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「人種差別」について子どもに教える上で押さえるべき重要な9つのポイントとは?


アメリカで起きた抗議活動をきっかけに、世界各地で黒人に対する人種差別の撤廃を訴えるブラック・ライヴズ・マター運動が活発化しています。人種に対する偏見をなくすには適切な学校教育が必要不可欠だとのことで、「教師が生徒に『人種差別』について教える際に重要な9つのヒント」について、オーストラリアのサザンクロス大学シドニー大学の講師らが解説しています。

9 tips teachers can use when talking about racism
https://theconversation.com/9-tips-teachers-can-use-when-talking-about-racism-140837


◆1:正確で歴史的な背景を伝える
反人種差別の教育を行うに当たって、過去に行われていた人種差別的な慣行について教えることは必要不可欠です。オーストラリアのスコット・モリソン首相はラジオのインタビューで「オーストラリアに奴隷制はなかった」と誤った発言をしましたが、実際にあった歴史的事実を否定し、なかったことにすると、「過去の人種差別が現代の人々にまで影響を与えていること」を理解する上での妨げになります。

教師は生徒たちに人種差別的な過去を伝えるため、記念館や博物館に連れて行ったり、付近の地名について調べさせたりすることが必要だと研究者らは指摘。地名の中に人種差別の名残があるケースも少なくないそうで、たとえばオーストラリアで時折見られる「Boundary Road(境界道路)」という地名は、オーストラリアの先住民が「ここから先へは立ち入ってはならない」と決められていた境界線に由来する場合があるとのこと。

◆2:人種差別は「悪い人」だけが行っているのではないと説明する
人種差別とは、あるグループの人々が他のグループよりも優れているという考えに基づき、意識的または無意識的に維持される人種的階層のシステムです。意識的・無意識的な優越感に基づき、特定のグループが持つ文化や主張、専門知識こそが「標準」であり、それ以外のものは劣ったものだと見なされてしまいます。

近年では人種差別の形態がより無意識的になっているそうで、「人種差別は『悪い人』が行うものだ」という考えを持ってしまうと、「善良な人々」が自らの日常に潜んだ無意識的な差別を見落とし、社会の人種差別的な構造を見直す機会が得られないとのこと。そのため、教師は「人種差別はたとえ善良な人々でも、無意識のうちに行っているものだ」と教える必要があるそうです。


◆3:意図していない人種差別の影響について教える
人々は多くの場合、「自らの意思が結果よりも重要だ」という考えに陥りがちです。しかし、たとえ人種差別を行う意図を持たない人の行動であっても、結果として人種差別的な行いになってしまった場合、被害を受けた人に及ぶ影響が軽減されることはありません。

うっかり誰かに熱いコーヒーをかけてしまった場合、「そんなつもりじゃなかったのに、なぜあなたは怒っているの?」と反論するよりも「ごめんなさい」と謝罪する方が適切なように、意図しない人種差別においても自分の間違いを認めて謝罪し、今後の行動をより慎重にすることが重要です。

◆4:人種差別的な行動に対し声を挙げる勇気を持つように励ます
人種差別的な行動を見たのに沈黙を続けることは、結果として人種差別の構造を維持することに加担しているという考えがあります。そのため教師は生徒たちに、人種差別を目にした場合に建設的なフィードバックを与える方法を教えると同時に、誰かから人種差別だと指摘された場合に相手の主張を受け入れる「柔軟性」を与えるサポートを行う必要があるとのこと。


◆5:人種差別の中にもさまざまな階層があることを説明する
人種差別は単に「差別する側」と「差別する側」に2分されるものではなく、個人が持つさまざまな特徴に応じて差別の形態が複雑に入り交じっています。そのため、「黒人の男性」と「黒人の女性」では経験してきた差別の内容が大きく異なる場合があるほか、「ある面では抑圧されているけれど、別の面では特権的な階層に位置している」というケースもあることを生徒たちに教えなくてはなりません。

◆6:生徒が持つ人種的なトラウマに配慮する
人種差別について教育する際、教師が人種差別を「生徒たちが現在進行形で経験している問題」だとは考えず、単なる教育トピックの1つとして考えてしまう危険があります。教師は「生徒たちも人種差別のトラウマを抱えているかもしれない」と考え、人種差別を煽る人々に抵抗する方法を教えるだけでなく、トラウマを負った人々を支援する必要があるとのこと。

教室で人種差別に関するデリケートなトピックについて話す場合、教師は事前に生徒たちに警告し、心の準備をさせることができます。また、クラスの中にどのような人種的背景を持った生徒がいるのかをチェックし、心を傷付ける可能性がある事例や画像、ムービーの使用を避けることも検討するべきです。


◆7:包括的な行動をモデル化する
教師は教室内での行動についてモデルを示し、人種差別的な行動を防止する必要があります。「他の子が持っている文化や人種的な背景について不適切なことを言ってはならない」「特定の文化が他の文化より優れているという考えはよくない」といった風に、生徒たちに教えるのも教師の役目です。

◆8:カリキュラムの多様性を確保する
植民地政策の結果として、オーストラリアやアメリカでは白人の知識や経験が中心となった教育が行われていますが、人種差別への意識を改める上では別の視点から教育を行うことも重要です。そのため、別の文化が持つ知識や読み物、映像といった資料をカリキュラムに組み込むことで、カリキュラムの多様性を確保するべきだとのこと。

◆9:誰かを非難したり自分を恥じたりするのではなく、変化に焦点を当てる
反人種差別の教育は決して誰かを非難したり自分を恥じたりするものではなく、変化を生み出すための不快感を乗り越えることを目的としなければなりません。教師は生徒たちに正しい歴史を教えると同時に、無意識のうちに根付いた不正確な歴史や他人種へのステレオタイプについてもスポットを当て、自分自身の考えに疑問を投げかけて、変化を促す必要があります。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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