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いかにGoogleとFacebookは地域社会を破壊してきたのか


GoogleやFacebookといった巨大テクノロジー企業は市場を独占していると問題視されており、アメリカの連邦取引委員会が反トラスト法の調査を進めています。国レベルで混乱を生み出しているとみなされている2つの企業ですが、地域社会に与える影響は見逃されがちだとして、作家のパット・ガロファロ氏がGoogleとFacebookが地域社会に与えた影響を詳細にまとめています。

Close to Home: How the Power of Facebook and Google Affects Local Communities - American Economic Liberties Project
https://www.economicliberties.us/our-work/close-to-home-how-the-power-of-facebook-and-google-affects-local-communities/

ガロファロ氏は、2社が地域社会に影響を与えた方法は「検索サービスやSNSといった『プロダクト』が広告市場の組織化と地域におけるジャーナリズムの実行可能性を通じて地域社会に影響を与えたこと」と、「助成金を得るという、より直接的な戦略により地域社会に影響を与えたこと」の大きく分けて2つだと述べています。

◆Googleがローカルビジネスを弱体化させた


まず、GoogleやFacebookの共通点として、「地域のレストランやショップを対象とした広告サービスを提供している」という点が挙げられます。Facebookは大企業が広告をボイコットしても収益が減少しないようなエコシステムを構築していることが知られており、Googleもまた地域の小規模ビジネス向けの広告事業を広く展開しています。

ユーザーが現在地付近のビジネス情報や場所を検索すると、地理的状況に基づいた検索結果が表示されるというGoogleの「ローカル検索」がその1つ。これは例えばGoogle検索で「タイ料理レストラン」と検索すると、現在地付近のタイ料理レストランが表示されるといったものです。この時、Google検索の結果にはまずGoogleマップが表示され、その後にGoogleの口コミ評価が表示されます。ユーザーは検索結果の上部に表示されたものほどクリックする傾向がありますが、いずれをクリックしても、その誘導先はレストランのウェブサイトではなく「Googleのサービス」となります。

Google検索がインターネット検索においてほぼ独占的な位置にいることと合わさって、このような仕組みは、「地域のお店がインターネットで優位に立とうとすると、Googleのサービスを駆使しなければならない」という状況を作り出しているとのこと。


またGoogleのローカル検索は誤りが多く、その修正が遅いということでも知られています。このため地域で知られる錠前屋の名前をかたってGoogleビジネスに登録し、顧客に5~6倍の料金を請求するという詐欺事件が頻繁に起こっているとのこと。しかも、このような「質の悪い検索結果」「誤ったリスティング」の影響を消そうと、正規の事業者がGoogle広告にお金を支払うこさえもあります。また、Googleは過去にその巨大な力を利用して「サードパーティーの技術サポートサービス」という1つのサービス形態をまるごと検索結果から締め出したこともあります

このような背景から、「Googleはユーザーに有益な情報を表示している」という認識は誤りだとガロファロ氏は考えています。Googleは「Google検索の結果にGoogleのプロダクトを優先的に表示するのは、それがユーザーにとって有益だからだ」と説明していますが、少なくとも2つの研究で、ユーザーはGoogleが自社コンテンツを表示した検索結果より、Googleのコンテンツが表示されない検索結果を好むことが示されているとのことです。Googleはユーザーの見たいものではなく「自分の収益になるもの」を表示しているわけです。

◆GoogleとFacebookが地域のニュースを弱体化させた


the Save Journalism Projectによると、過去10年でニュース編集室の従業員3万2000人が解雇されており、過去15年でローカルニュースを伝えるコミュニティ1300個が消え去り、アメリカの郡の60%が日刊新聞を持たない状況になっているとのこと。

ニュースの影響は地方の民主政治にも大きな影響を及ぼしました。定期的な新聞読者は選挙に投票する可能性が高かったため、日刊新聞が廃止された地域では選挙の立候補者が減り、有権者の投票率も低下し、在職者が選挙に勝つことが(PDFファイル)多くなったそうです。また地方新聞社での人員削減が、選挙における新たな立候補者の減少や、現職者のみの選挙の増加と関連するという調査結果も。地方の日刊新聞が少ない地域では、住民が議員の名前を知らない傾向にあることも調査で示されています

このような地方ニュースの崩壊はGoogleやFacebookがデジタル広告市場を独占し、報道のエコシステムのために利用されるはずだった収益を奪ったために起こったと考えられています。


ではどのようにGoogleやFacebookが地方からニュースを奪ったのかというと、まず、Googleはインターネットのニュースを配信するパブリッシャー側と広告主の間に介入するデジタル広告市場の仕組みを確立しました。これにより、パブリッシャーと広告主がGoogleを使う以外の方法でビジネスを行うことが(PDFファイル)ほぼ不可能となったとのこと

その上で、Googleはユーザーがニュースサイトを訪れなくともGoogleのエコシステム上でニュースを読めるようにするAccelerated Mobile Pages(AMP)の利用をパブリッシャー側に要求。これにより、パブリッシャーは読者を構築する能力が損なわれ、広告収入とトラフィックの減少を経験することになります。


さらに、GoogleニュースとGoogle Discoverでパブリッシャーの配信したニュースを公開することでも、パブリッシャーからユーザーを奪っています。このような仕組みによって、本来ならばニュースを配信するパブリッシャー側に入るはずだった収益を、Googleが受け取る構造が構築されているわけです。

一方のFacebookは、「誤った情報を広げる」という方法でも報道業界を弱体化させました。Facebookのニュースフィードはより扇情的で疑惑あるコンテンツをユーザーに表示し、ユーザーがアクセスを繰り返すことでデータを収集するという仕組みになっています。2016年にはシリア難民の存在しなかったアメリカ・アイダホ州の町で「シリア難民が6歳の少女をレイプした」というフェイクニュースが広がり大きな騒ぎに発展しました。Facebookがフェイクニュースを広めて政治にまで影響を及ぼしていることはたびたび問題視されています

◆GoogleとFacebookの助成金戦略


「GoogleとFacebookは、独占を通じて得た力を利用して、アメリカ全土のコミュニティを食い物にし、『雇用と投資を与えること』と引き替えに地方政府から助成金を引き出している」とガロファロ氏は指摘しています。これまで明らかにされているだけでも、Facebookは2010年からさかのぼって3億7400万ドル(約400億円)を、Googleは2005年からさかのぼって8億8200万ドル(約935億円)を自治体から助成金として受け取っています。なお、これは公開されている助成金のみなので、実際にはより多くを受け取っていると考えられています。

特に、大規模データセンターを設立することに関して、2社は高額の助成金を受け取っています。Facebookはユタ州のデータセンターに対して助成金1億5000万ドル(約160億円)、テキサス州のデータセンターに1億4700万ドル(約155億円)を受け取っており、Googleはオレゴン州のデータセンターに3億6000万ドル(約380億円)、ノースカリフォルニア州のデータセンターに2億5400万ドル(約270億円)を受け取っています。なお、Facebookがアメリカ国内に所有するデータセンターは少なくとも12個、Googleの場合は最低17個のデータセンターを所有しています。

このような助成金は地方自治体に影響します。助成金の多くは「固定資産税の免除」という形を取りますが、企業が支払う固定資産税は通常、アメリカの公立学校の運営費に当てられるもの。アイオワ州では職員がFacebookの固定資産税免除に気づかず学区の予算を編成し、のちに免除の事実が判明した時には、学区が90万ドル(約9500万円)の予算を失ってしまったとのこと

また企業はデータセンターを設立することで雇用を創出するとしていますが、実際には地元からの雇用は非常に少なく、1データセンターあたり30~50人ほどと(PDFファイル)みられています。データセンターの設立によって地域の雇用が大きく伸びたという報告も、記事作成時点でないとのこと。


加えて、FacebookやGoogleはデータセンターを発電所の近くに配置していますが、これにも補助が発生します。データセンターを発電所の近くに配置することは技術的に利になかっており、補助を受ける必要のないものですが、多くの場合、電気代や水道代が割り引きされるとのこと。ただし、これら取り決めは企業と地方自治体の間で行われることであり、どれほどの補助が行われているかは不透明。ミネソタ大学のガブリエル・チャン教授は「補助が行きすぎ、Googleが受け取りすぎることもありますが、実際にはどれほどの額なのか誰にも分かりません」と述べました。

このように、FacebookやGoogleが受け取る助成金の多くは、一般公開されてないことが多くあります。「Googleは自社の名前を取引に出さないことで、議論を生み出さず、静かに物事を進めるという戦略を取っています」とチャン教授は語っています。

上記のように、GoogleとFacebookは市場の独占により人々の気づかぬうちに地方自治体レベルの影響を与え、人々の生活を変えているとガロファロ氏は指摘。企業による独占を排除し、透明性を上げ、地方自治体レベルでの説明責任を求めることで、地方経済はふたたび公平性と弾性を取り戻すとガロファロ氏は述べました。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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