Mozillaが無料メールソフト・Thunderbirdを切り離そうと四苦八苦していることが判明

「Mozilla Firefox」や「Mozilla Thunderbird」など、オープンソースのフリーソフトウェアを開発するMozillaプロジェクトを支援するために設立されたのが「Mozilla Foundation」です。このMozilla Foundationで理事長を務めるミッチェル・ベーカー氏は、全社員向けのメモを公開しているGoogleグループ内で、無料で使えるメールクライアントのThunderbirdを「Mozillaから分離させたい」と考えていることを明かしました。

Thunderbird, the future, mozilla-central and comm-central - Google グループ
https://groups.google.com/forum/#!topic/mozilla.governance/kAyVlhfEcXg

Mozilla Wants To Split Off Its Thunderbird Email/Chat Client, Says Mitchell Baker Memo | TechCrunch
http://techcrunch.com/2015/11/30/thunderbird-flies-away-from-mozilla/

「Thunderbird」といえば、チャット機能やニュースクライアントとしても使えるメールクライアントです。Mozillaが開発を始めたのは2004年でしたが、有効なアップデートは2012年の段階でストップしたままになっています。そんな中、Mozillaのベーカー理事長は「私は、ThunderbirdをMozillaの開発システムから切り離し、場合によってはMozillaの技術からも分離させた方がよりメールクライアントとして成長させることができると考えています」と、全社員向けに公開しているメモの中で自身の見解を明かしています。これについてアメリカのニュースメディアTechCrunchがMozillaと直接連絡を取ったところ、このメモはベーカー氏の書いたものであることの確認が取れたそうです。

また、ベーカー理事長は「現在のThunderbirdの開発環境は安定していないため、我々は積極的に『FirefoxとThunderbirdの統合関係のない未来』に向けての移行を積極的に考えるべき」と述べ、これは決定事項ではないものの、Mozillaは積極的にThunderbirdをオープンソースのプロジェクトとして切り離す、もしくはこれの開発を担ってくれるビジネスパートナーを探すべき、とコメントしています。

By MoneyBlogNewz

現在のところ明らかになっているのは、Mozillaが自身の開発ソースをFirefoxに集中させることで、同じウェブブラウザとして市場シェアを争うGoogle Chromeなどに対抗しようとしている、ということだけです。

Mozillaは2012年に開発をボランティアのコミュニティに委ねて以来、Thunderbirdのセキュリティとメンテナンス面における拡張サポートだけを担当しています。これについてベーカー理事長は「納税のようなもの」とコメントしており、Firefoxを開発するエンジニアにとって目の上のたんこぶのようになってしまっているとしています。また、「Thunderbirdのサポートに携わるエンジニアは、Thunderbirdの保守を行いながら、変化していくFirefoxに適応していく必要があります。そして、Firefoxやその他の関連プロジェクトに携わるエンジニアにも、どうしてもThunderbirdをサポートしなければいけないということがあります。現状では、双方のプロジェクトにおいて自身のタスクに打ち込めるような環境になっていません」と、書き連ねています。

By Mozilla in Europe

今では少なくなったメールクライアントですが、Thunderbirdはリリース時には10日で100万ダウンロードを突破する人気ソフトウェアでした。しかし、時代が変化していくにつれ、モバイルアプリやウェブベースのメールサービスにその立場を奪われていっています。Mozillaおよびボランティアコミュニティは、現在のThunderbirdのユーザー数やダウンロード数を明らかにしていませんが、Mozilla自身が開発のリソースをFirefoxに集中させたいと考えているのはごく自然な流れと言えます。