新型コロナウイルスの影響によるトラフィックの激増を持ちこたえたインターネットの裏舞台とは?
パンデミックの影響で、多くの人がリモートワークに移行したり、可能な限り外出を控えたりしていますが、こうした社会的距離を保った暮らしを支えているのがインターネットです。新型コロナウイルスが猛威を振るう中、インターネットでは一体どんな変化が起きていて、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)はどうやってそれに対処したのかを、アメリカの月刊誌The Atlanticがまとめています。
The Miracle of the Internet's Not Breaking - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2020/05/miracle-internet-not-breaking/611212/
アメリカでは、新型コロナウイルスの流行が本格化するに従い、インターネットの利用が急増しました。特に2020年3月中旬にさしかかると、アメリカ最大手の通信事業社AT&Tが提供するインターネットサービスのトラフィックは前月に比べ20%増加。4月には1~2月の平均に比べて25%増加し、利用量の増加はさらに加速していきました。20%というとそれほど増えていないようにも思えますが、The Atlanticは「高速道路を走る長距離トラックや、アメリカ全土の空港のフライトが突然20%も増えることを想像してみて下さい。きっとどんなインフラも1カ月と持たないでしょう」と指摘しています。
トラフィックの激増には、人々の生活がさまざまな形で変化していることが影響していますが、こうした要因は大きく2つに分けることができます。1つ目は「ストリーミング配信の利用量増加」です。メールやメッセージのやりとり、ウェブサイトの閲覧といったインターネットの利用はどれも回線をそれほど圧迫しませんが、ストリーミング配信は非常に大量のトラフィックを必要とします。
アメリカでは、全世帯の約70%が何らかのストリーミング配信サービスに加入しているとされており、その利用者の大半が「3月には2月より多くストリーミング配信を利用した」とアンケートに答えています。特に、多くの人がくつろぎながら映像コンテンツを楽しむ平日21時以降や週末になると、トラフィックはピークに達します。
2つ目の変化が「家庭における仕事上のインターネット利用の増加」です。労働者がそれまでオフィスで行ってきた打ち合わせや会議は、ZoomやSkypeなどを介したビデオ会議に置き換えられているため、日中の住宅地におけるインターネット利用はこれまでにないほど増加しました。
郊外や住宅地に引かれているインターネット回線は「ラストワンマイル」と呼ばれていますが、こうした回線は地域の幹線となるネットワークから細かく枝分かれするように構築されているため、都市やオフィスの回線よりも柔軟性や冗長性に欠けるとのことです。
こうした変化に対応するため、現場作業を担当するAT&Tのエンジニアや修理担当者らは、昼夜を問わず新しい光ファイバー回線の敷設とルーターの設置を行う作業に追われているとのこと。また、ネットワークの断線や遅延が許されない病院などを抱える地域では、バックアップの移動基地局なども動員して故障に備えています。
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さらに、万が一の事態に備えたハードウェアとソフトウェア両面での対策も行っています。AT&Tのネットワーク復旧部門は、非常時用の機材が保管されている倉庫をアメリカ内外に合計5カ所保有しています。こうした倉庫には、トレーラーで運搬可能な基地局や発電機、あらゆる種類のスペアパーツのほか、災害に対応するための無人偵察機、小型飛行機、防護服、非常食としての軍用レーションまで備えられています。
また、危機に対して迅速に対応できるように、パンデミックなどの事態を想定した机上演習を日常的に実施して、災害に備えています。例えば、緊急時にはあえて通常のネットワークの保守作業を中断することで、重要なネットワークの維持に注力する対応などがマニュアル化されているとのこと。
2万2000人の技術者を率いてAT&Tのテクノロジーオペレーション部門を運営するクリス・サンバー氏は、The Atlanticの取材に対し「我々のネットワークは、余裕があるように設計されていますが、あちこちで問題が発生している現状は、アメリカ全土規模のモグラたたきをやっているようなものです。しかし、わたしたちは切迫感と使命感をもって経済の維持に努めます」と話しました。
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