「新型コロナウイルスのワクチン研究成果を盗もうとした」とアメリカ政府が中国を非難
2020年5月13日(水)、アメリカ合衆国国土安全保障省(DHS)と連邦捜査局(FBI)が「アメリカにおける新型コロナウイルスのワクチン研究を中国政府に関連するハッカーが盗み出そうとした」と非難しました。
FBI and CISA Warn Against Chinese Targeting of COVID-19 Research Organizations — FBI
https://www.fbi.gov/news/pressrel/press-releases/fbi-and-cisa-warn-against-chinese-targeting-of-covid-19-research-organizations
People’s Republic of China (PRC) Targeting of COVID-19 Research Organizations — FBI
https://www.fbi.gov/news/pressrel/press-releases/peoples-republic-of-china-prc-targeting-of-covid-19-research-organizations
U.S. accuses China-linked hackers of stealing coronavirus research - Reuters
https://www.reuters.com/article/us-health-coronavirus-china-cyber/u-s-accuses-china-linked-hackers-of-stealing-coronavirus-research-idUSKBN22P2CS
U.S. accuses Chinese hackers of trying to steal coronavirus vaccine research
https://www.cyberscoop.com/coronavirus-vaccine-china-hacking-dhs-fbi/
DHSとFBIによると、中国政府関連のハッカーたちはアメリカにおける新型コロナウイルスのワクチン研究のほか、新型コロナウイルスの治療に関連する知的財産やその他の情報も盗もうとしているとのこと。
DHSのサイバーセキュリティ・インフラストラクチャー安全保障局とFBIが共同で出した声明では、「FBIは中国に所属するサイバー攻撃者らによる、新型コロナウイルス関連の研究を実施しているアメリカの組織を標的としたハッキング攻撃を調査しています」「ハッカーによる情報の潜在的な盗難は、安全で効果的かつ効率的な治療オプションの提供を危うくします」と、中国系のハッカーによる新型コロナウイルスに関連する研究を対象としたサイバー攻撃の存在について警告しています。DHSおよびFBIは医学研究機関に対して中国系ハッカーによるサイバー攻撃の存在を警告しながら、サイバー攻撃の疑いがある場合にはその詳細を同機関に報告するようにと促しました。
なお、中国によるアメリカの政府施設・医療機関・研究所・製薬会社などを対象としたサイバー攻撃は2020年4月末頃から報告されています。
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その後、DHSとFBIが「中国政府がスパイやハッカーを駆使して新型コロナウイルスのワクチンや治療薬に関する機密情報を盗み出そうとしている」と警告する見込みだと、The New York Timesが報じていました。この報道通り、DHSとFBIが中国系ハッカーによる攻撃の存在を警告したわけです。
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なお、中国外務省の広報担当者はDHSおよびFBIの主張をすべて否定しており、「証拠がなく、ウワサや中傷で中国を標的とすることは不道徳だ」と述べています。
アメリカの政府機関からこのような声明が出されることは、新型コロナウイルスに関する状況でアメリカと中国の間に緊張が高まっていることを示す最新の兆候です。トランプ政権は中国の武漢で最初に出現した新型コロナウイルスについて、中国政府はその深刻さを認識せずに世界を誤解させたと非難してきました。また、トランプ政権のマイク・ポンペオ国務長官は、新型コロナウイルスは「武漢ウイルスと呼ぶべきである」と主張し、中国は新型コロナウイルスの責任を取るべきとしています。
アメリカの研究機関などが保持する新型コロナウイルスに関する研究データを対象としたサイバー攻撃の存在はこれまでにも報じられてきました。しかし、これまではその攻撃が「中国政府に関連するハッカーによるもの」であると具体的に指摘されることはありませんでした。
FBIのサイバー部門で次長補佐を務めるTonya Ugoretz氏は、2020年4月の時点で「政府関連のハッカーが新型コロナウイルス関連の研究を行っているアメリカの企業をスパイしている」と警告していましたが、具体的にどの国の政府がこのサイバー攻撃に関わっているのかは言及していませんでした。また、2020年5月の第2週にはDHSと英国国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)が、ハッカーが世界中の複数のグローバルヘルスケア組織と製薬会社をターゲットにサイバー攻撃を行っていると警告しています。
しかし、DHSとFBIの声明は中国政府を名指しで批判するものです。なお、中国政府が公衆衛生上の脅威に対処するためにハッカーを動員したのは、これが初めてのことではありません。サイバーセキュリティ企業のFireEyeによると、中国政府はがん発生率の急増に直面し、ハッカーを用いてがん研究機関を対象にサイバー攻撃を繰り返したことがあります。
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