「.org」ドメイン売却問題についてFirefox開発元のMozillaが公開質問状を提出
By Wavebreakmedia
非営利団体や学校などによく使用されている「.org」ドメインが売却されて新興投資企業のEthos Capitalのものになろうとしている一件について、売却を反対する署名活動が行われるなど多数の非難が巻き起こってきましたが、「売却額が安すぎる」ことでも注目が集まっています。そんな「.org」ドメイン売却問題に対して、Mozillaが公開質問状を提出しました。
Questions About .org - The Mozilla Blog
https://blog.mozilla.org/blog/2019/12/03/questions-about-org/
Did ISOC leave $1 billion on the table? – Lance Wiggs
https://lancewiggs.com/2019/12/01/did-isoc-leave-1-billion-on-the-table/
2019年11月、Internet Society(ISOC)がEthos Capitalに「.org」ドメインを管理する非営利団体Public Interest Registry(PIR)を売却しました。この売却に対して、Internet Society(ISOC)がとEthos Capitalは共同で「keypointsabout.org」というウェブサイトを立ち上げて、平均で年間価格を10%引き上げることや、民主的な「評議会」の発足、利益だけではなく社会的な貢献も重視することなどの主張を行いました。
「keypointsabout.org」の主張に対し、Firefoxを開発・提供しているMozillaは公開質問状を提出しました。その内容は、以下のようなものです。
1:Ethos Capital管理下におけるPIRは、「.org」コミュニティの利益を保護するために十分でしょうか?
2:発足が予定されている評議会はどのレベルの権限や独立性を有していますか?
3:「価格上昇に関する約束が守られる」という保証は存在しますか?
4:政府からの要求に対して「.org」利用者の言論の自由やその他の権利を保護するため、どのようなメカニズムを導入する予定でしょうか?
5:主張の通り、PIRが「B corp」として認定を受けるのはいつですか?B corpとして認証されない場合、Ethos CapitalとPIRに影響がありますか?
6:「.org」が非営利団体の本拠地としての独自性を保証するための措置はありますか?
7:PIRの売却に際してISOCは複数の入札を受けていましたか?「Ethos Capitalからの入札しかなかった」かつ「今回の売却が中止になる」場合、他の入札を検討する予定はありますか?
8:Ethos Capitalはどのくらいの期間PIRを保有する予定ですか?仮に再度PIRを売却する場合、PIRに関する公約が維持される見込みですか?
9:「.org」が公共の利益にかなう形で維持されるという、ドメインデータベースを管理するInternet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)とPIRの間で交わされた合意について変更はありますか?
今回の買収を「本当にひどい取引」だと評した、ニュージーランドの投資会社Punakaiki Fundの経営者Lance Wiggs氏も、利害関係者に対して今回の取引が最良だったことを示すために、「入札競争が存在したのか?」「投資銀行などからどのような助言を受け取ったのか?」ということについて公表するようにISOCに促しています。
Wiggsは今回の売却が「ひどい」と評した原因について、「売却価格が安すぎる」ことが大きな原因であると述べています。売却価格に関する専門家の指摘は以下の記事にまとめています。
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by Maklay62
販売価格が「安すぎる」といわれる原因は、「.org」ドメインの登録料にあります。ISOC管轄下の「.org」ドメインの年間登録料は10ドル(約1100円)でした。「.org」ドメインには約1050万件の登録があるため、現状の価格でも年間で1億500万ドル(約110億円)の登録料を得ており、年次報告書によると2018年にPIRが得た粗利は6000万ドル(約65億円)となっています。
ドメインを変更するコストは高く付くため、Ethos Capitalが一方的に登録料を引き上げたとしても、「.org」ドメインの利用者は別のドメインに移行することはないと予想されています。Ethos Capitalは実際に登録料を引き上げると予想されており、そういった判断を総合すると、「11億3500万ドル(約1250億円)の販売価格は安すぎで、適正価格は40億~60億ドル(4300億~6500億円)」と専門家が主張しているわけです。
また、「ISOCはインターネットコミュニティの信認により、『.org』ドメインを管理する権限を与えられているだけの組織で、売却のための権限を持たない」という指摘もされています。
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