犯罪の発生を事前に予測してパトロールする「予測的取り締まり」を警察が使い始めているとの指摘
映画「マイノリティ・リポート」では、凶悪犯罪を予知するシステムにより、犯罪者予備群が未然に逮捕される近未来が描かれましたが、実際に犯罪を予測して警察のパトロールなどに活用するシステムがカナダに導入されつつあると報じられています。
To Surveil and Predict: A Human Rights Analysis of Algorithmic Policing in Canada - The Citizen Lab
https://citizenlab.ca/2020/09/to-surveil-and-predict-a-human-rights-analysis-of-algorithmic-policing-in-canada/
Police Across Canada Are Using Predictive Policing Algorithms, Report Finds
https://www.vice.com/en_us/article/k7q55x/police-across-canada-are-using-predictive-policing-algorithms-report-finds
Predictive policing tools use in Canada spark human rights concerns | Vancouver Sun
https://vancouversun.com/news/local-news/predictive-policing-tools-use-in-canada-spark-human-rights-concerns-report
カナダにあるトロント大学法学部が組織する国際人権プログラム(IHRP)と、同校のムンク国際問題研究所を拠点とするCitizen Labは、2020年9月1日に共同レポートを公開。その中で、カナダ全土の警察が「予測的ポリシング(予測的な取り締まり)」の導入の検討や試験的な運用を開始しているとの調査結果を発表しました。
カナダでは既に、ソーシャルメディアの投稿から失踪するおそれが高い人をあらかじめ特定するシステムが導入されていることが明らかになっていますが、今後はさらに個人のソーシャルメディアの投稿を含む膨大なデータが犯罪対策に活用される可能性があります。
例えば、ブリティッシュコロンビア州のバンクーバー警察は既にGeoDASHと呼ばれる機械学習ツールを導入しており、空き巣が発生しそうな場所の予測が行われています。
また、アルバータ州にあるカルガリー警察は、ビッグデータ分析を専門とするアメリカの企業Palantirが手がけたGothamというソフトを使用して、犯罪の被害者や目撃者などが所有する家屋や自動車の位置などをリンクさせ、可視化しているとのこと。カルガリー警察は以前、Gothamの使用には犯罪組織や容疑者と無実の個人を誤って関連付けする危険性があるとの勧告を受けたことがありますが、十分な対策が行われないまま使用が続けられていると指摘されています。
IHRPのケイト・ロバートソン氏は、IT系ニュースサイトMotherboardの電話取材に対し「カナダに住む個人は、通りを歩いたり、車を運転したり、ソーシャルメディアに投稿をしたり、オンラインでチャットをしたりしている時に、その様子を組織的な監視とデータ収集という形で警察に見張られている可能性に直面しています」とコメントしました。
また、Citizen Labのシンシア・クー氏は「予測的ポリシングは、映画『マイノリティ・リポート』を想起させます。それは未来的に見えるかもしれませんが、むしろ過去に縛られたものだといえます。カナダの司法制度に根付いた体系的差別の歴史的かつ継続的なパターンは、警察が保有するデータにも組み込まれています。これがアルゴリズムのトレーニングに使用されれば、結果的に差別的なパターンが複製、増幅または悪化することになるでしょう」と指摘しました。
バンクーバーの地元紙Vancouver Sunによると、カナダ公安省は「政府がCitizen Labらの共同レポートを精査するには時間がかかります」と発表し、それ以上のコメントは控えたとのことです。
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