新型コロナウイルス検査の性能を比較したウェブサイトをアメリカ食品医薬品局が公開
アメリカ食品医薬品局(FDA)が、緊急時使用許可(EUA)で承認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査の性能をまとめてインターネットで公表しました。
EUA Authorized Serology Test Performance | FDA
https://www.fda.gov/medical-devices/emergency-situations-medical-devices/eua-authorized-serology-test-performance
COVID-19の検査として広く用いられている手法の1つに「血清学的検査」があります。これは、血液サンプル中に含まれる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗体の有無を調べて、対象者がSARS-CoV-2に感染したことがあるかどうかを検査するものです。
by U.S. Pacific Fleet
多くの人に血清学的検査を実施し、抗体を持っている人の数を調べてCOVID-19の有病率を割り出すことができれば、COVID-19の広がりを把握したり、経済再開に関する政策判断の参考にしたりできるため、FDAは血清学的検査向けに開発された複数の製品にEUAを発行しています。
一方で、血清学的検査の中には製薬会社のCEOから「災害レベル」と酷評されるほど信頼性の低いものも存在します。
「新型コロナウイルス抗体検査のお粗末さは災害レベル」と大手製薬会社のCEOが酷評、抗体検査の一体何が問題なのか? - GIGAZINE
また、血清学的検査にはCOVID-19に感染しているのに陰性との結果が出る「偽陰性」や、感染していないにもかかわらず陽性と診断される「偽陽性」といった課題があるため、大規模な血清学的検査を実施すると、この問題のリスクも大きくなります。
そこで、FDAは医療機関や専門家がより正確に血清学的検査を実施できるようにするため、EUAの審査時に確認した情報をもとに、血清学的検査の性能をまとめて公開しました。
例えば、これはアメリカの製薬会社Abbottの分析装置で、厚生労働省の抗体検査でも使用されている「Architect」の検査薬である「Abbott Architect SARS-CoV-2 IgG」の性能です。「Target(標的)」がウイルスのゲノムとゲノムを包むタンパク質の総称である「ヌクレオカプシド」で、「Antibody(抗体)」の項目が「IgG(免疫グロブリンG)」であることから、この検査薬はSARS-CoV-2のヌクレオカプシドに反応する抗体である免疫グロブリンGの有無を調べるものだということが分かります。
「Abbott Architect SARS-CoV-2 IgG」を使用した検査における、陽性のサンプルを正しく陽性と判定する確率である「感度(Sensitivity)」は100%で95%信頼区間は95.8~100%でした。また、陰性のものを正しく陰性と判定する確率である「特異度(Specificity)」は99.6%で95%信頼区間は99~99.9%でした。
さらに、有病率を5%とした場合の「陽性的中率(PPV)」は92.9%で、95%信頼区間は83.4~98.1%でした。また、同じく有病率5%の場合の「陰性的中率(NPV)」は100%で、95%信頼区間は99.8~100%でした。FDAが公開したウェブサイトには、同様の評価が複数の血清学的検査手法についてまとめられており、各検査手法の特徴や性能を比較することができます。
FDAは発表の中で「血清学的検査を適切に実施するためには、検査の性能特性や限界を理解することが重要です。また、血清学的検査を行う上では、抗体の存在が再感染を予防するかどうかや、抗体が有効な期間なども重要になりますが、これはまだ研究が行われている最中です」と述べました。
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