7年間も動かず12年に1回しか交尾しない動物とは?
by Javier Ábalos
ドラゴンの幼体であるとする民間伝承から「ベビードラゴン」との呼び名もある体長20~30cmの白いトカゲ「ホライモリ」は、鋭い聴覚や嗅覚と、退化した目を持ち、最長で100年生きるとされるクロアチアの天然記念物です。そんなホライモリを長い歳月をかけて研究した結果から、7年以上にわたり全く動かないという驚きの生態が明らかになりました。
Extreme site fidelity of the olm (Proteus anguinus) revealed by a long‐term capture–mark–recapture study - Balázs - - Journal of Zoology - Wiley Online Library
https://zslpublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jzo.12760
Rare European cave salamander stayed in the same spot for seven years | The Independent
https://www.independent.co.uk/news/science/salamander-not-move-lazy-olm-proteus-european-cave-lifespan-a9314951.html
A Cave-Dwelling Salamander Didn't Move for Seven Years | Smart News | Smithsonian Magazine
https://www.smithsonianmag.com/smart-news/cave-dwelling-salamander-didnt-move-7-years-180974233/
ホライモリとは、白いヘビのような外観をした両生類で、ヨーロッパに生息する唯一の脊椎動物の洞穴生物です。暗い洞窟に適応しているため色素がほとんどなく、目も皮膚に覆われています。その代わり視覚以外の感覚は鋭敏で、他の両生類より優れた嗅覚で水中の有機物を感知できるほか、水中の音の方向を正確に特定できる聴覚や、微弱な地磁気を感知できる「電気受容器」という器官も持っています。
そんなホライモリの極端な生活史に光を当てたのは、ハンガリーにあるエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学者Gergely Balázs氏らの研究グループです。研究グループは、2010年から2018年にかけてボスニア・ヘルツェゴビナのトレビニェにある洞窟に住むホライモリの成体19匹の行動を調査。各個体にタグをつけて定期的に観察する「標識再捕獲法」という調査手法を用いて、各ホライモリたちがどれだけ動いたかを測定しました。
合計37回の観察の結果、合計で20m以上移動した個体は3匹のみで、ほとんどは10mも移動しなかったとのこと。さらに、最も動かなかった個体は2569日間にわたり同じ場所で観察されたとのことです。Balázs氏はホライモリについて「彼らは何もせず、ただそこにたたずんでいます」と話しました。
ホライモリがこれほど動かないのは、洞窟という特殊な環境と、飢餓に強いという性質のため。捕食者がいないので逃げたり隠れたりする必要がなく、最大で10年の間何も食べずに生きることができるため、活発に動く必要に迫られるのは交尾の時ぐらいだとのこと。その交尾も、平均して12.5年間に1回ほどなので、7年も動かないことが起こりうるというわけです。
イギリスの動物学者デイビッド・アッテンボロー氏は、The Guardianの取材に対し「ホライモリは、その長寿の秘密でもある非常にスローペースな生活を送っています。私たちも、その生き方に学ぶところがあるでしょう」と話しました。
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