ネット上の顔写真30億枚超を使った顔認証技術を提供する「Clearview AI」がプライバシー問題で法的機関から契約を打ち切られる
2020年7月、カナダの全法的機関が顔認証アプリを提供する「Clearview AI」との契約を停止しました。同社は以前からネット上の顔写真30億枚超を収集して顔認証技術に利用していたことが問題視されており、プライバシー関連の訴訟にも直面しています。
News release: Clearview AI ceases offering its facial recognition technology in Canada - Office of the Privacy Commissioner of Canada
https://priv.gc.ca/en/opc-news/news-and-announcements/2020/nr-c_200706/
Facial-Recognition Firm Ends Operations in Canada, Watchdog Says - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-07-06/facial-recognition-firm-ends-operations-in-canada-watchdog-says
Clearview AI stops offering facial recognition software in Canada amid privacy probe | CBC News
https://www.cbc.ca/news/technology/clearview-ai-stops-facial-recognition-in-canada-1.5639380
Clearview AIは2017年に創業したアメリカの新興企業です。2020年1月、「Clearview AIが開発し、連邦捜査局(FBI)をはじめとする多数の法執行機関によって利用されている顔認識アプリは、SNSなどからユーザーの同意なしに収集された約30億枚の顔写真を利用している」と報じられ、大きなスキャンダルとなりました。これを受けてGoogle・YouTube・Venmo・LinkedInなどの企業が相次いでClearview AIにデータの使用停止を求め、「大勢のアメリカ市民に関する情報を密かに集めた」として訴訟を起こされる事態にまで発展しました。
ネット上の30億枚超の顔写真から顔認証アプリを開発する「Clearview AI」にGoogle・YouTube・Venmo・LinkedInなどがデータの使用停止を求める - GIGAZINE
by Steven Lilley
アメリカ同様、カナダでも多くの法執行機関がClearview AIと契約を交わしていましたが、上記のようなプライバシー問題を受け、カナダのプライバシー保護委員会がClearview AIに収集されたカナダ人の個人情報などについて調査に乗り出しました。
調査開始後、カナダの法執行機関はそれぞれClearview AIとの契約を解除し、2020年7月6日にカナダの連邦警察である王立カナダ騎馬警察がClearview AIとの契約の無期限停止を発表。カナダの全法執行機関がClearview AIとの契約を実質的に打ち切りました。
記事作成時点においてもプライバシー保護委員会の調査は継続されており、いまだに裁定が下されていません。プライバシー保護委員会は「Clearview AIがこれまでの捜査に協力してきたことを高く評価し、結論が出るまで同社の継続的な協力を期待している」「カナダ人のプライバシー権という問題の重要性を考慮した上で、調査結果を発表する予定だ」と記しています。
Clearview AIのCEOであるHoan Ton-That氏は、「カナダの法執行機関が行った、児童に対する犯罪を含む凶悪犯罪の捜査を支援したという実績を誇りに思っています。我々は関連するその他の問題について、プライバシー保護委員会と協力していく予定です」とコメントしています。
カナダの法的機関はClearview AIとの契約を解除しましたが、Clearview AIの顔認証アプリは多くの国の小売業者・金融機関・政府機関で利用されているとのことです。
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