赤身肉を食べてもがんリスクが増大することはないという研究結果

by Sven Brandsma

肉を食べることが健康にいいのか悪いのかは両論あるところで、たとえば世界保健機関(WHO)は赤身肉と加工肉を「がんの原因」に挙げていますが、国際研究チームが世界中の研究を集めて内容を精査し、赤身肉や加工肉の消費量を減らす必要はないという結論を出しました。

Red and Processed Meat Guideline Recommendations | Annals of Internal Medicine | American College of Physicians
https://annals.org/aim/fullarticle/2752328/unprocessed-red-meat-processed-meat-consumption-dietary-guideline-recommendations-from

Uproar after research claims red meat poses no health risk | Food | The Guardian
https://www.theguardian.com/food/2019/sep/30/research-red-meat-poses-no-health-risk

Beef and bacon healthy? A fight raging in nutrition science, explained. - Vox
https://www.vox.com/science-and-health/2019/10/1/20893070/beef-bacon-red-meat-health-effects

これは、カナダのハリファックスにあるダルハウジー大学のブラッドリー・ジョンストン准教授ら14人の国際チームによる研究です。

アメリカの食事ガイドラインで、加工肉を含む赤身肉の摂取が週1回程度に制限されていたり、イギリスで赤身肉・加工肉の摂取量が1日70gに制限されていたりと、現代の栄養ガイドラインは赤身肉・加工肉の消費を制限する方向に向いており、WHOの国際がん研究機関では赤身肉を「おそらく発がん性あり」、加工肉を「発がん性あり」とみなしています。

ジョンストン准教授らは、こうした制限の信頼性に疑問を持ち、臨床・栄養・公衆衛生に関する専門知識を持って信頼できる栄養ガイドラインの推奨を目的とした独立系グループ・NutriRECSの開発プロセスに基づいて、他の研究者から見ても「徹底的」と称されるガイドラインを作成し、赤身肉と加工肉に関する過去の論文のレビューを実施しました。

その結果、18歳以上の人については、これまで通りの赤身肉・加工肉の消費を続けるべきであるという結論に達しました。これは、14人中11人が投票したもので、3人は赤身肉・加工肉の消費を減らすべきという弱い勧告に投票しました。

調査では、赤身肉の少ない食事は心疾患のリスクにほとんど、あるいはまったく影響を与えない可能性があったほか、赤身肉の摂取量を減らしたことによるがん死亡率の減少割合は非常に小さいこともわかったとのこと。

by Kay

レディング大学のギュンター・クーン教授は、今回の研究を「徹底したもの」と評価した上で、「データからは、肉とがんとの関係は喫緊の対処が必要なものではありませんが、無視すべきではないともいえます」とコメント。有害性の可能性を示している弱い証拠も考慮に入れるべきだと述べました。

また、世界がん研究基金の研究責任者であるGiota Mitrou博士は「『好きなだけ赤身肉・加工肉を食べてもがんのリスクは増加しない』と広言することは、人々を危険にさらす可能性があります」と、今回の研究内容を否定的に受け止めています。

イングランド公衆衛生サービスの栄養化学部長であるルイス・レヴィ教授も「世界的に見て、赤身肉・加工肉を食べる人は摂取量を控えるべきだという証拠があります。食べ過ぎると大腸がんの発生リスクが高まるので、食事ガイドラインに基づいた、健康的でバランスの取れた食事を取ることが、長期的な健康に最適です」と述べています。

なお、肉食を巡っては健康上の理由ではなく、畜産業による温室効果ガスの排出を理由として、地球温暖化防止のために肉の消費減を求める意見も出ています。