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世界最大級の電波望遠鏡が原因不明の事故で崩壊して稼働停止

by JidoBG

アレシボ天文台はプエルトリコのアレシボにある、直径305メートルの球面反射面を使った世界最大級の電波望遠鏡を抱える天文台です。そのアレシボ天文台の反射面の一部が崩壊する事故が発生したと報じられています。

Broken Cable Damages Arecibo Observatory | University of Central Florida News
https://www.ucf.edu/news/broken-cable-damages-arecibo-observatory/


Arecibo radio telescope goes dark after snapped cable shreds dish | Science | AAAS
https://www.sciencemag.org/news/2020/08/arecibo-radio-telescope-goes-dark-after-snapped-cable-shreds-dish


1963年に建設されたアレシボ天文台は、2016年に中国で直径500mの電波望遠鏡「FAST」が完成するまで、単体で世界最大の電波望遠鏡として知られていました。人類が初めて太陽系外の知的生命体に送信した電波信号「アレシボ・メッセージ」は、このアレシボ天文台の電波望遠鏡からヘルクレス座星団M13に向けて送られています。


アレシボ天文台はアメリカ国立科学財団(NSF)による支援のもと、「国立天文学電離層センター」として40年以上運用されましたが、2007年にNSFが「主な天体観測拠点はハッブル宇宙望遠鏡に移行している」として、1050万ドル(当時のレートで約13億円)だった年間予算を800万ドル(約10億円)に削減。

さらに、2017年には200万ドル(約2億1000万円)にまで予算が削減された上にハリケーンの直撃で一部損傷する憂き目に遭い、アレシボ天文台の閉鎖も危ぶまれました。その後、修復されたアレシボ天文台は、2018年にセントラルフロリダ大学など3団体に管理が引き継がれ、2020年時点もなお現役の電波望遠鏡として運用されています。


また、アレシボ天文台は、映画「007 ゴールデンアイ」やドラマ「X-ファイル」などの撮影現場に使われていることでも有名。以下は映画「007 ゴールデンアイ」でジェームズ・ボンドが敵と一騎打ちを繰り広げる場面で、アレシボ天文台がロケ地に選ばれています。

GOLDENEYE | Bond vs Trevelyan - YouTube


また、人気シューティングゲーム「Battlefield 4」のステージとしても登場します。

Battlefield 4 Playstation 4 Gameplay - Rogue Transmission - YouTube


アレシボ天文台を管理するセントラルフロリダ大学によれば、事故が発生したのは2020年8月10日午前2時45分(現地時間)のこと。電波望遠鏡の副鏡の金属フレームを支える鋼鉄製の補助ケーブルが切れてしまい、そのまま直径305メートルもある主鏡の反射面に衝突。その結果、反射面に30メートルほどの割れ目ができてしまいました。また、副鏡の金属フレームの一部もねじ曲がってしまったとのこと。


電波望遠鏡は主鏡に反射させた電波を副鏡で受信する仕組みであるため、反射面が崩壊したりフレームがねじ曲がってしまったりすると、電波望遠鏡としての役割を果たせなくなってしまいます。そのため、アレシボ天文台は稼働停止を余儀なくされてしまいました。なお、補助ケーブルが切れてしまった原因は、記事作成時点では不明だそうです。

アレシボ天文台のディレクターであるフランシスコ・コルドバ氏は「私たちは状況を評価する専門家チームを待っています。私たちはただ、スタッフの安全を確保し、施設と設備を保護し、できるだけ早く施設をフル稼働に戻したいだけです。そうすれば世界中の科学者に貢献することができます」と語っています。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by log1i_yk

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