肉は本当に健康に悪い食べ物なのか?
「肉が主食!」という人でも、肉が健康に与える影響は気になるところ。科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtが「肉を食べることは健康に悪いのか?」という問題についてアニメーションで解説しています。
Is Meat Bad for You? Is Meat Unhealthy? - YouTube
およそ200万年前、植物しか食べなかった人類の祖先は、必要性から肉を食べ始めました。
植物は気候の変化の影響を大きく受け、しばしば採取できない場合があったことがその理由です。
肉が日々の食事の中で主要な位置を占めるようになったのは火の発見以降のことです。
しかし、この数年、肉を食べることは心臓疾患やある種のガン、短命などに大きく関係しているといわれるようになりました。
実際のところ、肉が健康に与える影響とはどれくらいなのでしょうか。
人間の身体が肉を必要な理由は、生物学的には3つあります。
1つ目はエネルギー源として。2つ目は細胞の原料になる栄養を摂取するため。3つ目は体内で生成できない分子を得るためです。
エネルギー源と細胞の原料になるものは、脂肪・炭水化物・タンパク質。
体内で生成できない分子とは、多数のビタミンとミネラルです。
肉は、身体に必要な脂肪・炭水化物・タンパク質・ビタミン・ミネラルのほとんどを含んでいます。
ビタミンB12など、野菜にはほとんど含まれない栄養も肉にはあります。
肉に含まれていない栄養の中で、我々の肉体に不可欠なものはビタミンCだけ。ビタミンCは身体の免疫系が適切な働きをするのを助けてくれる栄養素で、ほとんどすべての植物に含まれます。
ビタミンCを数カ月摂取しないと、壊血病に陥ってしまうので、野菜もまた必要です。
肉のもう1つの大きな利点は、いくつかの栄養は、野菜よりも肉から摂取するほうが消化吸収が早いということです。
たとえば、ほうれん草は肉よりも多くの鉄分を含んでいますが、消化吸収が遅い上、消化には多くのエネルギーが必要になります。
以上のように、肉それ自体は人間にとって危険なものではありません。
しかし、肉が健康に与える実際の影響は、肉が「どのように調理されたか」や「何の肉なのか」によって変わります。
動物の中で最も健康に良いものは、おそらく魚です。
魚は循環器系疾患のリスクを引き下げ免疫機能の抗炎症効果があるω-3脂肪酸などの不飽和脂肪酸を含んでいます。
魚を定期的に食べることに関しては、何の心配も要りません。
一方で、漁業は、魚の乱獲や海洋汚染などさまざまな環境問題を抱えています。
魚に続く2位に輝いたのは鶏肉です。
鶏肉は肉の中では最もヘルシーといわれています。
鶏肉の唯一の問題点は、「脂肪」です。
脂肪は血中の総コレステロール値や、循環器系の疾患に関係があります。
しかし、「総コレステロール値は脂肪の摂取量か遺伝のどちらと関連性が強いのか」いう問題はいまだに決着がついていません。
いずれにせよ、肉を食べるときに健康のことを気にするのであれば、鶏肉にするべきです。
一方、牛肉、豚肉、ラム肉、馬肉、羊肉などの未加工肉である赤肉を多く摂取すると、健康上の問題が現れ始めます。
最近発表された研究によると、赤肉の1日の推奨摂取量はたった23gとかなり少なめ。
多数の研究を統合分析したメタ解析によると、1日に赤肉を100グラム食べると……
脳卒中のリスクは11%、糖尿病は19%、直腸ガンのリスクは17%上昇するとされています。
これだけ聞くと赤肉を食べることはかなり危険に思えますが、パニックになる前に「食事に関する研究の方法」を詳しく見ていきましょう。
赤肉を食べることについての研究のほとんどは、問題の病気を患った人に食事習慣についての聞き取り調査を行って結果を分類するというケースコントロール研究です。
この研究方法の問題は、食事習慣以外の要因が考慮されにくい点です。
「あまり肉を食べません」と回答してくれた人は、健康に気をつかった生活を送っており、野菜や果物をよく食べ、喫煙率や飲酒率は低くなる傾向があります。こういった食事習慣以外の「その他の要因」は健康に影響を与えていますが、どれが健康に影響があるかは不明瞭です。
もちろん研究者は「その他の要因」を排除するために努力を重ねていますが、状況はかなり困難です。
また、「肉が加工されているかどうか」という問題もあります。
加工肉は味を良くするため、食品加工の過程で人体に有害な添加物が使われます。
硝酸塩や亜硝酸塩は人体の消化システムのDNAにダメージを与えて、ガンを引き起こします。
世界保健機関(WHO)はこの20年間で800もの研究を審査し、ソーセージなどに使用される加工用の小麦が直腸ガンのリスクに強く関連していると結論づけました。
加工肉を毎日50g多く食べるごとに、ガンのリスクは18%上昇するとのこと。
加工肉は脳卒中のリスクを13%、糖尿病は51%、心臓疾患のリスクは42%増加させます。
赤肉と加工肉の両方を多量に摂取すると、75歳以下で死ぬリスクは29%も上昇します。
これはあなたが今年死ぬリスクが3%だったとしたら、肉を食べることで死ぬリスクが4%になるということです。
大きな差に思えないかもしれませんが、社会全体で考えると死者の数がグッと増加します。
肉自体には、脂肪以外の「不健康のもと」が含まれているという証拠はありません。また、脂肪が不健康かどうかについても議論が続いています。
過ぎたるは猶及ばざるが如しなのは、肉を食べることも他の楽しいことも同じです。
ほとんどの衛生行政機関は、肉は1週間に500gまでとしています。しかし、最近の研究では加工肉は食べるべきではないとされています。
あなたが肉をたくさん食べるのを週1回か2回に控えておけるなら、おそらくは大丈夫ですが……
平均的なアメリカ人は週に1600gの肉を摂取しており、大きな変革が必要です。
自分がどれだけ肉を食べていないかについて把握していないなら、肉を食べたときにメモをとることがオススメです。
そうすれば、どれだけ自分が肉を食べているかに気づけます。
肉を消費することは、健康上の問題だけではありません。畜産は気候変動に大きく影響を与えていますし、動物の権利に関わる問題もあります。
結論としては、ほどほどに食べるならば肉は不健康なものではないので、一夜にしてベジタリアンに転向する必要はありません。
しかし、自分のライフスタイルを決めることは、自分のためにも、そして他人のためにも重要です。
その鍵となるのは、「たまには新しいことに取り組んでみる」ということです。食べたことがないものの中にも、おいしいものがあるかもしれません。
試してみるまで、「自分に何ができるのか」や「自分にとって何が楽しいのか」はわからないものです。
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