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ウイルスの感染拡大を防ぐには「1人の友人と会うことも控える必要がある」とわかりやすく示す図が公開


新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、世界中で他者との「社会的距離」を取る対策が実施されています。しかし、他者との接触を減らすことにストレスを感じる人も多く、「友人と1対1で会うくらいなら問題ないだろう」と考えてしまう人もいるはず。そんな中、「たった1人の友人と会うだけで多くの人を危険にさらす可能性がある」ことを、視覚的にわかりやすく示した図がワシントン大学の疫学者グループによって公開されました。

Can’t I please just visit one friend?
http://statnet.org/COVID-JustOneFriend/

新型コロナウイルスの問題を真剣に受け止めているほとんどの人は、「他者との接触」を減らすことに協力しています。この場合の「他者との接触」とは、社会的距離のルールに注意深く従わない方法での接触のことで、具体的には「誰かと6フィート未満の距離でやり取りする」「手を洗わずに同じアイテムを共有する」といったことが、他者との接触に該当します。


しかし、特に子どもを中心として「1人の友人と会うだけならそれほど害もないのではないか」と考える人もいると疫学者グループは指摘。自分と同居している家族に高齢者がいなかったり、免疫システムが低下している人がいなかったりした場合、自分と同世代の若い友人と会うことは問題ないと見なされがちです。また、医療従事者や外食産業、小売店など、一部の業種では依然として他者との相互作用が起こり得る状態が維持されているため、友人と会うことの危険性は理解されにくいとのこと。

そこで疫学者グループは、「1人の友人と会うことがどれほど多くの人々を危険にさらすのか」を周知するため、視覚的にわかりやすい図を作成しました。

以下の画像が、新型コロナウイルスが拡大する以前、社会的距離の戦略が取られていなかった時点での社会的なつながりを示した図。今回の例では、平均的な世帯が他の世帯と定期的に15回接触していると仮定し、全部で200世帯の集団での相互的なつながりを示しています。緑の点が1つの世帯を、灰色の線が他の世帯との接触を表しており、以下の図では集団に含まれる200世帯が全て3本以内の線でつながっているとのこと。これほど密な相互的つながりがあれば、集団全体で大規模な感染が広がる可能性があります。


続いて、人々が社会的距離を取る戦略を完璧に実行し、各世帯の危険な接触が全くない状態が以下の図。この場合、ウイルスが1つの世帯に持ち込まれても他の世帯に感染が広がることはなく、せいぜい家庭内での感染しか起こりません。


しかし、各世帯が完璧に社会的距離を保ち続けることは困難だと疫学者グループは指摘。なぜなら、医療従事者や小売店の販売員、ドライバーや倉庫作業員をはじめとする配送業者、インフラ関連の労働者、各種の公務員など、社会を維持するために必要な労働者が存在するためです。

そこで、「10世帯につき1人が、社会的なつながりを維持する必要がある仕事に従事している」「手洗いなどで感染リスクを抑える行動が取られているものの、1人の労働者は平均で4人と接触を行わざるを得ない」と仮定した場合の図が以下。労働者によっては接触する世帯が1つしかないケースもありますが、所々に大きめの集団が発生していることがわかります。今回の例では、全部で53世帯が接続した集団が形成されており、この集団内で感染が拡大するおそれがあります。しかし、必須労働者を完全に削減するわけにはいかないため、ある程度の危険は社会維持とのトレードオフとして容認されるとのこと。また、半数以上の世帯は他の世帯とのつながりがないままであり、集団全体としての感染リスクは低く抑えられています。


一方、「1世帯当たり平均で2人が、他の世帯にいる1人の友人と接触する」と仮定した場合の図がこれ。友人と接触するのは「1世帯当たり平均で2人」なので、他の世帯との接触がない世帯も多少はありますが、かなり多くの世帯が密接につながっています。つながりの量は必須労働者だけが接触を維持した場合と比較して明らかに多く、社会的距離を取ることに退屈し始めた人々が気を緩め、「1人くらいなら大丈夫だろう」と考えて友人と接触することが、集団全体に大きな危険を及ぼしかねないことがわかります。


続いて、「1世帯当たり平均で1人が、他の世帯にいる1人の友人と接触する」と仮定するとこうなります。この場合も、やはり必須労働者のみの場合と比較して大きな集団が発生しており、感染が多くの人に広がる可能性があるといえます。


人間は社会的な動物であり、どうしても友人と会いたくなってしまうこともあります。しかし、今回の例からわかるように、個人が少しだけ他者との接触を増やしただけで、一気に社会全体が危険にさらされてしまいます。自分が新型コロナウイルスの感染を広めることで「友人の母親が治療する患者の父親」「妹の友人の家族を治療する医療従事者」「友人の両親が行く店の店員の娘」など、自分が知り得ない場所で誰かが亡くなってしまう可能性が既に現実的なものとなっています。

疫学者グループは「1つの接触をCOVID-19がコントロールされるまで延期することで、1つ以上の命が救える可能性があります」と指摘。1人の友人と会うのを控えることで救える人は、必ずしも自分と直接的な接触がある人ではないかもしれません。自分の行動によって誰かの命が救われたことを実感するのは難しいですが、今も社会的距離を保った生活を続けている人は、この世界に住む誰かの命を救っているとのこと。


なお、今回提示された図は社会的な相互作用を単純化しており、実際には老人ホームや寮といった集団生活を営む人、2世帯住宅に住む人、ホームレスの人など、さまざまなケースが想定されます。しかし、意図的に世界を簡略化して表すことは、人々に対してわかりやすく基本的な原則を伝える上で最適だと疫学者グループは述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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