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網膜に直接映像を投影する「仮想網膜ディスプレイ技術」とはどんな技術なのか?


スマートグラス技術「BML500P」や、映画やゲームが楽しめるヘッドホン「Glyph」など、網膜に直接映像を投影する「仮想網膜ディスプレイ(VRD)」という技術を使ったデバイスが近年登場しています。しかし、VRDはまだ一般的ではないので「目を傷つけてしまうのでは?」と心配する人も少なくないはず。ハードウェアなどの最新情報を掲載している技術系ブログHackadayが、「VRDとは一体何なのか?」について分かりやすくまとめています。

The Smallest Large Display Is Projected Straight Onto Your Retina | Hackaday
https://hackaday.com/2020/04/15/the-smallest-large-display-is-projected-straight-onto-your-retina/

VRDについて知るためには、まず人間の目についておさらいする必要があります。目の最も基本的な機能は、水晶体などを使って対象物にピントを合わせることです。そのため、目は毛様体筋と呼ばれる筋肉で水晶体の形を変えつつ、虹彩で目に入る光の量を調節して目の焦点距離を変える機能を持っています。こうして目が捉えた映像の中心的な部分は、網膜で最も多くの視細胞を持つ中心窩(ちゅうしんか)という領域に投影され、網膜の残りの部分に周辺視野が映し出されます。この中心窩に赤・緑・青の3種類のレーザーを走査させるのがVRDの基本的な仕組みです。

by Rhcastilhos And Jmarchn

VRDに近い技術としては、Google GlassやMicrosoftのHoloLensに代表されるようなヘッドマウントディスプレイ(HMD)方式のスマートグラスがあります。これは、網膜に直接映像を映すのではなく、目の前の半透明のディスプレイに映像を投影して、現実の映像と重ね合わせる拡張現実(AR)技術です。

HMD方式のスマートグラスは、スマートフォンなどの画面を注視しなくても情報が得られる点で画期的ですが、ディスプレイが必要なことには変わりないため、どうしてもかさばってしまいます。また、よく晴れた日や真夏などの時期に屋外で使う用途にも適していません。こうした問題点を解決してくれるのが、VRDです。


しかし、目に3種類ものレーザーを照射するとなると、どうしても安全面が気になります。実際に、アメリカのネバダ砂漠で開催される大規模な野外フェス「バーニングマン」では、誰かが持ち出した携行タイプのレーザー発生装置でスタッフが失明してしまうという事故も起きています

こうした懸念に対する答えが、「非常に低出力のレーザーを使用している」ということです。VRDでは網膜に直接光を当てるので明るい太陽光に紛れてしまう心配がなく、必要最小限のレーザー出力で十分な性能を発揮することができます。例えば、電子制御機器メーカーのボッシュが開発している「BML500P」は、15マイクロワット未満という非常に小さい出力で機能します。

BML500Pについては以下の記事で詳しく解説されています。

目に直接メールやナビを映し出す最新のスマートグラス技術「BML500P」のムービーが公開中 - GIGAZINE


安全でかさばらないVRDですが、「買って顔にかけても即座に使用できない」という欠点があります。VRDでは網膜の中心窩の領域に正確に映像を投影させなければならないため、ほんの少し合わないだけで何も見えないようになってしまいます。そのため、これまで登場しているBML500Pなどの製品では、ユーザーに合わせて調節するといったプロセスが必須になります。

また、VRD製品は高価になってしまうという欠点もあります。例えば、AR技術のGoogle Glass Enterprise Edition 2でさえ2020年時点での価格は999ドル(約11万円)、Microsoft HoloLens 2に至っては3500ドル(約39万円)もします。

その上でHackadayは、「一昔前のVRがそうであったように、今後多くの研究と技術開発を経ることで、VRDも手ごろな価格と信頼性を兼ね備えることができるようになるでしょう。VRDには多くの可能性があるので、今後数年の間に何がもたらされるのか考えると楽しみになります」と述べて、VRDの将来性に期待感を示しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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