採血なしで血液中の酸素量を測れる「パルスオキシメーター」はどんな仕組みで酸素を測定しているのか?
新型コロナウイルス感染症の症状を把握する手段の1つとして、パルスオキシメーターは日本でも(PDFファイル)宿泊療養や自宅療養向けの検査ツールとして導入されています。パルスオキシメーターは血液に酸素がどのくらい含まれているかを示す酸素飽和度を測定でき、酸素量の低下から新型コロナウイルス感染症による「息苦しさ」を数値化することもできます。パルスオキシメーターがどのようにして血中の酸素量を測定しているのかを、麻酔科医のプラサーナ・ティラカラネ氏が図で分かりやすく解説しています。
How pulse oximeters work explained simply.
https://www.howequipmentworks.com/pulse_oximeter/
血液中の酸素は、ヘモグロビンによって運ばれています。血液中のヘモグロビンがどのくらい酸素を運んでいるかを表すのが酸素飽和度。例えば、酸素を運んでいないヘモグロビンを青、酸素を運んでいるヘモグロビンを赤とすると……
血中にある半分のヘモグロビンが酸素を運んでいれば、パルスオキシメーターの値は50%
血中にある全てのヘモグロビンが酸素を運んでいれば、パルスオキシメーターは100%になります。なお、人間の正常値は96%以上で、95%未満は呼吸不全を起こしている危険性があります。
パルスオキシメーターでは、血液中の酸素飽和度を光を使用して測定しています。光は発光部(light sourse)から受光部(light detector)に向かって照射されます。
発光部側が爪、指の腹側が受光部になるようになるよう指先をパルスオキシメーターに差し込むことで、血液中の酸素量が測定できます。
指には動脈(artery)と静脈(vein)があり、ヘモグロビンは動脈を通って酸素を全身に運んでいます。そのため、パルスオキシメーターは動脈中の酸素飽和度を測っています。
光だけでどうやって血液中の酸素飽和度を測っているのかというと「ヘモグロビンが照射した光をどれだけ吸収したか」という点から酸素量が測定されています。ヘモグロビンは酸素の有無でそれぞれ色が異なり、酸素を運ぶヘモグロビンは「鮮やかな赤色」、酸素を運んでいないヘモグロビンは「暗い赤色」に変化。色の違いから酸素の有無でヘモグロビンは光を吸収する量も異なるというわけ。血中のヘモグロビンが多いほどヘモグロビンに光が吸収され、透過する光の量も少なくなります。
指の一部に光を照射することで、単位面積あたりのヘモグロビンが酸素を運んでいる量を測定しています。
また、パルスオキシメーターには二種類の波長が異なるライトが使用されています。1つは波長約650nmの赤色光(Red light)、もう1つは波長950nmの赤外線(Infrared light)です。2種類のライトを使って光の吸収率を測定し、酸素を運んでいるヘモグロビンの量を測定しています。
以下のグラフは縦軸が光の吸収率、横軸が光の波長の長さを示しています。酸素を運ぶヘモグロビンは、赤色光よりも赤外線を多く吸収し……
酸素を運んでいないヘモグロビンは、赤色光を多く吸収します。
パルスオキシメーターは、ヘモグロビンによって吸収される赤色光と赤外線光の量を比較することにより、酸素飽和度を計算しているのです。
また、パルスオキシメーターは光で酸素飽和度を測定していることから、室内の光(Room Light)は測定を邪魔するノイズとなります。
室内の光といった環境光のノイズを抑えるため、パルスオキシメーターは赤色光と赤外線のライトを同時に点灯させず、それぞれのライトのオンとオフをすばやく切り替えています。まず始めに、赤色光のライトがオンになり、赤色光は指を通って受光部に到達します。室内が明るいと室内の光も受光部に到達します。
次に、赤色光をオフにし、赤外線をオンにします。赤外線も同じく指を通過して受光部に到達し、室内の光も受光部に到達します。
そして、パルスオキシメーターは赤色光と赤外線の両方をオフにし、室内の光を記録します。
最後に測定した室内の光を測定値から差し引いて、赤色光と赤外光のレベルを取得しています。なお、あまりにも室内の光が強すぎると正しい測定結果が得られない可能性があるため注意が必要です。
したがって、より正確に測定を行うには強い光を遠ざけるか、パルスオキシメーターを布や手などで覆う必要があります。
また、発光部と受光部の間にきちんと指が挿入されていない場合や……
爪にマニキュアを塗っている場合も、マニキュアが光を吸収してしまう可能性があります。パルスオキシメーターで正確な測定結果を得るには、室内の光や太陽光をなるべく遮った状態で、指先に何もつけていない状態で指を奥まで差し込む必要があります。
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