黒人男性の死亡事件に対する抗議活動が行われるアメリカで人気を集めているアプリとは?
黒人男性のジョージ・フロイド氏が白人警察官による拘束中に亡くなった事件を受け、アメリカでは黒人への不平等な扱いに抗議する大規模なデモや暴動が発生しています。海外メディアのRecodeは、「アメリカ国内におけるアプリのダウンロードランキングから、人々がどのように大規模な抗議活動に参加しているのかがわかる」と指摘しています。
From Citizen to Signal, the most popular apps reflect America’s protests - Vox
https://www.vox.com/recode/2020/6/3/21278558/protest-apps-signal-citizen-twitter-instagram-george-floyd
アメリカ各地で警察の残酷な行為に対する抗議が巻き起こる中、「アメリカ人のアプリダウンロードがシフトしています」とRecodeは指摘。人気のあるアプリに着目することで、抗議活動に参加する人々がどのようにテクノロジーを使い、行動を起こしているのかをうかがい知ることができるとのこと。
フロイド氏の事件以降に大きな人気を集めたアプリとして、警察無線をスマートフォンで聞くことができる「5-0 Radio Police Scanner」が挙げられます。「5-0 Radio Police Scanner」はアプリが直接無線を傍受するわけではなく、無線を傍受したボランティアによりフィードが提供される仕組み。2020年5月末は「5-0 Radio Police Scanner」のユーザー数が1日ごとに倍になる勢いであり、時は「無料アプリランキング」の2位にランクインしたそうです。
黒人男性の暴行死に対する大規模抗議活動の中で警察無線を聞けるアプリが大人気に - GIGAZINE
また、位置情報ベースでさまざまな公的機関の動きを知ることができる「Citizen」や、暗号化された通信が可能なメッセージングアプリの「Signal」なども人気のアプリとなっています。アプリの利用状況に関するデータを提供するApptopiaによると、いずれのアプリもフロイド氏の事件以降は1日当たりのダウンロード数の最高記録を更新し続けているそうです。Citizenは2020年6月初頭のiOSアプリのダウンロードランキングで4位になり、Signalも6月2日のダウンロードランキングで8位にランクインしました。
Citizenは「5-0 Radio Police Scanner」のように警察の情報を傍受するものではありませんが、「緊急通報用電話番号である911に関する情報を知る」ことを目的として開発されており、公的に利用可能な警察や消防署の情報を監視して近隣のユーザーに情報を発信しています。また、事故や事件の現場に居合わせたユーザーがムービーを投稿してコメントを残し、他の人々に「現場で何が起こっているのか」を伝えることも可能とのこと。
これらの機能により、ユーザーはCitizenを通じて警察の動きを監視しつつ、抗議活動に関するリアルタイムの状況を幅広いユーザーに伝えることができます。当初は「自警団的な動きを奨励するものだ」と非難を浴びていましたが、Citizenの利用可能範囲は次第に拡大しており、記事作成時点ではニューヨーク市、サンフランシスコのベイエリア、ボルチモア、ロサンゼルス、フィラデルフィアといった広い地域で使用可能です。
6月2日には一時的にCitizenがGoogle Playから削除される事態となりましたが、その後すぐに復元されました。RecodeはGoogleとCitizenの両社に連絡を取りましたが、なぜCitizenが削除されたのか、そして復元されたのかについての回答は得られませんでした。CitizenはRecodeへの声明の中で、「私たちの核となるミッションは、市民と法執行機関の間に透明性と説明責任を育むことです。人々はCitizenを利用して安全を確保し、彼らの都市で何が起きているのかを、リアルタイムの警報とブロードキャストで知ることができます」と述べています。
by Jenny Salita
Signalは暗号化されたメッセージングアプリであり、テキストメッセージや通話、ムービーなどを暗号化してやり取り可能。スマートフォンが盗まれたり法執行機関に押収されたりした場合でも、やり取りを隠すことができます。世界各地の抗議デモに参加する人々は国家による監視を避けるため、こうした暗号化が可能なアプリを使ったやり取りを重視しています。
また、Recodeは抗議活動の中でTwitterやInstagramといったSNSも注目を集めており、デモに関する情報を共有したり、画像を投稿したりして政府への抗議を表明するプラットフォームとして利用されていると指摘。
なお、COVID-19のパンデミックにおいて人気を集めているオンライン会議ツールZoomは、「一部の人々がZoomを悪用する場合に備え、FBIや地元の法執行機関としたいため、無料ユーザーに対してはエンドツーエンドの暗号化を実施しない」と述べています。
Zoom won't encrypt free calls because it wants to comply with law enforcement
https://thenextweb.com/security/2020/06/03/zoom-wont-encrypt-free-calls-because-it-wants-to-comply-with-law-enforcement/
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