サイエンス

木はたとえ切り株になっても森の一部となって生き続けることが判明

by David J

植物は生い茂った葉で光合成を行い、根から吸い上げた水や栄養を元にエネルギー源を生合成します。そのため、何らかの理由で葉を失ったり、木の一部が枯れて切り株になってしまうと、栄養を作ることができなくなって死んでしまうように思えます。しかし、「切り株は死んでしまっているように見えて、実は森という大きな超有機体の一部として生き延びている」ということが研究によって明らかになりました。

Hydraulic Coupling of a Leafless Kauri Tree Remnant to Conspecific Hosts: iScience
https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(19)30146-4


A tree stump that should be dead is still alive; here's why
https://phys.org/news/2019-07-tree-stump-dead-alive.html

オークランド工科大学のセバスティアン・ロイツィンガー准教授が同僚のマーティン・ベイダー氏と一緒にウェストオークランドでハイキングをしていたところ、「カウリ」と呼ばれる木の切り株を見つけたそうです。ロイツィンガー准教授は、切り株が葉を持っていないのもかかわらず生きているのを見て、奇妙に思ったとのこと。

そこで、ロイツィンガー准教授とベイダー氏は、同じカウリの切り株とその周囲にあるカウリの木を対象に、内部の水分移動量を測定することで、近くの木がどのように切り株を生存させているかを調査しました。その結果、切り株の水分移動は周囲の木の水分移動と負の相関があったことが判明しました。

以下の画像は、昼間における樹液の流れと量を示したもの。グラフの上は周囲にある木の樹液の相対流量で、下が切り株内の樹液の相対流量を示しています。周囲の木に流れる樹液の流量が増えるほど、切り株に流れる樹液の流量は減っていることがわかります。


夜間の場合でも、切り株と周囲の木で樹液の流量に相関関係があることがわかります。つまり切り株は、地面から上の部分は死んでいるように見えても根は生きていて、吸い上げた水分は切り株ではなく周囲の木に水や栄養分を送り込んでいるというわけです。


このことからロイツィンガー准教授は、切り株と周囲の木が同種であれば、木の根はまるで接ぎ木のようにつながる「相互接続性」を持っていると論じています。木は近くの根の組織が遺伝的に異なっていても、資源の交換が可能なレベルで類似していれば、木と木の間に移植片が形成されてつながるとのこと。

by Gordon Robertson

「木の根が相互接続性を持つという事実は、私たちが木に抱いている認識に大きな影響を及ぼします。つまり、木を個として扱うのではなく、森を超有機体として扱うべきです」とロイツィンガー准教授は述べました。

根がつながり合えば、木の根のネットワークが広がり、山の急な斜面でも木は安定して生えることができます。さらに、根のネットワークが森全体を覆うことで、水や栄養素など多くの資源にアクセスがしやすくなります。そして、たとえネットワークに属する木の1本が葉を落としてしまい、光合成ができなくなって炭水化物を供給できなくなっても、周囲の木から「おこぼれを預かる」ことで生き続けることが可能となります。

相互接続性によって、干ばつが起こった場合や水を見つけられなかったりする木がある場合でも、他の木とつながることで資源を共有して生存する機会が増えるといえます。一方で、ロイツィンガー准教授は「相互接続性には病気の急速な拡大も可能にしてしまう」というデメリットも指摘。「木が相互につながっているという事実は、気候変動と干ばつの頻度と深刻さが増すリスクについてさらなる研究を求めるものです。これは私たちが木の生存と森の生態を見る方法を変えます」と語りました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1i_yk

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