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SpaceX開発のロケット「Falcon 9」はLinuxとC++で宇宙へ飛び立っている

by Official SpaceX Photos

アメリカ航空宇宙局(NASA)とイーロン・マスク氏が設立した民間宇宙開発企業・SpaceXが2020年5月31日に、再利用可能なロケット「Falcon 9」を使った有人宇宙船の打ち上げに、成功しました。そんなFalcon 9のソフトウェア面について、IT系ニュースメディアのZDNetが解説しています。

From Earth to orbit with Linux and SpaceX | ZDNet
https://www.zdnet.com/article/from-earth-to-orbit-with-linux-and-spacex/


ロケットや宇宙船などでは、PCやサーバーなどで使われるような最新鋭のCPUはほとんど使われていません。ロケットの開発には基本的に数年あるいは数十年という長い期間が必要となるため、開発した時は比較的新しいCPUでも、開発が終わる頃には時代遅れなモデルとなっていることも珍しくないからです。

また、宇宙では放射線が飛び交っているため、宇宙で使うCPUは放射線耐性を強化する必要があるため、どうしても開発に時間がかかってしまうというわけです。たとえば、今もなお軌道上にある国際宇宙ステーション(ISS)のコマンド及び制御マルチプレクサー・デマルチプレクサー(C&C MDM)に使われているCPUは、1988年に開発されたIntel 80386の20MHzモデルです。

by NASA's Marshall Space Flight Center

Falcon 9にはデュアルコアのx86マイクロアーキテクチャCPUが3つ載っており、OSはLinuxを採用しているとのこと。Falcon 9 がCPUを3つ搭載している理由は、冗長性による安全性を保証するためです。SpaceXは、プロセス処理を複数コアで同時に行い、結果が異なった場合に再計算を行う「Actor-Judge」システムを使って冗長性を確保しています。つまり、搭載されているCPU3つすべての決定が同じだった場合のみ、命令がマイクロコントローラーに送られるというわけです。

Falcon 9ではどんなチップが使われているのかは明らかになっていませんが、開発に10年以上かかっているため、少なくとも2020年時点のCPUに比べるとかなり古い可能性が高いとZDNetは指摘しています。ただし、Falcon 9は再利用を念頭に置いたロケットであるため、ロケットの1段目に使われているCPUには放射線対策は必要ないため、2021年にはRaspberry Pi 3に搭載されている「Arm Cortex-A53」をFalcon 9のCPUに採用することをNASAは考えているとのこと。

by Official SpaceX Photos

また、ハードウェアだけではなくソフトウェアも独自に開発されています。SpaceXの開発者によれば、Falcon 9やGrasshopperCrew Dragonのソフトウェア担当チームは35人のエンジニアで構成されているとのこと。任務はそれぞれのコアプラットフォームやシミュレーションソフトウェア、地上局の通信および分析用のソフトウェアの開発で、ソフトウェアはCあるいはC++でコーディングされているそうです。

また宇宙飛行士は、Linuxディストリビューションの1つであるDebianScientific Linux、Windows 10が搭載されたモバイルワークステーションのHP ZBook 15を使っているとのこと。この端末はC&C MDMへのリモート端末として使うほか、電子メールやウェブ閲覧にも使えるそうです。

なお、有人宇宙船であるCrew Dragonではタッチスクリーン型のインターフェースを採用しており、C++でコーディングされたフライトソフトウェアのUIはChromiumとJavascriptでレンダリングされるとのこと。また、タッチスクリーンが故障した場合に備えて、物理的なボタンも配備されているそうです。

by Official SpaceX Photos

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in ソフトウェア,   ハードウェア,   乗り物, Posted by log1i_yk

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