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Firefoxがウェブの未来のために戦う理由とは?

by geralt

ブラウザのシェアは2019年時点でGoogle Chromeが2位と大きな差を付けて断トツの1位となっています。2位となっているFirefoxは、これまでの歴史の中で盛衰を味わってきましたが、近年は「マーケットシェア」のためではなく「ウェブの未来」のための戦いを行っているとのこと。Firefoxの直面する戦いを、開発元のMozilla会長であるミッチェル・ベーカー氏が語っています。

Firefox’s fight for the future of the web | Technology | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2019/nov/17/firefox-mozilla-fights-back-against-google-chrome-dominance-privacy-fears

Mozillaの前身であるネットスケープ・コミュニケーションズは1994年に創設され、1998年にMozillaとなり、2004年にウェブブラウザ「Mozilla Firefox」のバージョン1をリリースしました。

Mozillaは2019年時点で、Google Chromeに続いて二番目に人気のブラウザですが、開発されてから2019年になるまで、その人気には波がありました。ネットスケープ・コミュニケーションズが開発していたNetscape Navigatorは1996年頃、市場を席巻するブラウザでしたが、1998年にナンバーワンの座をMicrosoftのInternet Explorerに明けわたします。その後、Internet Explorerとのシェアの差は圧倒的なものとなりますが、2004年に登場したFirefoxがじわじわとシェアを拡大し、2010年には市場全体の30%を占めるまでとなります。しかし、Google Chrome人気を前に、再び一位に輝くことはできませんでした。

過去20年にわたるブラウザの盛衰が一発でわかるグラフは以下の記事からチェックできます。

ウェブブラウザの栄枯盛衰が一発でわかるグラフ - GIGAZINE


また以下のムービーからも確認できます。

Usage Share of Internet Browsers 1996 - 2019 - YouTube


2019年第2四半期の時点で、Chromeのシェアが約70%、Firefoxが約10%となっています。


Firefoxの目下のライバルはChromeとなっているわけですが、Chromeが独占状態になるにつれ、Mozillaのミッションは単に「マーケットシェアを取り戻すこと」ではなく、「ウェブの未来を守ること」に変化しているとのこと。弁護士でありMozilla会長のミッチェル・ベーカー氏は、「インターネット時代の初期には、全ての企業やソーシャルネットワークが私たちを気にかけ、私たちのために行動してくれると考えられていました。しかし、徐々にそうではないことがわかってきました。私たちには守ってくれる存在が必要なのです」と述べています。

Chromeの開発を行っているのは、Googleの親会社であるAlphabetです。近年、Googleによる独占状態が頻繁に問題視されており、「AlphabetはGoogle検索とChromeをコントロールしてウェブの全てがGoogle経由で行われることを望んでいる」と現状を危険視する声も挙がっています。


たとえば、Googleが推進するAMPは、Googleのサーバー上でウェブサイトをホストしウェブサイトをGoogle経由にするため、全てのウェブサイトのURLが「google.com」で始まります。AMPを利用するとページの読み込みがわずかに速くなるため、Google検索結果の上位にページが表示される傾向にあります。このため、多くの企業はAMPを利用するようになっています。

Mozillaが懸念しているのは、Googleによるウェブの支配に対抗できる存在がいないこと。技術的には広告企業がユーザーの情報を収集するブラウザを作ることは可能ですが、ブラウザの開発元が広告企業である場合、そのような機能が提供されることはありません。


FacebookもまたGoogleと同様にユーザーの情報を広告に利用することに熱心であるため、FirefoxではFacebook Container拡張機能を使って、Facebookでの活動をコンテナータブに隔離し、FacebookがFacebook外のウェブ上でユーザーを追跡することを困難にしています。また、Mozillaは、オンラインアカウントが既知のデータ侵害を受けている場合に警告する「Firefox Monitor」や、パスワードマネージャー「Firefox Lockwise」、暗号化ファイル共有サービス「Firefox Send」などをリリースしたほか、VPNサービスを試験的に提供開始しています。

ベーカー氏は「ディストピア的な未来がやってくるリスクは、私たち全員にあります。小説『1984年』は、私たちの目の前にある1つの未来の可能性ではないでしょうか」と述べています。

ユーザーのプライバシー保護を重視している企業としては、Appleの名前も挙げられます。Appleが開発するSafariにはインテリジェント・トラッキング防止機能が実装されています。一見するとAppleとMozillaはよく似た目標を掲げるブラウザを開発していますが、ある意味でAppleはMozillaにとって、Googleよりも「危険な競争相手」とのこと。

by allybally4b

というのも、デスクトップコンピューターを利用するユーザーはGoogle Chrome以外の選択肢をいつでも選ぶことができ、AndroidスマートフォンにはGoogle Chromeがプリインストールされているものの、ほかのブラウザを使うことも可能です。

一方で、iOSにおいてFirefoxをインストールすることは可能ですが、iOSではSafari以外のブラウザをデフォルトに設定することができず、またiOS上で機能するブラウザはSafariのレンダリングエンジンを使わなければならないという技術上の制限も存在します。

Appleのスタンスは「あなたは私たちを信じるべきだし、私たちは他とは違う、よりよいものです」という一文に集約されるとのこと。このためAppleを通して提供されるものは優れていますが、少しでも異質なもの、Appleにあわないものはうまく機能しなくなります。Mozillaは、ブラウザをパワフルにすべく、これまでレンダリングエンジンの開発に多くの投資を行ってきていますが、AppleはシンプルにMozillaの技術を禁じて力を発揮できないようにしています。

最終的に、Google・Apple・Facebookなどさまざまなテクノロジー企業が関わる中で、Mozillaが今後どのように変化しているのかは、インターネットの規制も大きく関わってきます。ベーカー氏は当局の動きについて詳細を語りませんでしたが、「人々にとって役立つ製品の提供への助けとなっています」とコメントしました。

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in ソフトウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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