サイエンス

アレシボ天文台の900トン超の受信機が落下して主鏡を粉砕


3カ月間で2度の大事故を引き起こして解体が決定されたアレシボ天文台で、900トン超の受信機が140メートル落下し、主鏡を粉砕する事故が生じました。同天文台は直径305mの反射面を持つ世界最大級の電波望遠鏡を有しており、映画「007 ゴールデンアイ」の舞台になったことでも有名でした。

Arecibo Observatory’s 305-meter telescope suffers collapse | NSF - National Science Foundation
https://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?org=NSF&cntn_id=301737

Arecibo radio telescope’s massive instrument platform has collapsed | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2020/12/arecibo-radio-telescopes-massive-instrument-platform-has-collapsed/

The Arecibo Telescope Has Suffered a Fatal Collapse, Smashing It Into Pieces
https://www.sciencealert.com/the-arecibo-telescope-platform-has-collapsed

Arecibo Observatory in Puerto Rico collapses as engineers feared - The Verge
https://www.theverge.com/2020/12/1/21754959/arecibo-observatory-platform-collapse-dish-puerto-rico-telescope

アレシボ天文台は太陽系外生命体に向けてメッセージを送るというプロジェクト「アレシボ・メッセージ」の送信や小惑星観測などに使われてきた巨大天文台です。1963年に建設されて以降、50年以上にわたって単体での「世界最大の電波望遠鏡」とされていましたが、この地位は2016年に建設された中国の500メートル球面電波望遠鏡に奪われています。

2020年、そんなアレシボ天文台にわずか3カ月間で2度の大事故が発生します。1度目の事故は電波望遠鏡の副鏡を支える鋼鉄製の補助ケーブルが切れ、主鏡の反射面に衝突するというもので、2度目の事故は副鏡を支えるメインケーブルが切れて落下し、反射面やその他のケーブルが損傷するというものでした。

世界最大級の電波望遠鏡でわずか3カ月に2度の大事故が発生 - GIGAZINE


アレシボ天文台は修復工事を計画していましたが、修復の際に重大な事故が発生する可能性があったことから同天文台を運営するアメリカ国立科学財団(NSF)が解体を決定しました。

「アレシボ天文台」の世界最大級の電波望遠鏡が3カ月で2度の大事故を起こして解体されることに - GIGAZINE

by Jeff Hitchcock

こうして解体計画の立案を待っている状態だったアレシボ天文台に、さらなる事故が発生しました。現地時間2020年12月1日午前7時55分頃に新たに発生した事故は、空中に吊られていた900トン超の受信機が140メートル下の主鏡に落下したというもので、事故前(下側)と事故後(上側)の状況が以下。

Ayer fue la última vez que visite esta belleza de lugar. Lamentablemente agonizaba. Aquí imágenes de ayer y hoy. pic.twitter.com/jWuAwtUc1s

— Deborah Martorell (@DeborahTiempo)


事故後にドローンで空撮された映像を見ると、受信機の落下によって主鏡の一部が破壊されたことがわかります。

Observatory Collapses Arecibo Puerto Rico - YouTube


受信機を支えていた塔は完全にひしゃげており、落下した受信機が主鏡を粉砕しています。


この事故による人的被害は出ておらず、事故の原因については調査中の段階ですが、受信機をケーブルで支えていた3つの塔の上部が全て崩壊していることが判明しています。また、受信機落下に伴ってケーブルも落下しており、アレシボ天文台に併設されていた学習センターも重大な被害を受けています。

NSFのSethuraman Panchanathan局長は「このような状況に悲しんでいますが、誰も傷つかなかったことに感謝しています」とコメントし、今後は事故の被害について調査を行い、被害を受けなかった箇所の運用を回復する方法を模索する予定だと語りました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「アレシボ天文台」の世界最大級の電波望遠鏡が3カ月で2度の大事故を起こして解体されることに - GIGAZINE

世界最大級の電波望遠鏡でわずか3カ月に2度の大事故が発生 - GIGAZINE

世界最大級の電波望遠鏡が原因不明の事故で崩壊して稼働停止 - GIGAZINE

地球上にある一番大きい電波望遠鏡の写真 - GIGAZINE

in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log