ハードウェア

BOSEの顧客に対する誠実さがわかる「ノイズキャンセリング機能」の不具合報告に対する行動とは?


BOSEはヘッドフォンやスピーカーを開発製造するアメリカの企業です。そのBOSE製ヘッドフォン「QuietComfort 35(QC35)」に対し、ファームウェアの更新後に「ノイズ低減機能」に不具合が発生したとBOSEのコミュニティ上で多数報告され、BOSEのエンジニアチームがその調査にあたる様子が公開されています。

Bose QC 35 Firmware 4.5.2 Noise Cancellation Inves... - Bose Community - 285738
https://community.bose.com/t5/Around-On-Ear-Headphones/Bose-QC-35-Firmware-4-5-2-Noise-Cancellation-Investigation/td-p/285738#anoverview

BOSEは2017年、QC35のファームウェアのバージョン1.2.9にノイズキャンセルの問題があるとフォーラムに報告されているのを発見し、バージョン1.2.10で問題を修正しました。ファームウェア更新後は問題はほとんど報告されなくなりましたが、2年後の2019年に、ノイズ低減機能とはまったく関係のないバージョンアップであったバージョン4.5.2で、再びノイズ低減機能の問題が報告されるようになったとのこと。報告の内容は「ノイズ低減の性能が落ちた」「ノイズ低減の強さを調節できなくなった」といったものでした。


BOSEはエンジニアチームを立ち上げ、ノイズ低減機能に影響を及ぼすような変更をファームウェアに加えていないか確認したところ、そのような変更は見つかりませんでした。また、バージョン4.5.2と旧バージョンのファームウェア間でノイズ低減性能を比較してみましたが、差異は見られなかったとのこと。

BOSEは問題があると報告されたQC35を入手するため、フォーラムのメンバーに直接連絡を取り始めました。その結果、少数ではありますが、実際に問題が起きたとされるQC35を入手することに成功。BOSEは精密検査やファームウェアのバージョンを変えてのA/Bテスト、検査員による音質の評価などの確認を行いましたが、問題の再現やその原因の特定には至らなかったそうです。


問題を解決するため、BOSEは第三者によるテストを実施することに。音響の研究機関であるMichael & Associatesにテストを依頼し、バージョン4.5.2のノイズ低減性能に与える影響を測定してもらいましたが、研究機関の調査でも、バージョン4.5.2へのアップデートによるノイズ低減性能の顕著な劣化は見られませんでした。


自社や研究機関の調査でも問題の原因を特定できなかったので、BOSEはフォーラムに対してアンケートを行い、ノイズ低減に問題を抱えている顧客のうち、自宅への訪問を受け入れてくれる顧客を募りました。その結果、自宅への訪問を受諾してくれた5人の顧客に対し、顧客宅で2時間の調査を行うことができたとのこと。

顧客訪問では、顧客のQC35の使用方法についてのヒアリングや、BOSEが持ち込んだバージョン4.1.3とバージョン4.5.2の2台のQC35と、顧客が所有するバージョン4.5.2のQC35の合計3台のヘッドフォンによるA/Bテストなどが行われました。また、BOSEは顧客訪問終了時に顧客のQC35を新品のQC35と交換し、顧客が所有していたQC35を持ち帰って詳細なハードウェア分析を行ったとのこと。


一連の顧客訪問によって、顧客のファームウェアアップデートの方法や、Bluetoothのペアリング方法、意図しないノイズ低減機能のモード切替などは行われていないことがわかりました。A/Bテストでも、ヘッドフォン間で音質の違いは認められなかったそうです。

顧客訪問後、回収した5台のQC35に加えて、さらに別の顧客から5台のQC35を電話を通して回収。合計10台のQC35に対し、機械的なテストや検査員による評価など、さまざまな調査を行った結果、回収した10台のQC35のうち、2台のQC35のノイズ低減機能のパフォーマンスが通常のQC35よりも低いことが判明。


グラフの水色で示されたQC35を調べると、イヤーパッドが適切に装着されていないことがわかりました。イヤーパッドをきちんと装着すると、ノイズ低減のパフォーマンスは通常のQC35と同じ水準になったとのこと。


また、グラフの灰色で示されたQC35には機械的な損傷が見られたほか、サードパーティー製のイヤーパッドが使用されていたことが判明。サードパーティー製のイヤーパッドは純正のものに比べて密閉性が劣り、ノイズの低減に悪影響を及ぼすことがあります。最終的に、BOSEはノイズ低減機能のパフォーマンス低下を、イヤーパッドの劣化やサードパーティー製品の使用、もしくは機械的な損傷によるものだと判断しました。


バージョン4.5.2に起因するノイズ低減機能の性能低下の原因を特定することはできませんでしたが、BOSEは今回の調査を通して、自身が認知していなかったヘッドフォンの利用ケースや、ファームウェアのアップデート方法を知ることができたとのこと。これらはBOSEの調査プロセスに新しい項目として組み込まれているそうです。

また、BOSEはムービーでヘッドフォンのメンテナンス方法や正しいイヤーパッドの取り付け方法、純正のイヤーパッドの使用を啓蒙することに。

Bose QuietComfort 35 II – Troubleshooting Noise Cancellation Issues - YouTube


バージョン4.5.2に問題は確認されていませんが、Bose Updaterを通してファームウェアを期間限定でダウングレードできるオプションも提供しています。

BOSEは「私たちは顧客からのフィードバックを真剣に受け止めており、お手元のQC35が私たちが作れる最高の製品であるようひたむきに取り組んでいきます」とコメントしています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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