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ソニー製カメラで天体写真を撮影すると発生する「星食い」問題とは?


街明かりの少ない山中に出かけて夜空を見上げると、街中とは比較にならないほど大量の星が目に飛び込んできます。光り輝く夜空はカメラで撮影し、いつまでも手元に残しておきたいものですが、ソニー製カメラで撮影した天体写真は「星食い」と呼ばれる問題によって「星が消えたり穴ができたりしてしまう」と、天体愛好家のMark Shelley氏が語っています。

Sony Star Eater
http://www.markshelley.co.uk/Astronomy/SonyA7S/sonystareater.html

ソニー α7Sで撮影した「星食い」が発生していない天体写真がこれ。


次に星食いが発生している写真を見てみると、星の明るさや色が変化してしまっていたり、中央に穴ができてしまったりしています。


以下の画像も同じくソニー α7Sで長時間露光し撮影したもの。星に穴が空いているのがよくわかります。


カメラはイメージセンサーによって光を画素ごとに認識しますが、周囲の画素よりも極端に明るく写ってしまうなど、正常に機能しなくなった画素はホットピクセルと呼ばれます。ソニー製カメラの一部モデルには長時間露光時にホットピクセルを除去するためのアルゴリズムが備わっていますが、誤動作によって天体そのものも除去されてしまうことがあるとのこと。この誤動作は星が消えてしまうことから「星食い」問題と呼ばれ、ソニー製カメラで天体写真を撮影する際の悩みの種でした。

星食いの仕組みは次のとおり。カメラは赤、青、緑に区分けされたカラーフィルターに光を通して色を分解します。ここでカラーフィルター上の赤い9つの画素に注目。


ソニー製カメラに搭載されたアルゴリズムは、中央の画素が周囲の8つの画素よりも明るい場合、中央の画素の明るさを「周囲の8つの画素の明るさの最大値」に調整するとのこと。青色、緑色のフィルターでも同様の調整が行われます。


しかし、夜空の天体を撮影した場合、天体の光を集めた画素以外の画素は真っ暗な状態。この状態でアルゴリズムが動作すると、周囲の暗闇の明るさにあわせて天体を消してしまったり……


中央だけ穴ができてしまったりするとのこと。これが星食い問題のメカニズムです。


星食い問題はソニーのα7、 α7R、α7S、α7 II、α7S II, α7R II, α9、α6000シリーズでBULB撮影を行うと発生。さらに、一部の機種はがファームウェアアップデートによって、BULB撮影に限らず4秒以上の露光撮影で星食い問題が生じるようになってしまったとのこと。機種ごとの発生条件は以下。

◆α7、 α7R、α7S、α7 II:BULB撮影時のみ発生
◆α7S II:
・ファームウェア v1.0:BULB撮影時のみ発生
・ファームウェア v1.10~v3.30:BULB撮影時および4秒以上の露光撮影時で発生
・ファームウェア v4.00:BULB撮影時および4秒以上の露光撮影時で発生、緑のセンサー部では軽減されたが他色で悪化
◆α7R II:
・ファームウェア v1.0:BULB撮影時のみ発生
・ファームウェア v2.00:不明
・ファームウェア v1.10~v3.30:BULB撮影時および4秒以上の露光撮影時で発生
・ファームウェア v4.00:BULB撮影時および4秒以上の露光撮影時で発生、緑のセンサー部では軽減されたが他色で悪化。おそらくα7S IIのv4.00と同様のアルゴリズムを使用
◆α9:BULB撮影時および4秒以上の露光撮影時で発生、緑のセンサー部では軽減されたが他色で悪化。おそらくα7S IIのv4.00と同様のアルゴリズムを使用
◆α6000:BULB撮影時および4秒以上の露光撮影時で発生、緑のセンサー部では軽減されたが他色で悪化。おそらくα7S IIのv4.00と同様のアルゴリズムを使用。

アルゴリズムによって星食い問題が発生しているのは確かですが、その効果が気になるかどうかは撮影者が天体写真に求める期待値、使用する機材、撮影技術、処理技術、画像の利用方法によって変わるとのこと。例えば天体に焦点を正確に合わせたり、赤道儀式架台を用いて地球の自転影響を抑えることができる機材をそろえたりしていれば、星の光が拡散せず小さくなるため、星食いの影響はより顕著なものになります。また、高解像度の天体写真を専用のソフトで処理する場合は、撮影した星にわずかなダメージが残ることも許されないとShelley氏は語っています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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