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自分でワイヤレスISPを立ち上げるには一体どんなことをする必要があるのか?


有線でのブロードバンドインターネットを提供するISPが少ないアメリカでは、無線技術を使ったISPであるWISPが商用・非商用問わずよく使われるとのこと。そこで、家庭向けや企業向け、有線や無線のものを含め、これまでさまざまなネットワークを構築した経験のあるグラハム・キャッスルトン氏が、自分でWISPを立ち上げる方法をレクチャーしています。

Start Your Own ISP
https://startyourownisp.com/

キャッスルトン氏は、WISPを自前で立ち上げる際のポイントを、次の10のステップに分けて解説しています。

◆1:WISPに適した場所かを評価
WISPで使用される周波数帯の電波は障害物に弱いため、立地を考える上では自分がWISPを立ち上げようとしている場所の「家の密度」を気にする必要があります。家やアパートが密集しすぎていると、電波の通りが悪くなりますが、あまり家がまばらだとユーザー数が少なすぎて利益が出せません。そのため、WISP用のタワーから半径3~5マイル(約5~8km)以内に家屋が500軒、つまり利用率10%と仮定した場合に顧客が50人ほど見込める立地がベストとのこと。

また上記と同じ理由で、起伏が激しく丘が多い場所もあまり適しません。理想的なのは、山に囲まれた盆地の山裾に中継ポイントを設置できるような場合など、中継ポイントからサービス対象エリアすべての家庭の屋根が見渡せるようなケースです。


◆2:回線プロバイダーを選ぶ
キャッスルトン氏によると、WISPは既存のISPから固定回線を借りてインターネットに接続する方式が大半だとのこと。既存のISPから回線を借りて独自のISPを立ち上げるというのは無理がある話のようにも思えますが、大抵のISPではビジネス向け事業と家庭向け事業は独立しているので、法人としてISPを借りたいと申し出れば普通に応じてくれることが多いそうです。

借りる回線の理想的な条件は、リース料が月額1000ドル~3000ドル(約11万円~33万円)と手頃であること、すでに拠点となる建物で回線工事が済んでいること、その建物がサービス提供地域に十分近い場所であることです。

◆3:リレーサイトの準備
回線を確保したら、次はネットワークをつなぐリレーサイトを用意する必要があります。キャッスルトン氏の場合、ドライブしたりGoogle Earthで調べたりしながらリレーサイト設置場所の候補リストを作り、そこの所有者から場所を借りてリレーサイトにしているとのこと。

キャッスルトン氏は所有者との交渉のポイントについて、「お金を払いすぎないように、まず月額100ドル(約1万1000円)程度から始めて、500ドル(約5万5000円)を上限としてください。間貸しさせてくれたらインターネットを無料で提供すると約束するだけでも応じてもらえる場合があります」とアドバイスしました。また、必ず書面で契約を取り付けることや、契約期間は可能な限り長くするのも重要とのことです。


◆4:ハードウェアの調達
続いて、実際にWISPを構築する機器を準備します。必要なものは、アクセスポイントとカスタマ構内設備(CPE)バックホール、その他のエンクロージャーなどです。

キャッスルトン氏は経験則から、「Amazonで個別に購入することもできますが、Baltic NetworksCTI Connectなどのディストリビューター(販売代理店)から一括で購入した方が、価格面でもパフォーマンスの面でもいい場合が多いです」と述べました。

◆5:料金請求と顧客管理
自分でISPを立ち上げるので、ユーザーを顧客として管理して料金を支払ってもらう業務は避けて通れません。この業務には、通信機器メーカーのUbiquitiが無料で提供しているISPビジネス用ソフトであるUCRMや、オープンソースのWISP管理プラットフォームであるCelerateFreesideなどを活用すると便利とのことです。

◆6:ネットワークの設計
最も簡単なのは、ルーターを介してスイッチをインターネットに接続し、そこからアクセスポイント経由で顧客にインターネットを提供するパターンです。すべての顧客が同じブロードキャストドメイン上で同じIPアドレスを共有するため、拡張性には難がありますが、WISPを始める分には問題ないとのこと。


不都合が生じてネットワークを拡張する場合は、ルーターを追加したり……


VLANを使うなどすると、通信をセグメント化することができます。


また、WISPのサービスは30Mbp・50Mbp・100Mbpといったプランで販売することになるため、一部の顧客がこの制限を超えた速度を出して他の人の回線を圧迫しないように、CPEで速度制限をかけたりPowerCODEなど速度の自動制御機能付きのWISP管理プラットフォームを使ったりするといいそうです。

◆7:機器の取り付け(サービス側)
ネットワークを設計したら、次はそれを固定回線やリレーサイトに設置します。固定回線に設置する最も基本的なWISP用のタワーの概略図はこんな感じ。


◆8:機器の取り付け(顧客側)
続いて、顧客の各家庭に受信用の機器を取り付けます。取り付け後のテストでしっかりインターネットに接続できれば、WISPの導入は成功といえます。


◆9:サポートやマーケティング
無事WISPが立ち上げられたら、次は顧客のサポートと顧客数を増やすマーケティングです。顧客からの典型的なクレームは「遅すぎる」というもの。例えば、Netflixで4Kの動画を見るのに必要な回線速度は25Mbpsほどですが、25Mbpsぴったりのプランや30Mbpsのプランでは利用者が多い時間帯に必要な速度を確保できないこともあります。そうした場合は、1ランク上のプランを提案して「これならNetflixを見てる最中に『読み込み中』と出ませんよ」と勧めればいい、とキャッスルトン氏はアドバイスしています。

また、事業を拡大したいなら広告を打つ必要もあります。とはいえ、WISPの電波が届かないような地域に広告を出しても意味がないため、対象地域の家庭にチラシを配る方法が基本になるとのこと。また、事業が軌道に乗ったら、「口コミでお隣さんが新規加入したら料金が1カ月無料」といったキャンペーンも効果的なのだそうです。

◆10:メンテナンス
メンテナンスは、ソフト面とハード面に大別されます。ソフト面でのメンテナンスはネットワークの監視で、これにはネットワーク監視システム(NMS)が必要ですが、これは大抵のWISP管理プラットフォームに付属しています。また、ネットワーク機器などのハードウェアは雨風や小動物などさまざまな原因で故障するので、これらの保守点検も必要になります。

キャッスルトン氏は上記の10ステップのほか、機器の取り付けに使う工具のリストやGoogle Earthを使って正確にネットワーク機器を設置する方法なども公開しています。

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in ネットサービス,   ハードウェア, Posted by log1l_ks

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