地球温暖化は熱帯地域にある都市に大きな経済的ダメージを与える

by VisionPic .net

地球温暖化が進行すると、極地の氷が溶け出すことで海水面が上昇したり、動植物の生息域が変化したりといった影響が出るとみられています。しかし、環境問題について研究する専門家らは、「地球温暖化が熱帯地域の都市に与える経済的ダメージも無視できない」と主張しています。

Urban growth, heat islands, humidity, climate change: the costs multiply in tropical cities
https://theconversation.com/urban-growth-heat-islands-humidity-climate-change-the-costs-multiply-in-tropical-cities-120825

地球上では人口の増加が進んでおり、これに伴って多くの人々が居住する都市部の開発も急速に進んでいます。記事作成時点では、陸地に占める都市部の割合は2％に過ぎませんが、それでも全人口の55％が都市部に住んでおり、全GDPの70％以上を生み出し、おまけに大量の温室効果ガスを排出しています。

以下のグラフは1990年、2018年、2030年(予測)の都市部に居住する人口と、人口1000万人を超える超巨大都市、人口500万人～1000万人の巨大都市、人口100万人～500万人の中規模都市、人口50万人～100万人の都市、人口50万人以下の都市の数を示したもの。都市の数が次第に増加しているだけでなく、都市部に住む人口も右肩上がりになっていることがうかがえます。

オーストラリアのジェームズクック大学で講師を務めるTaha Chaiechi氏とSilvia Tavares氏は、熱帯地域には地球上の全人口の40％が居住していると指摘。また、2050年にはその割合が50％にまで達する試算もあるとのことで、熱帯地域の都市は急速に拡大しているそうです。

このような熱帯都市はただでさえ気温や湿度が高い傾向にありますが、地球温暖化の進行によってこれまで以上に高温多湿の環境になっていくとみられています。たとえばオーストラリアの北東部に位置するケアンズは熱帯モンスーン気候に分類されており、2018年11月25日から12月3日にかけて9日連続で最高気温が35度を超え、うち4日は40度を超えました。

また、Chaiechi氏とTavares氏はケアンズの街中に気温センサーを設置し、オーストラリア気象局が発表するケアンズ市の最高気温と比較。すると、街中では気象局が発表した気温よりも一貫して高い気温が計測され、中には気温が45度に達する箇所もありました。このように、都市部の気温が郊外部に比べて高くなることはヒートアイランド現象と呼ばれており、都市部に住む人々は猛烈な暑さにさらされています。ヒートアイランド現象の原因は都市化に伴う地表の人工物化、排熱の増加、高密度化などとされており、街区の直線的なレイアウトも空気の流れを遮り、熱を閉じ込める要因になっているとのこと。

これまで、地球温暖化によって生じる問題として、環境問題や感染症の増加といったものが議論されてきました。しかし、Chaiechi氏とTavares氏は気候変動とヒートアイランド現象の相乗効果により、熱帯地域の都市部では社会経済的にも大きな悪影響が出ると考えています。

まず最初に考えられるのが、熱波が屋外労働者の健康を害することで生じる、熱中症などによる死亡者数や医療コストの増大といった問題です。これに加え、Chaiechi氏とTavares氏は経済生産にも熱波がダメージを与えると指摘しています。

カリブ海地域にある28カ国について調査した2010年の研究では、気温が1度上昇することで非農業分野の生産量が2.4％減少し、農業分野の生産量が0.1％減少したとのこと。また、2012年の研究では、最高気温が32度を超える日が6日間続くことで、その週の経済的生産量が8％も減少すると判明しました。

さらに、オーストラリア南東部のビクトリア州が発表した(PDFファイル)報告書では、2018年から2019年にかけての猛暑により、州の建築部門において1億300万オーストラリアドル(約76億円)の損失が発生したと指摘されています。また、ビクトリア州の州都であるメルボルンでは、熱波による年間の平均経済損失額が5290万オーストラリアドル(約39億円)に上るとされています。Chaiechi氏とTavares氏は、高い気温が経済的にも深刻なダメージを及ぼしており、今後も熱帯地域の都市では熱波による経済損失が増加していくだろうと述べました。

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