「警察は以前から黒人活動家を監視していた」と黒人ジャーナリストが証言
「ブラック・ライヴズ・マター」を合い言葉に黒人差別撤廃を訴える運動が、2020年5月末からアメリカ全土に広がっています。黒人と警察の対立が連日報道される中、黒人でジャーナリストのウェンディ・C・トーマス氏が「アメリカの警察は黒人のジャーナリストや活動家を監視しており、自分も監視されていた」と主張しています。
Police have been spying on black reporters and activists for years. I know because I’m one of them. » Nieman Journalism Lab
https://www.niemanlab.org/2020/06/police-have-been-spying-on-black-reporters-and-activists-for-years-i-know-because-im-one-of-them
メンフィス市は1960年のアフリカ系アメリカ人公民権運動の中心地であり、指導者として知られたキング牧師が暗殺されたのもメンフィス市内でした。トーマス氏は、メンフィス警察(MPD)がキング牧師を含む活動家や黒人の学生運動組合、労働組合をスパイするための部門を立ち上げたと主張しています。たとえば、キング牧師が暗殺された際の写真で、皆が射撃のあった方向を指さしている中、撃たれて倒れたキング牧師に寄り添っている男性が過激派活動家グループに潜入するよう任命されたMPDの男性警官だったといわれています。
1978年にメンフィス市は、言論の自由や憲法上の権利を侵害する可能性がある方法で警察が市民を監視することを禁じる裁判所命令に合意しました。しかし、アメリカ自由人権協会(ACLU)が「MPDが1978年の合意令に違反していた」と主張し、2018年にMPDを訴えました。
MPDが展開していたスパイ活動は「潜在的な脅威を追跡するためのもの」でしたが、2018年の裁判で存在を明らかにされたMPDのスパイは、Facebook上で根拠のないウワサや活動家の写真を集めていたり、「ブラックフードトラックフェスティバル」などのどう考えても脅威とは感じられないようなイベントの監視報告を行っていたりしたとのこと。
また、MPDは黒人活動家やジャーナリストに対しての監視や差別を強めていったとトーマス氏。例えば、トーマス氏が市長に1対1でインタビューを行いたいと申し入れたところ、市の最高通信責任者であるアースラ・マッデン氏が「市長と1対1で面会できるかどうかは客観性によって決まります。あなたのソーシャルメディアを見ると、あなたの市長に対する姿勢は客観的ではないとわかりました」と述べ、インタビューを断ったとのこと。トーマス氏は「私の取材でどこが間違っていたのかを教えてほしい」と答えましたが、返答はなかったとのこと。
また、自身の読者から脅迫メールが届き、警察に届け出た時も、特に捜査は行われず容疑者は特定されなかったとのこと。数年後に「誰がどのような手順を踏んで捜査を行ったのか」をMPDに確認したところ、担当者から情報の共有を拒否されたそうです。
ACLUとMPDの裁判で証人として呼ばれたティモシー・レイノルズ巡査部長は、Facebook上で有色人種であると自身を偽り、黒人コミュニティとつながろうとした疑いがかけられていました。
法廷の巨大なスクリーンには、レイノルズ巡査部長のFacebookプロフィールやフォローしていた人が映し出されました。ACLU側の弁護を務めていたアマンダ・フロイド弁護士は、「この書き込みは何を示していますか?」とレイノルズ巡査部長に質問したところ、レイノルズ巡査部長は「ウェンディ・C・トーマスを尾行していた」と答えました。
トーマス氏は、メンフィス市内の活動家たちとつながりがあり、ACLUが代表して起こした訴訟の原告団に含まれる人たちとも顔見知りであったため、自分がMPDの監視対象になっていたのだろうと推察しています。
トーマス氏は裁判の休憩中に、レイノルズ巡査部長を追いかけて「なぜあなたはソーシャルメディアで私をフォローしたのですか?」と尋ねましたが、レイノルズ巡査部長は「それについて話すことはできない」と答えたそうです。
トーマス氏はこの直後にメンフィス市に対して公的記録、さらにMPDがソーシャルメディアでフォローしていたトーマス氏含む3人のジャーナリストについての電子メールやブリーフィング内容の提出を要求しました。しかし、メンフィス市がこの要求に応えて一部記録を作成したのは430日後のことでした。
なお、記録にはトーマス氏がFacebookやTwitterに投稿したもののスクリーンショットが含まれており、特に2017年に参加した抗議運動に対する投稿の報告があったのこと。トーマス氏は「なぜ警察が私を公共安全の名目で監視するべき脅威と見なしているのかがわかりません」と述べています。
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