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2600万円以上の賞金が囲碁AI「AlphaGo」の開発者に贈られる


2020年4月1日に、コンピュータ科学分野の国際学会であるAssociation for Computing Machinery(ACM)が、コンピューティング技術開発に多大な貢献をした個人に贈られる賞である「ACM Prize in Computing」の2019年度受賞者を発表しました。受賞者に選ばれたのは、人工知能AlphaGoを開発したことで知られるGoogle傘下の人工知能企業DeepMindの技術者デビッド・シルバー氏です。

ACM Prize in Computing Awarded to AlphaGo Developer
https://www.acm.org/media-center/2020/april/acm-prize-2019

ACM Awarded Their Computing Prize To An AlphaGo Developer
https://analyticsindiamag.com/acm-awarded-their-computing-prize-to-an-alphago-developer/

チェスや将棋のチャンピオンが次々とAIに倒される中、囲碁でプロ棋士を破る人工知能(AI)はなかなか現れなかったことから、囲碁は人間がAIに勝てるテーブルゲームの最後の(とりで)とされてきました。しかし、2016年に行われた対局で「韓国棋界の魔王」と呼ばれ世界最強の棋士としても名高かったイ・セドル氏がAlphaGoに4対1で敗北。これを機に、イ・セドル氏は後にプロ棋士から引退することを決意します。

AlphaGoがイ・セドル氏に勝利した時の様子は以下の記事を読むと一発で分かります。

「人工知能vs世界最強の棋士」囲碁対局は人工知能のAlphaGoが勝利、5番勝負の初戦を制する - GIGAZINE


そんなAlphaGoの勝利を支えたのが、DeepMindの主任研究者であるシルバー氏です。シルバー氏が率いる開発チームは、伝統的な木構造検索ディープラーニング強化学習、大規模なコンピューティングなどを巧みに組み合わせて、AlphaGoのアルゴリズムを作り上げました。こうして生み出されたAlphaGoはAI研究の重要な成果として認識されており、科学雑誌New Scientistが特集した「過去10年間の発見のトップ10」では、AlphaGoがヒッグス粒子の発見やゲノム編集技術CRISPRの開発重力波の観測に次ぐ第4位にランクインしています。

シルバー氏のチームはその後、AlphaGoを超える囲碁AI「AlphaGo Zero」や、さらにその上を行く「AlphaZero」を開発。2019年には、ビデオゲームでプロゲーマー相手に圧勝した「AlphaStar」も生み出しています。

AlphaGoの後継機であるAlphaStarとプロゲーマーとの勝負については、以下の記事で詳しく解説されています。

DeepMindのAI「AlphaStar」が世界トッププレイヤーを相手に「スタークラフト2」で10-1の大勝 - GIGAZINE


こうした功績をたたえて、ACMはシルバー氏に対するACM Prize in Computingの授与を決定。これは、「コンピューティングにおける早期~中期の革新的貢献」を果たした人物を表彰するもので、受賞者にはインドの大手IT企業Infosysから25万ドル(約2685万円)の賞金が贈呈されるとのことです。

ACMのCherri M. Pancake会長は「シルバー氏ほどAI分野に興奮をもたらした研究者はいません。人間と機械との競争は長年にわたりAIの宿願だったので、AlphaGoが囲碁世界チャンピンのイ・セドル氏を破った2016年3月の対局は、テレビ中継を介して全世界の人々が見守りました。しかし、それもシルバー氏がもたらしたインパクトの始まりに過ぎず、同氏の深層強化学習の知見はその後、イギリスの電力網の効率改善、Googleのデータセンターにおける電力消費の削減、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙探査機の軌道計画策定など多くの分野で役立てられています」と述べて、シルバー氏の研究を賞賛しました。

また、Infosysの最高執行責任者を務めるPravin Rao氏は「我々は、シルバー氏が深層強化学習の基礎を固め、最先端のAI技術を飛躍的に発展させた功績をたたえます。コンピューターが複雑なルールのテーブルゲームを制したことは、一般の人々の想像力を刺激し、若い研究者を機械学習などの分野に引きつけました。とりわけ、シルバー氏とその同僚が開発した枠組みは、AIのあらゆる領域と今後何年にもわたるビジネスや産業での実用的な業務に資する点で重要なものです。従って、当社はACM Prizeing for Computingを経済的に支援し、ACMの一員として若く優れたコンピューティングの専門家を表彰できることを誇りに思っています」とコメントしました。

シルバー氏の受賞が決まったACM Prize in Computingは、2020年6月にサンフランシスコで開催されるACMの年次授賞式で正式に授与される予定だとのことです。

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in ソフトウェア, Posted by log1l_ks

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