新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の情報を盗むサイバー犯罪が急増、アメリカ当局は名指しで中国を非難する見込み
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)危機に乗じて、各国は「情報戦」に注力し始めています。アメリカ合衆国連邦捜査局(FBI)と国土安全保障省(DHS)はまもなく「中国がスパイとハッカーを駆使してCOVID-19のワクチンと治療薬の機密を盗みだそうとしている」と警告を発する見込みだとアメリカ大手紙のThe New York Timesが報じました。
U.S. to Accuse China of Trying to Hack Vaccine Data, as Virus Redirects Cyberattacks - The New York Times
https://www.nytimes.com/2020/05/10/us/politics/coronavirus-china-cyber-hacking.html
The New York Timesによると、FBIとDHSがまもなく発表しようとしているのは、「中国がワクチン、治療および検査に関する知的財産・公衆衛生データを違法な手段で盗み出そうとしている」という警告です。トランプ政権は大学・民間の研究所からデータを盗むために研究者や学生が暗躍していると見なしており、この種の情報窃盗犯を「Nontraditional actors(非伝統的行為者)」と遠回しに表現しているとのこと。
中国に対する警告は、アメリカサイバー軍とアメリカ国家安全保障局と連携の上で行われる予定だとThe New York Timesは言及。トランプ政権は「世界規模での新型コロナウイルスの流行は中国に責任がある」として一貫した非難を行っており、今回の警告もその流れをくむものだとThe New York Timesは記しています。
トランプ大統領 コロナ感染拡大で中国を批判「最悪の攻撃だ」 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200507/k10012420051000.html
2020年5月5日には、アメリカのDHSとサイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁、そしてイギリスの国立サイバーセキュリティーセンターは合同で医療機関、製薬会社、学会、医学研究組織、地方自治体などに対して大規模なサイバー攻撃が行われていると共同声明を発表していました。この共同声明には特定の国家名は含まれていませんが、The New York Timesは「表現を見ると、この攻撃を行っているのはロシア、中国、イラン、北朝鮮などの以前からサイバー攻撃を盛んに行っている国だと暗に示唆されている」と記しています。
中でもイランは新型コロナ治療薬「レムデシビル」製造元に対してサイバー攻撃を仕掛けたという強い疑惑が持たれています。
新型コロナ治療薬「レムデシビル」製造元にイラン系ハッカー集団がサイバー攻撃か - GIGAZINE
しかし、セキュリティの専門家によるとこの種のサイバー攻撃を強めているのは中国やロシア、イランだけではありません。イスラエルの治安当局は農村の水道システムにイランがサイバー攻撃を仕掛けたと発表。情報筋によると、ベトナムは中国当局に対するサイバー攻撃を数週間にわたって展開しており、韓国は世界保健機関と北朝鮮、日本、そして同盟国であるアメリカをターゲットにしてサイバー攻撃を行っているとのこと。
The New York Timesは、サイバーセキュリティに割く余力のない病院や、在宅勤務に対応するために外部から企業内ネットワークにアクセスを許可している企業が攻撃の対象となっていると指摘。ナイジェリアの民間サイバー犯罪者集団もCOVID-19騒動に乗じており、新型コロナウイルスに関連する詐欺やダークウェブでの情報窃取で利益をあげていると言及しました。
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