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Mozillaのメーラー「Thunderbird」プロジェクトが完全子会社化、Mozilla Corporationから切り離される

by Roland Tanglao

Thunderbirdは、Mozilla Foundationが中心となって開発が行われるオープンソースのメーラーで、Windows版・macOS版・Linux版がリリースされています。およそ17年という歴史の中で二転三転してきたThunderbirdの開発・運営が「Mozilla Foundationの完全子会社に移行した」と公式ブログで発表されました。

Thunderbird’s New Home | The Mozilla Thunderbird Blog
https://blog.thunderbird.net/2020/01/thunderbirds-new-home/


Thunderbirdの公式ブログによれば、2020年1月28日をもってThunderbirdプロジェクトはMozilla Foundationの完全子会社である「MZLA Technologies Corporation」によって運営されることが発表されました。Thunderbirdプロジェクトのメンバーであるフィリップ・ケウィシュ氏は一時期はThunderbirdの行く末も案じられていたものの、ユーザーからの寄付によってプロジェクトの運営は続き、子会社への移行が可能になったと述べています。

by Brian King

Thunderbirdは17年という長い歴史をもつ老舗メーラーですが、その開発と運営はかなりの紆余曲折(うよきょくせつ)を経ています。

Mozilla Foundationによって開発されるThunderbirdはもともと「Minotaur(ミノタウア)」という名前で、Firefoxの前身である「Phoenix(フェニックス)」と共に2003年にリリースされました。その後、Phoenixは「Firebird」に、Minotaurは「Thunderbird」に改名。なお、Firebirdは商標の関係でさらなる変更を余儀なくされ、「Firefox」に変わったという経緯があります。


2007年7月に、Mozilla Foundationの共同創設者であり、完全子会社Mozilla CorporationのCEOであるミッチェル・ベーカー氏が「私たちはThunderbirdのために新しい独立した組織を見つけてあげるべきだという結論に至りました」と語り、Thunderbirdの開発部門をMozilla Corporationから切り離す考えをブログで明らかにしました。そして、2008年2月に、Thunderbirdの開発を行うための子会社「Mozilla Messaging」の設立が発表されました。

しかし、Mozilla Foundationは、子会社として分離していたMozilla Messagingを再吸収し、実験プロジェクトを行う社内組織「Mozilla Labs」に統合する旨を2011年4月に発表しました。なぜMozilla Foundationが切り離した子会社を再吸収したかについて、技術系メディアのArs Technicaは「Mozilla MessagingはMozilla Foundationから分離して運営を続けていけるほどの収入源を確保できなかったため」とみており、「Thunderbirdには素晴らしいアイデアが多く導入されているのに、Mozilla Messagingにはそれを継続できるリソースがないようです」と述べています。

なお、Mozilla FoundationによるThunderbirdの開発は2012年に終了。Mozilla FoundationはThunderbirdの安定性を優先して不具合の修正のみを行い、新機能の開発・導入はコミュニティによって行っていく方針がベーカーCEOのブログで発表されました。ベーカーCEOは、めまぐるしく更新されるウェブ標準に対応するために大きなアップデートを頻繁に重ねるFirefoxと異なり、目新しい機能や大きな更新を必要とされにくいThunderbirdの優先度は低くなっていったと語りました。

by Roland Tanglao

しかしその後、2014年にMozilla Labsがひっそりと解散したと、Mozilla Labsの元メンバーであるイアン・ビッキング氏が自身のブログで明らかにしました。Mozilla Labsのメンバーの多くはMozilla Foundationに異動し、一部は会社を去ったりGoogleに引き抜かれたりしたそうです。ビッキング氏はThunderbirdの運営がどうなったのかについて明らかにしていませんが、ベーカーCEOが2015年に「Thunderbirdの運営をMozilla Corporationから切り離したい」という考えを社内メモに残したことが報じられており、Mozilla Corporationに委ねられた模様。

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2017年5月にThunderbirdの運営は「将来的にMozilla Corpolationから切り離される方針が正式に決定した」と公式ブログで発表。Thunderbirdの運営において法的・財務的な責任はMozilla Foundationにあるものの、Firefoxなどの開発を行うMozilla Corporationからは再び分離され、別組織で運営が行われていくことを明らかにしました。そして、ついにMZLA Technologies Corporationとして完全子会社が2020年1月に運営を開始したというわけです。

Thunderbird’s Future Home | The Mozilla Thunderbird Blog
https://blog.thunderbird.net/2017/05/thunderbirds-future-home/

ケウィシュ氏は「Thunderbirdの焦点は変わりません。私たちは、オープンスタンダード、ユーザーのプライバシー、生産的なコミュニケーションに焦点を当てた、素晴らしいオープンソース技術の開発に引き続き取り組んでいます」と述べ、運営体制が変わってもプロジェクトは変わらないことを強調しました。

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in ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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