「外に出ずに孤独を和らげる方法」を心理学者が語る
新型コロナウイルスの感染を拡大させないため、多くの人々が外出を控え、家にこもりがちな生活をしています。ニュージーランドにあるオタゴ大学の心理学教授であるエレイン・リース氏が、外に出ず人に会う機会が少ない状態であっても孤独を和らげる方法として、「物語に登場する架空のキャラクターと友だちになること」を挙げています。
Missing your friends? Rereading Harry Potter might be the next best thing
https://theconversation.com/missing-your-friends-rereading-harry-potter-might-be-the-next-best-thing-136236
人間がフィクションの物語に触れて架空の世界に浸る傾向は、幼少期に模倣遊びやごっこ遊びをし始める頃から始まります。子どもの2人に1人は、自分の頭の中に架空の友だちを作るとされています。特に小学校に入学する前の子どもは、お気に入りのアニメや本などに登場するキャラクターに愛着や友情を感じており、キャラクター側も自分に対して愛着や友情を感じていると信じています。
年をとり、大人に近づくにつれて、子どもたちはアニメやマンガ・絵本・小説などに出てくるキャラクターたちが実際には存在しないことに気づきます。しかし、リース氏は「人々はその事実を知ったとしても、キャラクターに対する友情や愛情を捨てることはできません」と語りました。
架空のキャラクターに対して抱く愛着や友情は、現実の人間関係に抱く感情に近いという調査結果も存在します。人間と架空のキャラクターに対して同じような感情を抱くということは、子どもだけでなく大人も経験することです。リース氏は「必ずしも大人が現実を見失っているサインではありません」と指摘し、大人が架空のキャラクターに対して感情を抱くことを否定していません。
また、リース氏は「架空のキャラクターに対する愛情や友情は、社会性の欠落ではなく、幸福の証とも言えます」とコメント。
加えて、現実の友人関係が人間にとって良いものであるのと同じように、架空の友人関係も人間にとって良いものであることが示されています。例えば、頭の中に架空の友だちがいる子どもは、架空の友だちがいない子どもに比べて創造性や共感性のレベルが高いという調査結果が報告されています。
さらに、新型コロナウイルス対策で不要不急の外出を控えることが求められる現状では、「人々はこれまで以上に架空の友だちを必要としています」とリース氏。散歩のために外に出てみたり、スーパーに行ったりしても、誰かにわざとらしく避けられてしまうことがあります。このような反応は、社会的距離を置くことが推奨されていることを理解していても、誰かに拒絶されているように感じてしまうものです。そんな時に、テレビや本でおなじみのキャラクターと関わることは、「孤独を和らげ、人とのつながりを取り戻すための方法の1つとなります。架空のキャラクターとの友人関係は、気分が落ち込んでいるときでも気分を高める効果があります」とリース氏は語っています。
架空の友だちは孤独の解消だけでなく、現実の人間関係を強化することにもつながります。リース氏は、架空の友だちとの向き合い方として「快適な服を着てくつろぎながら、架空の友だちと遊ぶ時間を作ってみてはいかがでしょうか。家族や同居人がいるなら、一緒に同じ本を読んだり、アニメやドラマを見たり、どのキャラクターが一番好きかを話しあったりして絆を深めましょう」と提案しています。
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