Amazonは人種差別への反対を表明しながら「裏では人種差別的なテクノロジーを警察に売り込んでいる」との指摘
by Ryan Racca
警察官の拘束により黒人男性が死亡した事件を契機にアメリカで再燃している人種差別問題に関連して、Amazonは2020年6月3日に「アフリカ系アメリカ人の支援団体に合計1000万ドル(約10億円)の寄付を行う」と発表しました。しかし、こうした反人種差別の取り組みの裏で、「Amazonは人種差別的な結果を出してしまう認証システムなどのテクノロジーを警察などに提供している」と指摘されています。
Amazon “Stands in Solidarity” but Sells Racist Tech to Police
https://theintercept.com/2020/06/03/amazon-police-racism-tech-black-lives-matter/
2020年6月1日にAmazonはTwitterで、「黒人に対する不公平で残忍な扱いを止めなければなりません。私たちは黒人コミュニティ、つまり私たちの従業員、顧客、パートナーと連帯して、構造的な人種差別と不正に対する戦いに立ちあがります」と投稿しました。
— Amazon (@amazon) May 31, 2020
また、Amazonのジェフ・ベゾスCEOも自身のInstagramアカウントで一連の出来事に言及して、黒人コミュニティへの共感を表明しています。
警察官による拘束中に黒人男性が死亡した事件を受けてAmazonのジェフ・ベゾスやMicrosoft幹部らが声を上げる - GIGAZINE
by Phil Roeder
こうした動きに対し、アメリカの総合ニュースサイトThe Interceptは、「AmazonはFacebookやApple、Googleなど競合他社と同様に、奥歯に物が挟まったようなツイートで社会正義と公平な取り締まりへの支持を表明しました。しかし、Amazonは人種差別的な取り締まりを可能にしてしまうと専門家に指摘されているツールをアメリカの法執行機関に提供している点で、テクノロジーの巨人の中でもひときわ異彩を放っているといえます」と述べて、Amazonを厳しく非難しました。
The Interceptが指摘している「ツール」とは、Amazon Web Services(AWS)が展開している顔認証APIである「Amazon Rekognition」のことです。Rekognitionは官民問わずさまざまな組織に提供されており、法執行機関の導入実績も複数あります。
AIを活用した顔認証システムを提供しているのは、なにもAmazonだけではありません。しかし、マサチューセッツ工科大学(MIT)が各社の顔認証システムを検証したところ、「Amazonの顔認証システムが黒人女性を正しく認識できる確率はたった68.63%で、Microsoftの98.48%とはかけ離れていた」という結果が出ていることなどから、Rekognitionは特に人種的な公平性に問題があると指摘されています。
MITの実験の詳細については、以下の記事を読むとよく分かります。
「Amazonの顔認証ソフトの差別性」を巡りAmazonとMITの研究者が対立する - GIGAZINE
by Joy Buolamwini
監視と人種差別を研究している独立研究者のクリス・ギリアード氏は、IT系ニュースサイトWiredの取材に対し、「もしAmazonが本当に黒人が置かれている状況に問題を感じているなら、彼らはRekognitionの販売をやめたり、黒人従業員の扱いを変えたりするはずです」と述べて、Amazonの言動の不一致を指摘しました。
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