Twitterはトランプ大統領のツイートにどういうプロセスでファクトチェックを推奨するラベルを付けたのか?
by Christopher
2020年5月28日に、トランプ大統領がTwitterに投稿したツイートに対して、Twitterが「誤解を招く可能性がある」として、ファクトチェックを推奨するラベルを付与しました。このラベル付与は新型コロナウイルスのパンデミックで誤情報が特に増加したことから導入された新しいシステムで、政治的なツイートに付与されたのは今回が初めての事例でした。Twitterの中でどういうプロセスが行われたのかについて、ニュースブログサイトのOneZeroが報じています。
Inside Twitter’s Decision to Fact-Check Trump’s Tweets
https://onezero.medium.com/inside-twitters-decision-to-fact-check-a-trump-tweet-b5a30eaa3b1d
発端となったのは、トランプ大統領が2020年5月26日に行った「郵便投票は不正選挙につながる」というツイートに対して、ファクトチェックを推奨する注意書きのラベルがTwitterによって付与されたことでした。
Twitterがトランプ大統領のツイートに初めて「誤解を招く可能性がある」とラベル付け - GIGAZINE
これに対してトランプ大統領はトランプ大統領は「共和党としては、ソーシャルメディアが保守派の声を黙らせていると感じている」「こうしたことがまかり通る前に、ソーシャルメディアに対する規制を強化するか、閉鎖させるかすべきだ」と不快感を表明し、ソーシャルメディアへの対立姿勢をみせました。
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そして2020年5月29日にトランプ大統領は、(PDFファイル)通信品位法第230条で保護される「TwitterやFacebookなどの大手SNSに対して、ユーザーが投稿したコンテンツに対する免責」を剥奪する大統領令に署名。トランプ大統領は「各SNSはもはや中立的な討論の場でなく『政治運動』を行っているため、規制が必要だ」と述べています。
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Twitterのグローバルコミュニケーション担当ヴァイス・プレジデントのブランドン・ボアマン氏によれば、「トランプ大統領の郵便投票に関するツイートが市民の清廉性に関するポリシーに違反する可能性がある」と、Twitterと提携している非営利団体から報告があったとのこと。この市民の清廉性に関するポリシーは、2018年のアメリカ中間選挙の際に導入されたもの。ポリシーに違反するとツイートの削除やプロフィールの修正、アカウントの永久凍結などの処分が下される場合があります。
ポリシーに違反すると報告されたトランプ大統領のツイートはまず、Twitter内部にあるチェックチームによってチェックされました。最初のチェックではファクトチェックのラベル付けではなく、あくまでも市民の清廉性に関するポリシーに違反していないかどうかを確認しただけだったそうです。チェックの結果、トランプ氏のツイートは「市民の清廉性に関するポリシーには違反していない」という結論になったとのこと。
しかし、Twitterは2020年5月11日からTwitterは要ファクトチェックの「ラベル付け」を行っており、トランプ大統領のツイートはこのラベル付けの対象になる可能性が検討されることとなりました。ラベル付けは、新型コロナウイルス感染症に関する誤情報がソーシャルメディア上に出回った問題を受けて導入されたシステムでしたが、Twitterは「必要に応じて、さまざまな種類の未確認の主張やウワサに関するコンテキストを提出するために、今後も新しいラベルを導入していきます」と述べています。
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Twitterの内部チームによって、トランプ大統領のツイートが再度チェックされ、このラベル付けのシステムを適用できるかどうかが議論されました。これで、トランプ大統領の郵便投票に関するツイートは、政治関連のものとして初めて要ファクトチェックのラベル付けが適用されたツイートとなりました。
しかし、「トランプ大統領のツイートにはラベル付けすべき」とチェックチームで判断されても、すぐには実行されません。チェックの結果はTwitterの信頼と安全担当ヴァイス・プレジデントであるデル・ハーヴィー氏と、法務顧問のショーン・エジェット氏に報告され、承認を待つ必要があります。なお、本来はジャック・ドーシーCEOの代理人の1人であるヴィジャヴァ・ガッデ氏がチェックする予定だったのですが、ガッデ氏が出産休暇中だったため、ハーヴィー氏とエジェット氏によるチェックになったそうです。
by Howard Lake
ハーヴィー氏とエジェット氏は、「トランプ大統領の郵便投票に関するツイートにファクトチェックのラベル付けをすべき」というチェックチームの評価と判断に同意。5月26日の午後過ぎまでに、ドーシーCEOを含めた役員の前でラベル付け案のプレゼンテーションが行われ、役員の賛同を得ました。そして、ようやくボアマン氏と政府対応担当ヴァイス・プレジデントのモニク・メッシュ氏のもとにラベル付けの執行決定が委ねられたとのこと。
ボアマン氏によれば、政府対応担当が社内会議や役員会議が終わったプロセスの最後に登場するのは、政府から独立した方針決定プロセスを実現するためだとのこと。また、ボアマン氏は、「トランプ氏が対立姿勢を見せることは事前に予想できたものの、通信品位法第230条を修正してくるのは完全に予想外だった」と述べており、この修正によって、上記のチェック体制に関わった人全員が法的責任を追及される可能性を指摘しています。
ジャック・ドーシーCEOは、トランプ大統領がソーシャルメディアへの対立姿勢を明らかにしたことが報じられた5月28日に、「企業としての私たちの行動に最終的に責任を負うのは誰か、それは私です。私たちの従業員は法的責任の追及から除外してください。私たちは、世界的に選挙に関する誤った情報、あるいは論争の的となっている情報を指摘し続けます。そして、私たちは自分が犯した過ちを認め、それを自分のものにします」とツイートしました。
Fact check: there is someone ultimately accountable for our actions as a company, and that’s me. Please leave our employees out of this. We’ll continue to point out incorrect or disputed information about elections globally. And we will admit to and own any mistakes we make.
— jack (@jack) May 28, 2020
なお、この件について、Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは「ソーシャルメディアは一般的に、真実の仲裁者であるべきではありません。政治演説は民主主義の中でもっともデリケートな部分の1つであり、人々は政治家の発言を見る権利を持っているはずです」と述べ、Twitterの対応を批判しました。
Zuckerberg: Facebook, Twitter should not fact-check political speech
https://www.cnbc.com/2020/05/28/zuckerberg-facebook-twitter-should-not-fact-check-political-speech.html
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in Posted by log1i_yk
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