サイエンス

木星に450トンもの巨大隕石が衝突していたことが偶然撮影されたムービーから判明


2019年8月、アマチュア天体写真家のイーサン・シャペル氏が木星の表面上で発生した発光現象を映像で捉えました。2019年9月15日から20日にかけてスイスで開催された惑星科学会議「EPSC-DPS Joint Meeting 2019」で、この8月に確認された発光現象が「木星に隕石が衝突した証拠だった」と発表されました。

Jupiter 2019-08-07 04:28 UTC - Chappel Astro
https://www.chappelastro.com/astrophotography/solar_system/jupiter/2019/2019-08-07_04:28:06/


Stony-iron meteor caused August impact flash at Jupiter – Europlanet Society
https://www.europlanet-society.org/stony-iron-meteor-caused-august-impact-flash-at-jupiter/


We Now Know What Smashed Into Jupiter Last Month
https://www.sciencealert.com/astronomers-have-figured-out-what-smashed-into-jupiter-last-month


木星の発光現象は2019年8月7日4時7分(協定世界時)、シャペル氏がペルセウス座流星群を観測していた際に偶然撮影されたとのこと。発光自体は一瞬でしたが、木星にみられるわずかな影響を可視化できるオープンソースソフトウェア「DeTeCt」によって初めて明らかになったそうです。

木星に何かが衝突した痕跡とみられる発光現象は以下のムービーで見ることができます。

Impact on Jupiter on 2019-08-07 at 4:07 UTC (Correct Speed) - YouTube


以下の画像に写っているのが木星。平行に並んだしま模様が特徴的です。


木星の左下に一瞬光点が生まれ、すぐに消えていきます。


木星から7億5000万kmも離れた地球にまでその光が届いたということは、その発光現象がかなりのエネルギーを発したということを意味します。シャペル氏が撮影したムービーは、フロリダ工科大学の天文学者チームによって1カ月にわたって分析されました。


その結果、発光現象は「木星に直径12~16メートル・450トンほどの石鉄隕石が衝突した痕跡」だったことが判明。隕石は木星の雲上80kmで崩壊し、衝突時に放出されたエネルギーはTNT換算で240キロトンだったとのこと。これは1945年8月に広島に落とされた原子爆弾のおよそ16倍ものエネルギーに相当するそうです。

Impactor estimated to be a 450 ton asteroid 12-16 meters across.
Disintegrated 80 kilometers above the clouds.
Energy released equivalent to 240 kilotons of TNT.
First impact discovered with software.

— Chappel Astro (@ChappelAstro)


サザンクイーンズランド大学の天文学者であるジョンティ・ホーナー氏は「木星への天体衝突はわずか数秒で、非常に短いものです。天体望遠鏡のレンズを通して観測していても、ほとんどの場合は気づかれません」と述べ、今回の発光現象が偶然に撮影されたことに驚いています。


木星への天体衝突が確認されたのは、今回が初めてではありません。宇宙観測史上初めて木星への天体衝突が確認された例は、1994年に起こったシューメーカー・レヴィ第9彗星の衝突です。惑星科学者のユージン・シューメーカー氏とデヴィッド・レヴィ氏によって1993年に発見されたシューメーカー・レヴィ第9彗星は、1960年代後半から1970年代初頭にかけて木星の重力圏につかまり、分裂した核が1994年7月に衝突しました。

また、2012年9月には木星に天体が衝突した結果と思われる発光現象が確認されました。これは彗星や流れ星、もしくは小型の小惑星といった極小の天体が木星に衝突したために発光現象が発生したのではないかと推測されています。2012年に確認された木星の発光現象が以下のムービー。

Jupiter impact 9/10/2012 - YouTube


今回シャペル氏が捉えた発光現象は本当に一瞬のものですが、木星への天体衝突としては観測史上2番目の明るさだったとのこと。DeTeCtを開発したアマチュア天文学者のマーク・デルクロア氏は「今回の発見によってアマチュア天文学者のコミュニティが活気づき、観測者の数と処理されるデータの量が急速に増加しています。より多くのアマチュア天文学者が日常的にDeTeCtを使うことで、木星や土星の映像観測の分析によって発見されたわずかな影響が天体研究に生かされることを望んでいます」とコメントしています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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