サイエンス

「50日の都市封鎖と30日の制限緩和」を繰り返すことで新型コロナウイルス感染症の流行を抑制できるとの研究結果


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を抑えるため、世界各国では社会的距離を保つ戦略が実行されていますが、厳格な都市封鎖を何カ月も続けることで経済に深刻なダメージが残るかもしれないとの懸念もあります。そこで、イギリスやオーストラリア、アメリカなどの研究者からなる国際的な研究チームは、「50日間の都市封鎖と30日間の緩和」を繰り返すことで、COVID-19のパンデミックを制御できるとの研究結果を発表しました。

Dynamic interventions to control COVID-19 pandemic: a multivariate prediction modelling study comparing 16 worldwide countries | SpringerLink
https://link.springer.com/article/10.1007/s10654-020-00649-w

Rolling 50/30 day cycle of lockdown and relaxation could be a useful option for managing COVID-19, model suggests | University of Cambridge
https://www.cam.ac.uk/research/news/rolling-5030-day-cycle-of-lockdown-and-relaxation-could-be-a-useful-option-for-managing-covid-19


50 days in lockdown, 30 days of relaxation, could help contain COVID-19 pandemic | Live Science
https://www.livescience.com/covid-19-pandemic-lockdown-relaxation-cycles.html

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界中で猛威を振るっており、2020年5月21日の時点で感染者が494万人以上、死亡者が32万以上となっています。COVID-19のパンデミックは世界中の医療システム、社会、政府にとって前例のない課題であり、記事作成時点では効果的で標準化された治療法やワクチンが存在していません。

そんな状況の中で、各国は「社会的距離を保つことにより、人から人へ新型コロナウイルスが感染するケースを最小限に抑える」という対策に焦点を当てています。このような対策は病気のまん延を遅らせて医療崩壊を防ぐために重要ですが、その一方で厳格な都市封鎖は失業や経済の停滞、社会的混乱を引き起こす可能性が指摘されています。


アメリカなどの国々では、「政府による強固な都市封鎖は人間の権利を侵害している」と主張する住人たちが、外出制限に対する抗議デモを相次いで開催していることが報じられています。

外出制限に対する抗議デモがアメリカで相次いで開催中、Facebookは抗議デモのイベントページの削除措置を実施 - GIGAZINE


住人の精神的健康や経済的な問題から、都市封鎖を数カ月にわたって継続することは困難との見方も強まっており、新たなアプローチとして「社会的距離を保つ制限を課す期間と、制限を緩和する期間を交互に繰り返す」という方法も注目を集めています。そこで研究チームは、全世界の人口の4分の1を占めており地理的・所得的に多様な、オランダ・ベルギー・チリ・コロンビア・メキシコ・南アフリカ・ナイジェリア・エチオピア・タンザニア・ウガンダ・インド・バングラデシュ・パキスタン・スリランカ・イエメン・オーストラリアの16カ国を対象にしたモデルを開発し、行動制限の実施と緩和に関する複数のシナリオをシミュレートしました。

まず1つ目のシナリオは、「何の行動制限も課さない」というもの。この場合、集中治療室(ICU)での治療を必要とする患者数はすぐに限界を突破し、16カ国で合計約780万人が死亡するという結果になりました。COVID-19の流行は、ほぼ全ての国で200日間ほど続いたとのこと。

2つ目のシナリオは、「50日間の緩やかな行動制限」と「30日間の制限解除」を繰り返すというものでした。「緩やかな行動制限」とは、一般的な社会的距離を保つ戦略を維持し、COVID-19に対して脆弱なグループを保護し、学校の閉鎖や大規模なイベントの禁止といった措置を執るものの、個人の外出は認める程度の制限です。このシナリオでは、感染症の患者1人がどれだけ感染症を拡散させるかの目安である「基本再生産数(R0)」が0.8に低下したものの、ICUに入る患者数は約3カ月で限界を突破し、16カ国の合計で350万人が死亡するという結果になりました。パンデミックは高所得国家で約12カ月、中~低所得国家では約18カ月持続するという結果でした。

研究チームが試した3つ目のシナリオは、「50日間の都市封鎖」と「30日の制限解除」を繰り返すというもの。都市封鎖では住人の外出が基本的に禁止され、生活必需品の購入など、生活にどうしても必要な場合のみ外出が認められます。このシナリオをシミュレートしたところ、R0は0.5まで低下し、16カ国の死亡者数は13万人ほどにとどまりました。その一方で、新型コロナウイルスに感染する人の数が減るため、抗体を獲得する人が少なく、パンデミック自体は全ての国で18カ月以上持続するという結果になりました。


論文の筆頭著者であるケンブリッジ大学のRajiv Chowdhury准教授は、「厳格な社会的距離を保つ期間と比較的制限が緩やかな期間の断続的な組み合わせにより、人々とその国の経済が一定の間隔で『呼吸』できるようになる可能性があります。特に、リソースの乏しい地域において、社会的距離を保つ戦略をより持続可能なものにする可能性があります」と述べています。

論文の共著者を務めたベルン大学のOscar Franco教授は、「私たちの研究は、COVID-19をコントロールして感染のピークを遅らせるため、各国が使用できる戦略的なオプションを提供します。これにより、各国は医療システムを強化する貴重な時間を得て、新しい治療法やワクチンを開発する努力を増やすことができるはずです。どの戦略を選択するかという問題に対する簡単な答えはありません」と述べ、低所得国家はCOVID-19による死亡や医療崩壊と、長期的な経済崩壊のジレンマに直面していると指摘しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
新型コロナウイルスの影響で止まった社会経済はいつ・どのように再開していけばいいのか? - GIGAZINE

新型コロナウイルスが景気後退の引き金となる危険性はあるのか? - GIGAZINE

新型コロナウイルスの影響で失業者が世界規模で2500万人増加の見込み、かつてないほどの経済危機に各国はどのような対策を行っているのか? - GIGAZINE

新型コロナウイルスの影響で世界の二酸化炭素排出量が前年比で17%減少、2006年とほぼ同水準まで低下したと判明 - GIGAZINE

新型コロナウイルスによる封鎖措置の中で幸福感を得るには「ゲームをプレイすること」がオススメだと心理学者が主張 - GIGAZINE

新型コロナウイルス対策で社会的距離を保つことによる「5つの悪影響」とは? - GIGAZINE

「新型コロナウイルスによる都市封鎖を解除後に離婚する夫婦が急増した」という報告 - GIGAZINE

都市封鎖の影響でアルコールのネット販売の売上高が243%も増加、宅飲みのためのオリジナルカクテル「隔離ティーニ」も誕生 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.