Amazonの重鎮が辞職、「新型コロナウイルス対策改善を求めて抗議した従業員の解雇」の失望が理由

by Fibonacci Blue

AmazonのクラウドコンピューティングサービスAmazon Web Services(AWS)のヴァイスプレジデント兼上級エンジニアだったティム・ブレイ氏が、辞職していたことが判明しました。ブレイ氏は自身のブログに掲載した声明の中で、「Amazonの新型コロナウイルス対策の改善を求めていた従業員が解雇されたことへの失望」が辞職の原因だと述べています。

ongoing by Tim Bray ・ Bye, Amazon
https://www.tbray.org/ongoing/When/202x/2020/04/29/Leaving-Amazon

Amazon VP Resigns, Calls Company ‘Chickenshit’ for Firing Protesting Workers - VICE
https://www.vice.com/en_us/article/z3bjpj/amazon-vp-tim-bray-resigns-calls-company-chickenshit-for-firing-protesting-workers

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う需要の急増のため、Amazonは10万人の倉庫労働者を新規雇用するなどして対応してきました。しかし、現場で働く従業員からは、Amazonの新型コロナウイルス対策は不十分であるとの声が上がっており、2020年3月には一部の従業員がストライキを決行しています。

Amazonの従業員がストライキを行った経緯については、以下の記事を読むと良く分かります。

Amazonの新型コロナウイルス感染症対策に不満を持つ従業員がストライキを開始 - GIGAZINE

こうした中、Amazonは2020年3月30日に、ニューヨーク市内にある物流倉庫のストライキを率いていたクリスチャン・スモールズ氏を解雇しました。Amazonは解雇の理由について「防疫対策のガイドラインに違反したため」と説明していますが、スモールズ氏は「報復のための解雇」だと主張しています。

さらにAmazonは、同社の環境問題対策を憂慮する有志の従業員が組織したAmazon Employees For Climate Justice(AECJ)を率いていたエミリ－・カニンガム氏とマレン・コスタ氏を4月10日に解雇しました。両名はこの日、Amazonの倉庫労働者の健康被害についての嘆願書を社内で回覧し署名活動を開始しましたが、即日解雇されてしまったとのこと。

このことを知った時の心情についてブレイ氏は、「この時点で、私はぽっきり折れてしまいました。私がヴァイスプレジデントであり続けることは事実上、私が軽蔑する行いに加担し続けることを意味しています」と述懐して、AECJのリーダー2人の解雇が直接のきっかけだったことを明かしました。

その上でブレイ氏は、「内部告発者の解雇は、自由経済の機能でもなければ、マクロ経済の副作用でもありません。それは、企業文化の中に毒気がまん延している証拠です。私はその毒を出す側にも飲む側にもなりたくありません」と述べました。

ブレイ氏が問題視しているのは、単に従業員が解雇されたことだけではありません。ブレイ氏は、解雇された従業員の名前を挙げてから「彼ら全員が有色人種か、女性か、その両方です」と述べて、差別的な解雇が行われたことを指摘。さらに、「結局の所、最大の問題は新型コロナウイルスへの対応についてのあれこれではなく、Amazonが倉庫で働く人々を『代替可能なユニット』として扱っているということです。そして、これはAmazonのみならず21世紀の資本主義の在り方の問題でもあります」と述べて、新型コロナウイルスがより根本的な問題を浮き彫りにしているとの認識を示しました。

一方でブレイ氏は、自身が直接管轄していたAWSについては「AWSは従業員を人道的に扱い、ワークライフバランスを重視し、多様性の向上に努めています。私は純粋に、そのリーダーシップを称賛しています。しかし、倉庫労働者は弱い立場に置かれており、大量失業やアメリカの雇用連動型の雇用保険なども相まって、ますます弱体化させられています。資本主義のせいで、彼らは粗末な扱いを受けているわけです。どんなもっともらしい解決策よりも、彼らの集団としての強さを高めることから始めことが先決です」と述べて、倉庫労働者が専門知識を要する職種よりも厳しい立場に置かれているという構造的な問題を指摘しました。

なお、Amazonはブレイ氏の声明に対するコメントを拒否しているとのことです。