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Facebookの思いもよらなかった知人が見つかる「知り合いかも」機能を中核とする運営戦略とは?


グーグル ネット覇者の真実」「マッキントッシュ物語―僕らを変えたコンピュータ」などの巨大企業の軌跡に関する著作でも知られる有名ジャーナリストのスティーブン・レヴィ氏が、Facebookの舞台裏について記した新作「Facebook: The Inside Story」の一部を抜粋するという形で、「知り合いかも」機能を中核とするFacebookの運営戦略について解説しています。

The Untold History of Facebook’s Most Controversial Growth Tool
https://marker.medium.com/the-untold-history-of-facebooks-most-controversial-growth-tool-2ea3bfeaaa66

レヴィ氏の解説は、「知り合いかも」機能の開発に大きく貢献した人物であるチャマス・パリハピティヤ氏の来歴からスタートします。パリハピティヤ氏はアメリカの大手インターネットプロバイダーのAOLのヴァイス・プレジデントに最年少で上り詰めた後、取引先の1つだったFacebookに入社。入社後すぐに製品のマーケティングと運用部門で重要な役割を任されることとなりました。

パリハピティヤ氏の入社当時、Facebookのユーザー数は9000万人ほどで頭打ちになっていました。このような状況下でパリハピティヤ氏が打ち出したのは、「月間アクティブユーザー(MAU)」こそが重要な指標だという戦略。当時インターネット業界ではデイリーアクセス数や総アカウント数こそが重要な指標であるという基準が一般的でした。しかし、ユーザーが利用を継続するかどうかを判定する際にはMAUこそが最も優れた指標であることをパリハピティヤ氏は発見し、Facebook上のあらゆるサービスをMAUに照らし合わせ、「MAUが増加しないならばテコ入れする」という方針を打ち出しました。


そんなパリハピティヤ氏は、Facebookの生え抜き社員Naomi Gleit氏やJavier Olivan氏、スペイン出身のAlex Schultz氏、イギリス出身のマーケティング立案者Danny Ferrante氏、Firefoxを共同開発したことで知られるBlake Ross氏など、社外からも含めて人材を登用し、Facebook社内において「Growth Circle」という独自の人脈網を形成しました。パリハピティヤ氏に取り立てられた人材の中でも、Gleit氏・Schultz氏・Olivan氏の3人は後にFacebookの幹部になっています。

Growth Circleチームの業績の1つが、Facebookにおける検索エンジン最適化(SEO)です。2007年にFacebookは各ユーザーのプロフィールページがGoogle検索に表示されるようにしましたが、1年後の2008年でもGoogle検索の上位にFacebookのユーザープロフィールページが表示されることはありませんでした。このような状況の中、Schultz氏とGleit氏は各ユーザーのプロフィールページを相互にリンクすることによってGoogle検索の上位に表示させるという手法を編み出し、Facebookへの流入数を増加させました。


数々の輝かしいGrowth Circleチームの業績の中でも、レヴィ氏が最高の業績として強調するのが、「知り合いかも」機能。この機能はFacebookユーザーの中から「知り合いかもしれない人」を自動で表示してくれるというシステムで、Facebookではなくビジネス特化型SNSのLinkedInが発明しました。Growth Circleチームは友人を7人以上登録していないユーザーはサービスの使用をやめる確率が高いという調査結果に基づいて、「知り合いかも」機能をFacebookに導入したとのこと。

友人を自動で探してくれる「知り合いかも」機能は多くのユーザーに利便性を提供してくれますが、この機能のシステムを疑問視する声も上がっていました。Gizmodoのカシミール・ヒル氏は、会ったこともない大叔母をFacebookの「知り合いかも」機能で発見したという自分自身の経験や、長年連絡がつかなかった自分の父親の浮気相手を発見してしまったというユーザーの事例を挙げて、「知り合いかも」機能がユーザーの不利益になり得るケースを指摘しました。

「知り合いかも」機能に対する批判の多くは、「どんな原理で動いているかをFacebookが明かしていない」というものです。Facebookは以前からインターネット上から収集した情報を利用して、「シャドープロファイル」を作成し、「知り合いかも」機能に利用しているという批判が存在していましたが、ザッカーバーグCEOは否定していました。しかしレヴィ氏によると、パリハピティヤ氏はGrowth Circleチームが「知り合いかも」機能を導入する際に、シャドープロファイルを用いていたと認めたとのこと。「シャドープロファイル」がどのような手口なのかは、以下の記事を読むと理解できます。

Facebookを使っていなくても勝手に作成されている「シャドープロファイル」とは - GIGAZINE


また、「知り合いかも」機能は「友人の友人」という概念を駆使しているともレヴィ氏は説明しました。平均的なユーザーには、約4万人の「友人の友人」がいるそうです。「知り合いかも」機能は、その友人の友人の中から共通の友人の数や仲の良さなどを算出して機械学習で分析することによって、新たな友人を見つけてきてくれるというわけです。

「知り合いかも」機能は2010年頃にはFacebookの友人登録の大部分を占めるようになり、Facebookのユーザー数を押し上げました。しかしレヴィ氏は、「知り合いかも」機能の性能から、Facebookがユーザーのメールやカレンダーなどをチェックしているのはほぼ確実だと述べ、「知り合いかも」機能がユーザーのプライバシーを侵害していると主張しています。


また、「知り合いかも」機能は、あまり親しくない人までも表示されてしまうという問題もあります。ザッカーバーグCEOは親しくない人を友人に登録するとユーザーエクスペリエンスが多少低下するという可能性を認めた上で、友人を増やすことがコミュニティ全体の利益になり、友人に登録した後から仲良くなることもあると主張しているとのこと。ザッカーバーグCEOは、ダンバー数によって提唱された「人間の脳が関係を維持できる限度数」をFacebookが塗り替えるという予測を示したそうです。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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