観測史上2例目の「恒星間天体」の撮影にハッブル宇宙望遠鏡が成功
一般的な彗星は太陽系に属する小さな天体であり、太陽を中心に一定の公転周期で回っています。しかし、太陽系外から飛来して太陽系に接近する「恒星間天体(恒星間彗星)」という彗星が存在することも知られており、観測史上2例目となる恒星間天体の「ボリソフ彗星」が、ハッブル宇宙望遠鏡によって撮影されました。
Hubble Observes 1st Confirmed Interstellar Comet | NASA
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/hubble-observes-1st-confirmed-interstellar-comet
恒星間天体は恒星などの天体に重力で束縛されていない天体であり、75年周期で地球に接近するハレー彗星などとは違い、一時的に恒星や惑星の付近を通過しても、過ぎ去った後は再び戻ってくることはありません。記事作成時点の観測技術では、太陽系内を通過した恒星間天体のみを検出可能とのこと。
観測史上初めて恒星間天体であることが確認されたのは、2017年10月19日に発見された「オウムアムア」という小天体です。地球に最接近したのは発見前の10月14日だったそうで、発見時にはすでに地球から遠ざかりつつありました。それでも、理論的に存在が考えられていたものの未観測だった恒星間天体の発見に、多くの研究者が注目しました。
太陽系外から飛来した小天体「オウムアムア」は葉巻型で岩石質か金属質 - GIGAZINE
そして2019年8月30日、アマチュア天文学者のGennady Borisov氏が自作の望遠鏡により、新たな彗星が発見されます。世界中のプロやアマチュアの天文学者らがこの彗星を観測し、スミソニアン天体物理観測所が運営する小惑星センターやアメリカ航空宇宙局(NASA)の地球近傍天体研究所などが軌道を計算した結果、新たに発見された彗星は恒星間天体であることが確認されました。
観測史上2例目となる恒星間天体は、発見者であるBorisov氏の名前から「ボリソフ彗星」と名付けられ、多くの天文学者らの注目を集めています。そんなボリソフ彗星を、地球から2億6000万マイル(約4億1800万km)離れた位置でハッブル宇宙望遠鏡が観測したとのこと。
ハッブル宇宙望遠鏡の撮影画像を使ったムービーも公開されています。
Hubble's New Image of Interstellar Object - YouTube
ボリソフ彗星は時速11万マイル(約17万7000km)もの高速で移動しており、太陽系外から飛来した天体として、他の星系に存在する惑星の化学組成、構造、ちりの特性などに関する重要な手がかりをもたらす可能性が指摘されています。
太陽系外から飛来したボリソフ彗星は、2019年12月7日に地球へ最も接近します。
最接近時の地球との距離は1億9000万マイル(約3億600km)ほどとなる見込みで、これは地球と太陽の距離の約2倍。ハッブル宇宙望遠鏡によるボリソフ彗星の観測は、2020年1月まで継続される予定です。
ハッブル宇宙望遠鏡などの観測結果からは、ボリソフ彗星は太陽系の構成要素や特性と類似しているように見えるとのこと。
観測チームのメンバーであるMax Mutchler氏は、「新しい彗星は常に予測不可能です」「初めて太陽の強い熱にさらされることにより、急に発光したりバラバラになったりすることもあります」と述べました。
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