サイエンス

可能な限り炭水化物の摂取を控える「ケトンダイエット」を続けるとなぜインフルエンザのような症状が出るのか?


ケトンダイエット」は、炭水化物を摂取せずにカロリーのほとんどを脂質から得るという食事法です。ケトンダイエットは糖質制限ダイエットの1つとして人気がありますが、吐き気・頭痛・疲労感などのインフルエンザに似た諸症状を示すことが知られています。ケトンダイエット中になぜインフルエンザに似た症状が生じるのか、健康と運動の関係性を研究するポーツマス大学のアンドリュー・スコット氏が解説しています。

Keto diet: here's why some people experience fatigue, nausea, headaches after starting it
https://theconversation.com/keto-diet-heres-why-some-people-experience-fatigue-nausea-headaches-after-starting-it-135911

スコット氏によると、ケトンダイエットは「炭水化物の摂取を減らすと、脂肪などの炭水化物以外の物質をエネルギーに変換するようになる」という1920年頃の研究がもとで、「ケトンダイエット」という名称は脂肪を消化する際には肝臓でケトン体が生成されることに由来しています。ケトンダイエットは考案された当時は摂取する栄養素の比率を「脂肪分90%・タンパク質6%」にするというものでしたが、現在では1日の炭水化物の摂取量を20g未満にすればケトンダイエットとして見なされるとのこと。

近年では糖質制限ダイエットの1種として人気のあるケトンダイエットですが、スコット氏はタスマニア大学などのオーストラリアの研究チームが発表した論文を挙げて、「多くの人がケトンダイエットのさなかに吐き気、便秘、頭痛、疲労感などの諸症状を経験しています」と指摘。これらの諸症状はインフルエンザの症状に似ていることから、「ケトンインフルエンザ」と呼ばれていると解説しました。

ケトンインフルエンザの諸症状は、それぞれ異なる原因から生じているというのがスコット氏の見解です。スコット氏は頭痛については「炭水化物の離脱症状が原因」と説明。炭水化物から生成されるグルコースは脳などの中枢神経系の主要なエネルギー源であるため、炭水化物の供給量が減るとそれらの器官の機能低下が生じ、結果として頭痛が発生すると述べました。

一方、吐き気については、「脂肪の大量摂取が原因」とのこと。脂肪は消化と吸収に長い時間がかかるため、大量摂取すると気分が悪くなることが知られています。


疲労感については、「セロトニンが原因」とスコット氏は言及。ケトンダイエットは炭水化物を控えることによって、体内のインスリンの分泌量が低下します。体内のインスリンレベルが低下すると血中で遊離するトリプトファンと呼ばれるアミノ酸が増加して、脳内でセロトニンが合成されます。スコット氏によると、セロトニン濃度が高まるとセロトニン神経系が刺激されて、疲労感が生じるとのこと。

また、炭水化物は体が活用しやすいエネルギー源であるため、炭水化物の摂取を控えることは体にとってのストレスにつながるとスコット氏は指摘。ストレスがかかると副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌され、その分泌量によっては免疫機能が低下して風邪などの感染症にかかりやすい体質になってしまう可能性があると語りました。


さらに、炭水化物が豊富な食品は、ビタミン・ミネラル・食物繊維を多く含むという傾向があります。日本の厚生労働省は食物繊維について、「成人男性は20g以上、成人女性は18g以上」という推奨摂取量を設けていますが、スコット氏は「ケトンダイエットでは炭水化物を控えるため、この推奨摂取量に届かない可能性があります」とコメント。食物繊維不足によって便秘が生じると語りました。

加えて、ビタミン・ミネラルの不足も問題です。糖質量ゆえにケトンダイエットでは避けることが推奨されているオレンジをスコット氏は挙げて、「オレンジなどのビタミンCを多く含む食品を摂取しなければ、感染症のリスクが高まります」と述べました。

以上のように、スコット氏はケトンダイエットのさまざまな問題点を指摘した上で、「魚や果物、野菜、鶏のささみなどの脂身の少ない肉をバランス良く摂取し、加工食品を食べないようにすることが体重管理や減量に効果的です」「運動は、心肺機能と筋力を向上させ体重管理に役立つというだけでなく、心血管の健康状態を改善して2型糖尿病のリスクを下げるという効果もあります」とコメントしています。

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in サイエンス,   , Posted by darkhorse_log

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