メモ

「.com」ドメイン登録手数料が今後10年で最大70%も値上がりする可能性


ドメイン界隈では、2019年半ばから「.org」ドメインを巡って、管理団体が投資会社に異様なほどの安さで売却されたり、大反対を押し切ってドメイン登録料の上限が撤廃されたりと問題が続発し、カリフォルニア州の司法長官が乗り出す事態となっています。

この裏で、「.com」ドメインの登録手数料についても、1年に7%の値上げを認める合意が管理団体「ICANN」とドメインレジストリ(管理事業者)「ベリサイン」との間で交わされていたことが明らかになりました。これに対して、ドメインレジストラ(登録事業者)「Namecheap」のCEOなどから疑問の声が巻き起こっています。

ICANN and Verisign Announce Proposed Amendment to .COM Registry Agreement - ICANN
https://www.icann.org/news/announcement-2-2020-01-03-en


ICANN Allows .COM Price Increases, Gets More Money - Namecheap Blog
https://www.namecheap.com/blog/icann-allows-com-price-increases-gets-more-money/

Registrars raise alarm over proposal for big .com fee hikes | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2020/02/registrars-raise-alarm-over-proposal-for-big-com-fee-hikes/

Namecheapのリチャード・カーケンドールCEOは4つの点から、この合意に反対の姿勢を見せています。

1:値上げ
ユーザーが新しい.comドメインを取得したいと考えたとき、ベリサインへのドメイン登録はユーザー自身ではなく登録事業者であるNamecheapなどが代行します。このとき、Namecheapはベリサインに手数料を支払っており、ユーザーに対しては手数料を上乗せした価格を請求することになります。登録事業者は複数存在するので、「どれだけ上乗せを少なくできるか」という競争が行われ、利益が薄くなる一方、.comドメインを使うにあたってベリサインが競合する管理事業者は存在しません。

そのため、ベリサインは2020年時点で7.85ドル(約860円)の登録料を、1年ごとに7%上げていくと考えられます。さらに、2024年・2025年の「値上げ凍結」を挟んで、2026年から2029年にかけても、年7%の値上げが可能です。「2年の値上げ凍結・4年連続の値上げ」というサイクルを続けることができるので、10年以内に.comドメインの登録手数料が70%も値上がりする可能性が存在しているとのこと。

2:ICANNに支払われる謎の2000万ドル(約22億円)
ベリサインは今回の合意により年間400万ドル(約4億4000万円)を5年間、つまり合計2000万ドル(約22億円)をICANNに支払うことになっています。しかし、ベリサインの支払い名目である「ドメイン名システムのセキュリティと安定性に関するICANNの主導権をサポートする」というのが一体どういうことなのか、そしてICANNは受け取ったお金をどう使うのか、お金が適切に使われることを誰が保証するのかは説明がなされていません。


3:ベリサイン自身がドメイン登録事業者になれる
ICANNはもともと、トップレベルドメイン(TLD)運営者はドメイン登録事業はできないというルールを定めていました。ルールは2012年に改訂され、gTLD運営者については登録事業が許可されましたが、ベリサインには適用されませんでした。しかし、今回の合意により、ベリサインは.comドメインそのものを除けば、独自でドメイン登録事業を行うことが認められました。

これは、.comドメインと.netドメインの管理者であり80%のドメインの価格設定に関与するベリサインが、すべてのドメイン登録事業者と競合する存在になったことを意味しています。競合の増加により、消費者からすれば一時的にドメイン登録料の低下という恩恵を受けられる可能性はありますが、支配的な登録事業者の誕生によって、最終的には登録料の大幅値上げが行われる恐れがあります。

4:ICANNが過去に寄せられた意見を無視している
2019年6月末にICANNは.orgドメインの管理事業者・PIRと契約の更新を行い、ドメイン登録料の上限を撤廃しました。このとき、新たな契約案に対しては3500件以上のパブリックコメントが寄せられ、うち、上限撤廃を支持するコメントはベリサイン関係者による2件を含めても6件しかなかったにも関わらず、ICANNのオンブズマンは多数の反対コメントを「スパム」として無視しました。

カーケンドール氏は、今回の合意を、ICANNとベリサインのみで決定した、今後数年にわたりインターネットに影響を及ぼす「有害な変更」と断じ、ICANNへのパブリックコメント投稿などを呼びかけています。パブリックコメントの締め切りは2020年2月14日です。

Public Comment - ICANN
https://www.icann.org/public-comments/com-amendment-3-2020-01-03-en/mail_form

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in メモ, Posted by logc_nt

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