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5万人以上を対象にした調査で「孤独」に陥ってしまいがちな人の属性が明らかに

by pixel2013

現代社会では社会的なつながりが弱まっており、慢性的に孤独を覚える人が伝染病レベルで増加しているともいわれています。クイーンズランド大学オーストラリア国立大学の研究者らは、「孤独はがんと同レベルに危険な『社会のがん』と捉えて対処すべきだ」と主張し、孤独になりやすい社会的グループについて説明しています。

Loneliness is a social cancer, every bit as alarming as cancer itself
https://theconversation.com/loneliness-is-a-social-cancer-every-bit-as-alarming-as-cancer-itself-126741

「いくら孤独が問題とはいえ、死ぬようなことでもないのでは」と考える人もいるかもしれませんが、社会的なつながりと死亡リスクについての150近い研究をメタ分析した結果、社会的つながりや社会的支援の欠如が健康に大きな影響を与えることが判明しています。孤独によって引き起こされる死亡リスクの増加は、貧しい食生活や肥満、アルコールの消費、運動の欠如といった要因よりも多く、重度の喫煙と同レベルだったとのこと。

その一方で、多くの人が孤独をそれほど問題視していないことも明らかになっています。クイーンズランド大学のAlex Haslam教授、Catherine Haslam教授、オーストラリア国立大学のTegan Cruwys氏らの研究チームは、イギリスおよびアメリカの人々に対して「さまざまなリスク要因がどれほどの死亡リスクに関連しているのかを、ランキング形式で回答してもらう」という調査を行いました。その結果、人々は肉体的な健康行動についてはほぼ正確なリスク予測ができたものの、孤独などの社会的な要因についてはリスクを低く見積もる傾向がみられたそうです。

多くの人々は退職後の年金プランなどの金銭的な問題を気にしがちですが、研究チームは「退職後の人々の身体および精神的健康を予測する因子として、社会的つながりは財政状況の4倍も強くリンクしていることがわかりました」と指摘。孤独が健康に密接に関連していることが世間に知られていない点を、研究チームは危険だと捉えています。

by Leroy_Skalstad

オーストラリア放送協会が2019年7月に行った「Australia Talk」という大規模調査では、実に5万4000人ものオーストラリア在住の人を対象にして、約500個もの日常生活に関する質問を行いました。この調査では「人々の孤独感」に関する質問も実施されており、回答者は「まったく」「ほとんど」「時々」「頻繁に」「常に」などの選択肢の中から自分が感じている孤独感について選択しました。研究チームは「『まったく』ないし『ほとんど』孤独を感じないと回答したのは、全体の54%に過ぎませんでした」と指摘し、半数近くの人々が孤独を感じている現状があると指摘しています。

また、Australia Talkの結果、以下の「孤独を感じる人が多い4つのグループ」も特定されました。

◆1:若者
18歳~24歳の人々のうち、「まったく」「ほとんど」孤独を感じないと回答したのは32%ほどしかおらず、30%の人々が「頻繁に」「常に」孤独を感じていると回答しました。一方、高齢者で「まったく」「ほとんど」孤独を感じないと回答した人の割合は71%に達しており、若者よりも高齢者の方が孤独を感じていなかったとのこと。

by DanaTentis

◆2:都市生活者
地方に住む人々と比較して、都市に住む人々は「まったく」孤独を感じないと回答した人の割合が5%少なく、「時々」「頻繁に」「常に」孤独を感じる人の割合が8%高かったそうです。「今回の結果は、孤独が心理的なものであるという現実を物語っています」と、研究チームは指摘しました。

◆3:極右政党の支持者
興味深いことに、オーストラリアの極右政党である「ワン・ネイション」の支持者は、ほかの政党の支持者と比較して高い孤独感を覚えていることが判明。「常に」孤独であると回答した人の割合は、ワン・ネイションの支持者において9%を記録しましたが、ほかの政党の支持者では2%しかいなかったとのこと。研究チームはこの結果について、「世界から切り離されている」と感じたことが、人々を過激な政治主義に駆り立てている可能性があると述べています。

◆4:低所得者
また、高所得者よりも低所得者の方が孤独を感じやすいという結果も出たそうです。1週間の収入が600オーストラリアドル(約4万4000円)以下の人では、実に21%が「頻繁に」「常に」孤独を感じていましたが、週に3000オーストラリアドル(約22万2000円)以上を稼ぐ人では、「頻繁に」「常に」孤独を感じる人は10%に過ぎなかったとのこと。これは、貧困と孤独が強くリンクしていることを示しており、貧困がもたらす悪影響は心理的な面にまで及ぶことを意味します。

by 1820796

今回のAustralia Talkにより、孤独が少数の人々にとっての個人的な問題にとどまらず、もはや無視できないレベルで社会に浸透していることが判明しました。この結果をふまえ、「人々は社会的なつながりを再構築し、孤独をがんと同じくらい警戒するべき」と、研究チームは主張しています。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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