ぶ方だと近藤プロデューサーに力を入れていただきましたね。

近藤:
募集要項にはかなり力を入れました。ラクガキを描いてもらったからといって何かをお返しも出来なかったのですし、作品の中に出てくると本編だけではなくBlu-rayをはじめとした媒体にずっと残ってしまうので気をつかう必要があります。ただ、結果として全体で3000枚も送って頂きました。これは本当に有り難かったです。

G:
3000……それはすさまじいですね。

近藤:
「既存のキャラクターはダメだよ」と募集要項に書いていたのですが、やはり、みんなキャラクターを描いてしまっている……のはしょうがないことなのですが、「自分たちが知らないだけで実は何かのキャラクターだった」ということがないようにという点にはかなり気をつかいました。監督は絵コンテを描いて、演出して、と本編制作を進めている最中でしたので、最終的に僕一人で一枚一枚チェックしていきました。その後、OKのものは監督にも見ていただいて先に進んだので、監督も結構な枚数をチェックしてもらいましたね。

G:
ラクガキを実際に見てみてどうでしたか?

京極:
頭身がしっかりしているものもあって「みんな、絵うまいな」って思いました(笑)。ラクガキングダムの住人みたいに描かれるパートもいくつかあるのですが、それだけだと登場が一瞬すぎるので、歌ったり踊ったりとフィーチャーするパートを作りました。思ったよりシュールで混沌としたパートになって、僕は好きなんです。「どういう感情でここを見るんだろう」とお客さんに投げかけているかのような(笑)

G:
確かに、「いったい何を見ているんだろう」というシーンはありました(笑)

京極:
「楽しい気持ち」という雰囲気を作れたのは子どもたちのラクガキのおかげだと思います。

近藤:
ラクガキのCGに関してはCGIの飯塚智香さんにがんばってもらいました。一人で全部やってもらいましたから。

G:
映画を見ていて「大変なことをやっているな」とは思っていましたが、見ている側が思っている以上に大変だったのですね。

京極:
あまりCGを多用しているわけじゃないですが、アナログで描かれたものをCG加工するというような、面白いことはできたかなと思います。作業者にしか分からない細かいラクガキの動きもあると思うので、僕もインタビューで聞きたいくらいです。

G:
あまり細かい部分はネタバレになってしまいますが、今回しんのすけと旅をするラクガキたちとの関わりや展開は、なかなか壮絶なものでしたね……。

京極:
冒険活劇は、それだけではないにしても、やっぱり「人との出会いと別れ」というヒューマンドラマの部分があると思います。また、仲間が「ラクガキ」である以上は、しんちゃんとずっと寄り添うことはできないので、どこかで必ずお別れは来ます。その切なさ、来たるべくしてくる別れというのがこの作品にはあるので、そこをあまり押しつけがましくならないように、過剰に泣かせようとはせず、当たり前のように描いてそのまま出したというところはあります。僕としては、昔の映画では情緒的なところとかあるよなという思いもあって。

G:
最近の映画でここまでズバッとやるのはすごいなと、印象に残りました。

京極:
クライマックスがほぼ曇り空というのは、あんまりないかもしれないですね(笑)

G:
しんちゃんがいることで不思議な空気も「『クレヨンしんちゃん』ならこれもアリ」な感じですが、もし『クレヨンしんちゃん』以外ならとんでもない状況だなと思いました。子ども連れの方も多数見に来る作品ですが、制作時、お父さんお母さんの反応は意識していますか?

京極:
基本は子どものためにあるべきものだと思っています。でも、僕も子どもの頃の感覚がまだ残っているので、そんな自分の感覚で楽しめるように作れば、親御さんの世代もきっと楽しんでもらえるだろうと。

G:
近藤プロデューサーは本作が初プロデューサーとのことですが、『クレヨンしんちゃん』のように長く続いている作品だとプレッシャーなどありましたか?

近藤:
プロデューサーとしては1本目ですが、制作として4~5本関わっているので、「ついにやれるな」という楽しみの方が大きかったです。プレッシャーは、作っていく中で感じるところはありましたが、最後まで京極さんと向いている方向がズレる事がなく不安はありませんでした。

G:
完成品を見てどうでしたか?

近藤:
ダビング中から、荒川さん藤澤さんの音楽が載ると、グッとくるとことは何度見てもグッとくる。ラクガキするところに関しては画と音のマジックとも言うべき、その感情の流れに自分も沿うことができ、「しくったなぁ」と思うところもなく、「どうぞ見てください」というものを出せたと思います。挑戦的な布陣で挑んだ本映画の熱量を是非劇場で体感してもらいたいです。

G:
監督は、作り終えてみてどうですか?

京極:
作っている途中はあらが見えて「ここ直したい、あそこ直したい」となるものですが、終わって試写をした時には、自分自身も感動できました。自分自身の達成というより、このスタッフたちと作れたということで、よかったなと。この前に見直したときもそうだったので「やっと見てもらえるな」という感じです。

G:
今回『クレヨンしんちゃん』という作品を担当するにあたり、「オファー時点の想像よりも大変だった」という点や「実際に大変だったが結果としてうまくいったな」というようなところはありましたか?

京極:
「ここのシーンが特に」というのはないですね。アタマのシーンから最後のシーンまで、派手なところも地味に面白いところもあって、自分としてはどこが一番と優劣はつけたくないものでした。それぞれのパートに魅力があります。ただそれとは別に、「映画が成り立ったな」と達成感を感じたのは1点あります。しんちゃん自身が楽しいという気持ちで大きな難題を解決するという場面で、「そんなんで解決できるわけないじゃん」と思わせてしまったら映画として成り立たない。そこを、子どもの力で解決しきったことをアニメーションの力で表現できたということに、制作全体として達成感があります。

アメリカ映画だと「誰かが犠牲に」とか「ヒーローが登場して」の解決がありますが、こういう形の「子どものパワーで」というのは意外と最近珍しいんじゃないかなと思います。子どもの視点として「誇らしい」と思えるような。

G:
なるほど。映画を見た帰りに「とにかくすごいものを見たけれど何がすごかったんだろう」と話が弾みましたが、これだという意見にはたどり着けませんでした。そこには物語が正しく成立しているという点と、子どもの視点から見た偉大さのようなものがあったのかもしれませんね。

京極:
これに関してはひとつの要素でクリアしたわけではないので、やはりどのシーンというよりは全体だと思います。アフレコ現場も「やっちゃえばー」というような、お祭りみたいな感じでしたし(笑)、実際に子どもさんに来てもらったこともあって、そういう積み重ねが実を結んだのかなと思います。この1年で特に「怪作」ではないかとも思います。王道のようで王道ではない、奇っ怪な作品が生まれたんじゃないでしょうか(笑)

G:
そうですね。見ていると王道のように感じつつも、とにかく「とんでもないことが起こってるぞ」という印象が強かったです。

京極:
映画って、見終わった後に喫茶店とかでいろいろしゃべれる方が好きなので。「あれはどうなんだろう」とか(笑) 見返してもらうと発見がある部分だったり。

G:
最後に、インタビューを読んでこの映画に興味を持った読者に、監督から一言お願いします。

京極:
僕は、映画を見た後に楽しいと思ったりワクワクしたり、違う力がもらえる瞬間が好きです。この作品が、お客さんがふらっと見に行って、終わった後に景色が変わったり、走りたくなったり、チャレンジしたくなるような、あるいは行動を起こしたくなる奮い立たせるものになっていると嬉しいです。床や壁のラクガキは自己責任ですが(笑)

G:
本日はありがとうございました。

「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」は本日・2020年9月11日(金)ロードショーです。


『映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』TVCM やっちゃえば篇【大ヒット上映中】 - YouTube

©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「映像研には手を出すな!」湯浅政明監督インタビュー、「すごいアニメを作っている」作品をいかに作り上げたのか - GIGAZINE

「楽しいアニメーション制作」を描き出す「映像研には手を出すな!」プロデューサーのチェ・ウニョンさんにインタビュー - GIGAZINE

「映像研には手を出すな!」原作者・大童澄瞳インタビュー、アニメは「主人公3人が違っても構わないつもりだった」 - GIGAZINE

「1作品完全燃焼」な暴れ馬スタッフたちの手綱を取るTRIGGERの大塚雅彦社長に「プロメア」制作の裏側や経営のことについてインタビュー - GIGAZINE

映画『プロメア』今石洋之監督&脚本・中島かずきインタビュー、「クールでスタイリッシュ」がありつつ「いつものマッドでクレイジー」な作品が誕生 - GIGAZINE

in インタビュー,   動画,   映画,   アニメ, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.