動画

300年以上昔に象牙で作られた精巧な人体模型を3Dデータ化しようという試み


人体模型の歴史は古く、17世紀後半から18世紀初頭のヨーロッパでは人体の解剖図に則した模型が木や象牙で作られました。デューク大学の研究チームは、300年以上前に作られた人体模型22体をコンピュータ断層撮影(CT)を用いて調査して3Dデータを製作するプロジェクトを進めており、その調査結果を発表しました。

RSNA 2019 - Radiological Society of North America Annual Meeting | HealthManagement.org
https://healthmanagement.org/c/imaging/event/rsna-2019-radiological-society-of-north-america-annual-meeting


CT scans confirm 17th-century medical mannikins are mostly made of ivory | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2019/11/micro-ct-scans-reveal-the-secrets-of-17th-century-anatomical-manikins/


デューク大学の研究チームは、人体模型をスキャンする様子をムービーで公開しています。

Doctor Dolls, Coming Soon in 3-D - YouTube


今回調査された22体の人体模型は、1956年にデューク大学病院の外科医の個人コレクションから寄付されたものだとのこと。人体模型はどれも12~24センチメートルで、ものによっては腕が動くようになっているそうです。


体の中には、肺や腸といった内臓を再現したパーツが収まっています。


以下は同時期に作られた別の人体模型。今回の調査で用いた22体を含め、同時期の人体模型は全世界に180体存在すると確認されています。何百年も前の人体模型なので、いくつかの細かいパーツは破損してしまったり紛失してしまったりした様子。


腹部が膨らんだ女性の人体模型。


腹部のふたを開けると、横隔膜や胃、腎臓、子宮などの内臓のパーツが収まっていました。子宮の中には胎児も入っていて、絹糸で再現したへその緒で結びつけられています。


ベッドと人体模型を1つの象牙から掘り起こしたものもありました。本来人体模型は医療用の立体物ですが、「しわの寄ったシーツの上でうたたねする女性の像」とも解釈できるこの人体模型は鑑賞目的の芸術品という側面があった可能性が指摘されています。


この人体模型は内臓のパーツが比較的失われていないようで、腹部には心臓や肺、気管支、胃、肝臓、腎臓、子宮が詰まっていました。子宮には小さな胎児のパーツも収まっています。


デューク大学の研究者はCTスキャンをする前に、記録のために人体模型の外形をトレースし……


通常よりも高い解像度でCTスキャンが可能なマイクロCTスキャナーでスキャンします。


CTスキャンではマネキンの材質や構造を調査できるほか、X線を使って3次元的にデータ収集が可能。あらゆる角度からX線の撮影を行うことで、人体模型の詳細な3Dデータをゲットできます。


実際にX線で撮影するとこんな感じ。CTスキャンの結果、人体模型22体のうち20体は象牙を彫って作られたもので、残り2体のうち1体はシカの骨から、もう1体は象牙とクジラの骨から作られていたことがわかりました。また、人体模型によっては修理された痕跡があったそうです。研究チームは、人体模型が作られた17世紀後半では象牙は入手難易度が非常に高い素材だったと指摘。この人体模型は「17世紀から18世紀にかけて象牙がどのようなルートでヨーロッパに入ってきたのか」を知る手がかりになる可能性があると述べています。


ただし、どの人体模型も非常に古い上に破損しやすい部位も多いため、保管されているデューク大学の医学図書館で一般展示されることもほとんどありません。そこで、今回の調査には、デジタル形式で人体模型の形状を保存し、3Dプリンターで出力して展示用のレプリカを作成するという狙いもあります。実際に3Dプリンターで出力されたレプリカを見ると、人体模型の表情や子宮の中の胎児などもはっきりわかる精度で仕上がっていました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
理科室などによくあるあの「人体模型」をなぜか美少女フィギュア化してしまった「美人体模型」、内臓パーツも取り外し可能で医者の監修も進行中 - GIGAZINE

無料で人体の構造を立体的に隅々まで確認できる3D解体新書「HUMAN 3.0」レビュー - GIGAZINE

理科室にあるような人体模型の各パーツをストラップとして愛でられる「人体模型 ストラップI」 - GIGAZINE

Googleが筋肉や骨、臓器などの人体構造を詳細に把握できる「Body Browser」を公開 - GIGAZINE

マグロの解体が何度でも好きなだけできる「山和 解体フィギュア・黒マグロ」で解体しまくってみました - GIGAZINE

マグロの部位を遊びながら覚えられる「一本買い!!本マグロ解体パズル」レビュー - GIGAZINE

in 動画,   アート, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.