AMDが達成したプロセッサのエネルギー効率を25倍にする目標「25×20」の詳細、TSMCの7nmプロセスが大きく寄与
AMDが2014年に掲げた「モバイルプロセッサのエネルギー効率を2020年までに25倍にする」という目標「25x20」を達成しました。2020年にリリースされたコードネーム「Renoir」こと「Ryzen Mobile 4000」では、2014年のKaveri世代と比べてエネルギー効率が31.77倍となっています。
AMD Exceeds Six-Year Goal to Deliver Unprecedented 25 Times Improvement in Mobile Processor Energy Efficiency | AMD
https://www.amd.com/en/press-releases/2020-06-25-amd-exceeds-six-year-goal-to-deliver-unprecedented-25-times-improvement
AMD Succeeds in its 25x20 Goal: Renoir Crosses the Line in 2020
https://www.anandtech.com/show/15881/amd-succeeds-in-its-25x20-goal-renoir-zen2-vega-crosses-the-line-in-2020
「25×20」とは、AMDが2014年に設定した「2020年までに、モバイルプロセッサのエネルギー効率を25倍にする」という目標のこと。2020年にRenoir世代の「Ryzen 7 4800H」が登場したことで、25×20の目標は達成されました。技術系メディアのAnandTechで記者を務めるIan Cutress氏は、AMDによる25×20の軌跡を詳しく分析し、グラフにまとめています。
グラフを見ると、Kaveri世代からCarrizo世代、Bristol Ridge世代からRaven Ridge世代、Picasso世代からRenoir世代において性能が大きく向上していることがわかります。
Kaveri世代からCarrizo世代への間に起こった変化は、チップ上に新しい電力監視機能を実装することで、システムがより優れた電力配分を行えるようになったことだとCutress氏。Raven Ridgeでは、Zen世代のプロセッサとVega世代の内蔵グラフィックスを組み合わせることにより、パフォーマンスが大幅に向上しています。
Picasso世代からRenoir世代においては、GlobalFoundriesの12nmプロセスを採用したZen+アーキテクチャからTSMCの7nmプロセスによるZen2アーキテクチャに移行。2014年から2020年の期間で最も大きなパフォーマンス向上を達成しています。
25×20のエネルギー効率は計算パフォーマンスと消費電力によって計算されており、具体的な計算方法は下記となっています。
・base(基準):Kaveri世代の値
・計算パフォーマンスを表す「C」:Cinebench R15で計測したCPUのマルチスレッド性能と、3DMark11の総合スコアによるGPU性能を50対50の比率で平均した値
・消費電力を表す「E」:国際エネルギースタープログラムの要件に基づく「ノートPCの典型的なエネルギー消費量」
・総合的なエネルギー効率を表す「X」:CをEで除算した値
計算パフォーマンスを表す「C」を計算する具体的な式が以下。新しい世代におけるCinebench R15と3D Mark11の測定値をそれぞれKaveri世代の測定値で除算し、平均を計算しています。
消費電力「E」の計算式は非常に複雑で、スリープ時やアイドル時など、ノートPCの状態をいくつかのステージに分けて消費電力を計算しています。
Eの値がノートPC全体の消費電力であり、ノートPCを構成する他のパーツにも影響を受ける点には注意が必要だとCutress氏は指摘。AMDはEの値を測定するために内部のリファレンスプラットフォームを使用しており、通常は測定対象のプラットフォームを搭載した最初のノートPCが基準になるとのこと。
最終的なエネルギー効率はCをEで除算した値なので、Cで表されるパフォーマンスが向上すればするほど、またEで表される消費電力が低くなればなるほど、エネルギー効率の値は大きくなります。
AMDが25×20プロジェクトの評価で使用したプラットフォームは以下。これらのプラットフォームのいくつかは標準的なTDPで動作していない点に注意が必要とのこと。
パフォーマンス、消費電力、エネルギー効率をそれぞれ表で示すとこんな感じ。パフォーマンスは2014年から5.02倍に、消費電力は2014年から0.16倍になっており、最終的なエネルギー効率は31.77倍となっています。
2014年から始まったこのプロジェクトは、CPUとGPUの高度な統合と効率化、リアルタイムの電力管理やシリコンレベルでの最適化といった技術開発によって進められてきたとのこと。仮に5万台のAMDのプロセッサを搭載したノートPCを2014年モデルから2020年モデルに置き換えた場合、971トンもの二酸化炭素削減が期待できるとAMDは述べています。この二酸化炭素削減量は「樹木1万6000本の10年分の成長による効果」に相当するそうです。
AMDの特別研究員であるSam Naffziger氏は「TSMCの7nmプロセスがなければ、目標を達成するのは不可能だっただろう」とコメント。「これからの5年が楽しみだ」と語っています。
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