「.org」ドメイン売却問題でついに司法が動く
by WilliamCho
非営利団体や学校向けの「.org」ドメインの管理団体が投資会社に売却された問題で、カリフォルニア州司法長官がドメインデータベースの管理団体Internet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)に対し、法的な効力のある質問状を送っていたことが分かりました。これにより、2020年2月17日に予定されていた「.org」ドメインの売却交渉の期限が、2020年4月20日にずれ込むことが確実視されています。
ICANN Receives Letter from California Attorney General Regarding .ORG Change of Control - ICANN
https://www.icann.org/news/announcement-2020-01-30-en
Breaking: California Attorney General delays .org sale - Domain Name Wire | Domain Name News
https://domainnamewire.com/2020/01/31/breaking-california-attorney-general-delays-org-sale/
ICANN't approve the sale of .org to private equity – because California's Attorney General has... concerns • The Register
https://www.theregister.co.uk/2020/01/31/icann_dot_org_sale/
Sale of .org domain registry delayed by California attorney general
https://mashable.com/article/california-attorney-general-dot-org-sale/
2019年11月に「.org」を管理する非営利団体のPublic Interest Registry(PIR)が、投資会社Ethos Capitalに売却された問題をめぐっては、「.org」ドメインの登録料がつり上げられるとの懸念や、PIRと「.org」の価値に比べて売却額が異様なほどに安いという疑惑から、有志や著名なインターネット企業らによる大々的な反対活動が展開されています。
「.org」ドメインの管理団体が投資会社に売却されたことへの反対署名の活動がスタート - GIGAZINE
こうした批判を受けてICANNは、関係者宛に売却取引の内容について公開するよう求めるとともに、公開された資料を下にした審査のため、売却取引を30日間保留するとの対応措置を実施。PIRもこれに(PDFファイル)同意したため、売却取引は2020年2月17日にまでずれ込んでいました。
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by ivanacoi
そんな中、ICANNが2020年1月30日に公開した(PDFファイル)PIR宛の書簡により、カリフォルニア州司法長官府(CA-AGO)がICANNに対し、合計35項目にのぼる資料請求と質問を含んだ質問状を送達していたことが分かりました。
質問状を受け取ったICANNの最高法務責任者ジョン・ジェフリー弁護士は、PIR宛の書簡の中で「CA-AGOはこの質問状について、カリフォルニア州政府法典第12589条の規定により、同12588条で定められている出廷命令の召喚状と同等の書面だとしています」と述べて、事態を重く受け止めるべきだとの見方を示しました。ICANNは同時に、前述の売却取引に関する審査期限を2020年4月20日までに変更することを発表しており、これにより「.org」ドメインの売却取引は事実上、2カ月以上延期されることとなりました。
カリフォルニア州司法長官エグゼビア・ベセラ氏の名前で発行された質問状の中で、CA-AGOはICANNに対し膨大な資料の提出を求めており、請求文書の一覧には「ICANNとPIRならびにInternet Society(ISOC)が取り交わした全ての契約書」「Ethos Capitalを含む関係各所とやり取りしたメールを含む全ての文書」「取引の決定に関与した関係者ら全員の氏名と住所」などが事細かに指定されています。
質問状には他にも、「ドメイン登録料の決定方法」や、「PIR売却額の算定根拠」について説明を求める調査事項も列記されているほか、「事態の緊急性に鑑み、本状を受領してから15暦日以内に回答するように」との記載もあり、今回の売却騒動に関する疑惑について本格的な調査に乗り出す司法当局の姿勢が鮮明に表れた内容となっています。
CA-AGOの要請に対しICANN側は、「CA-AGOはカリフォルニア州の慈善団体を監督する責任を有しており、ICANNはカリフォルニア州の公益法人なので、ICANNはCA-AGOの規制対象となります」と認め、全面的に調査協力する姿勢を打ち出しました。一方で、「PIRはペンシルベニア州の非営利法人であり、売却取引の一環として、PIRはペンシルベニア州司法長官に、非営利団体から営利団体に変更することを申し入れています。この点を考慮し、今回のCA-AGOの調査には相当の注意を払います」とも述べて、PIRの営利団体化が進行中であることを認めました。
また、PIRの広報担当者はイギリスのニュースサイトThe Registerの取材に対し「我々はICANNからの書簡を受領し、精査しています。質問状に対しては、ICANNと協力して対処していきます」と回答しました。ただし、組織の営利団体化の遅れについては認めなかったとのことです。
CA-AGOの措置に対し、ドメイン関連ニュース専門サイトDomain Name Wireは「これはおそらく、『.org』ドメインをたった11億3500万ドル(約1231億円)で投資会社に売ろうというISOCの試みの、最大の失点です。カリフォルニア州司法長官は、ICANNに対する直接的な行政監督権限を主張するかもしれないし、調査の結果次第ではICANNに対して売却を断念させる『合理的な理由』を与えるかもしれません」と述べて歓迎しました。
一方、ニュースメディアのMashableは「売却取引が停止されるかは不透明です。全ては、カリフォルニア州司法長官が調査で何を見いだすかにかかっています」と述べて、状況は予断を許さないとの見方を示しました。
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