樹齢9500年以上の「Old Tjikko」が枯れない理由とは?
スウェーデンで最も古い木とされる「Old Tjikko」は、樹齢9500年以上の木です。古い木というと屋久島の縄文杉のような巨木をイメージしがちですが、Old Tjikkoは高さ約5メートルで幹は細く、見た目からは9500年以上も生きているようには思えません。Old Tjikkoが何千年も生き続けることができたのは、その特殊な生存戦略に理由があるとのことです。
Oldest living trees - Fjäll och trädgränser i ändrat klimat
http://www.kullmantreeline.com/empty_8.html
The World’s Oldest Tree Lives in Sweden | Swedes in the States
https://swedesinthestates.com/the-worlds-oldest-tree-lives-in-sweden/
樹齢9500年を超えるOld Tjikkoは、物理地理学の教授であるレイフ・カルマン氏によって2004年に発見されました。Old Tjikkoという名前は当時カルマン氏が飼っていたシベリアンハスキーの「Tjikko」にちなんで名付けられたもの。生物学的には「オウシュウトウヒ」と呼ばれる針葉樹の一種であり、主にスウェーデンのダーラナ州、フルフジェーレット山脈に生息しています。
カルマン氏は「ここ100年に起こった気候変動による生態系の変化を知るには、はるか過去に起こった気候変動に対し、樹木がどう反応したかを調べる必要がある」と考え、調査を行っている人物。ダーラナ州のフルフジェーレット山脈で4本のオウシュウトウヒを発見したカルマン氏は、木片を炭素14法と呼ばれる年代測定法で分析しました。この結果、それぞれの木の樹齢は375年、5660年、9000年、9550 年であることが示されたとのこと。
これがOld Tjikko。高さは約5メートルで「10000年近く生きている」とは想像もつかない見た目です。
実はオウシュウトウヒは単一の木ではなく、同一の根から幹、枝を再生するクローンを形成しているとのこと。オウシュウトウヒの幹の寿命は600年とされており、幹が枯れても根から同じ遺伝子を持った若木を生やすことで生き続けます。カルマン氏は「過去1万年は寒冷な夏が続きました。オウシュウトウヒの木々は1つの幹が死んでも別の幹を生み出すという能力があったために、厳しい状況を生き抜くことができたのです」「大木はこんなに長く生きられません」と述べるとともに「我々の研究結果は、ある種のオウシュウトウヒが火事・病原体・虫の害に影響されない『永遠の命』を持っていることを強く支持します」ともコメントしています。
一方で、Old Tjikkoが樹齢約9500歳だとするカルマン氏の研究に対しては疑問の声も挙がっています。
How old is Old Tjikko? - Tom Kimmerer
https://kimmerer.com/how-old-is-old-tjikko/
森林の研究者であるトム・キマーアー氏はまず、現存するOld Tjikkoの樹齢自体は80年ほどであり、Old Tjikkoの周囲の土に含まれていた木片の樹齢が約9500年だったことについて言及しました。この木片がOld Tjikkoのものだとする考えは「仮説」にすぎず、これまでに発表されている研究をみても、2つが遺伝的に同一であるという証拠は示されていないとのこと。インターネット上にはOld Tjikkoを最古の木の1つとして扱う情報が多く存在しますが、「Old Tjikkoの樹齢が80年以上だという証拠はない」とキマーアー氏は主張しています。
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