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「木は何を体験しているのか」をリアルタイムで収集して年輪として可視化する「Voice of Nature」


木は長年にわたって一つの場所にとどまり続け、年輪に過去の気候変動や山火事等の痕跡をとどめています。オランダのアムステルダムを拠点に活動するアーティストのThijs Biersteker氏が、そんな木をモニタリングして作り出すデジタルアートを作り出しました。

This Tree Produces Psychedelic Art By Using Sensors to Monitor Its Own Health - Motherboard
https://motherboard.vice.com/en_us/article/59v4zd/this-tree-is-an-artwork-thijs-biersteker

木の断面に現れる年輪は1年に1つずつ増えていき、その成長度合いを見ることで過去に木が経験した気候変動や山火事など、さまざまな出来事を知ることができる「木のレコードキーパー」ともいえる存在です。人間が長いスパンでの気候変動を感じることは難しいものですが、年輪を見ることで年単位のスケールでの気候変動を見ることが容易になります。

さらにBiersteker氏は、「木がリアルタイムで気候変動について知らせてきたらどうなるだろうか」と発想しました。Biersteker氏は1400万人もの人口を誇る中国の都市・成都インスタレーションデジタルアートを設置することにしました。

現地に立っている1本の木を選び出したBlanchard氏は、根・葉・枝などに大量のセンサーを設置し、全部で1600ものデータポイントから木が発するデータを収集したとのこと。CO2濃度や温度、土壌の湿度や当たっている光量といった周囲の環境条件を反映したデータは、特別なアルゴリズムを通してリング状のデジタルデータとして出力されます。


Biersteker氏が作ったアートが実際に展示されている様子がこれ。

Voice of Nature . βº1-version


木の背後にあるディスプレイに、ゆがんだ白線が表示されています。


遠くから見ると、地面から伸びる光の線が、木の背景に広がる円形のディスプレイにつながっていました。白い線は木の中央から外側へと、同心円状に広がり……


時にディスプレイに表示される模様が変わります。


Biersteker氏は1つの木に12個のセンサーを取り付け、1600ものデータポイントからデータを収集するようにしました。


木の葉




土壌など、木そのもの以外の環境からのデータも取得。


データをアルゴリズムに通すと……


年輪のデジタルデータとして出力されます。


木からリアルタイムのデータを取得してデジタルの円に反映させるこの試みは、「リアルタイムの年輪」ともいえるもの。


気候変動について人々に訴えかけてくれます。


デジタルの年輪はゆがみながら中心から周囲へ広がっていき……


近くの道路を車が通る光などにも反応して形を変えます。


時にはサイケデリックな色まで浮かべる模様。


デジタルの円はきれいに同心円状に広がっていれば広がっているほど、木が健康に育って生長しているということを意味します。


しかし、アートとしては円がゆがんでいるほど美しく見える点が皮肉だと、Biersteker氏は述べています。


グニャリとゆがんだいくつもの円が重なり合い乱れる様子を見ていると、なんだかとても幻想的。


色や姿を変えて立ち現れるデジタルリングは、人々に環境への配慮を思い起こさせてくれます。


リングの位置や波形にはそれぞれ意味があり、木や周辺環境の状況をリアルタイムで教えてくれるようになっています。


「VOICE OF NATURE(自然の声)」と題されたこのアートはデルフト工科大学との共同で行われており、木を傷つけることなくデータを収集したとのことです。

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in 生き物,   動画,   アート, Posted by log1h_ik

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