スマートテレビがユーザーの情報をNetflixやGoogleにこっそり送信していたことが判明

by Marco Verch Professional Photographer and Speaker

スマートテレビや一部のストリーミングデバイスが、NetflixやAmazon、Google、Facebookなどにユーザーの視聴履歴や位置情報などの個人情報を送信していたと、ノースイースタン大学とインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者が発表しました。

Information Exposure From Consumer IoT Devices:
(PDFファイル)https://moniotrlab.ccis.neu.edu/wp-content/uploads/2019/09/ren-imc19.pdf

IoT Information Exposure (IMC ’19) – Mon(IoT)r Research Group
https://moniotrlab.ccis.neu.edu/imc19/

Smart TVs sending private data to Netflix and Facebook | Financial Times
https://www.ft.com/content/23ab2f68-d957-11e9-8f9b-77216ebe1f17

ユーザーのデータを送信していたと指摘されたのは、SamsungとLGエレクトロニクスのスマートテレビ、ストリーミングデバイスであるAmazon Fire TVやRoku Streaming Stickです。研究者によると、これらのデバイスはユーザーの位置情報やIPアドレスなどを含むデータを、Netflixのアカウントを持っているかどうかにかかわらず、Netflixやその広告主であるAmazonやGoogleに送信していたとのこと。また、スピーカーやカメラを含む他のIoT端末の中にも、MicrosoftやSpotifyなど多数のサードパーティーにユーザーのデータを送信しているものがあったとのこと。

by Andri Koolme

スマートテレビによるユーザーデータの収集は以前にも問題になったことがあり、アメリカの液晶テレビメーカーであるVIZIOのスマートテレビは、「ユーザーに無断でコンテンツ視聴情報を収集していた」として違約金を支払う事態に発展しました。VIZIOのCTO(最高技術責任者)であるビル・バクスター氏は、「スマートテレビが通常のテレビよりも市場価格が安いのは、『ユーザーの視聴履歴が集計され、そのデータをメーカーが高額で売る』というビジネスモデルによって、テレビの利益率を抑えることができるようになったため」と暴露しています。

テレビがユーザーの詳細なコンテンツ視聴データを秘密裏に収集した件で違約金支払い、集団訴訟に発展する恐れ - GIGAZINE

さらにプリンストン大学による別の調査では、Amazon Fire TVやRoku Streaming Stickがサポートする一部のアプリがユーザーを識別できるようなデータを、Googleを含めたサードパーティーに送信していることが発見されています。ただし、スマートテレビやストリーミングデバイスが送信しているデータの多くは暗号化されているため、具体的にどういったデータが送信されているのかを正確に把握することは不可能だとのこと。

2019年3月に調査会社のNielsenが公表したレポートによると、アメリカの世帯のうち約68％が、Apple TVやRokuといったストリーミング配信を視聴できる外付けのストリーミングデバイスを所有しているとのこと。こうしたストリーミングデバイスの何千万台もが、ユーザーの視聴した番組すべてを追跡するコンテンツ認識技術を使い、広告のターゲットを絞り込めるようにしているとFinancial Timesは指摘しています。

by Mike Mozart

Financial Timesの取材に対して、Netflixは「NetflixにサインインしていないスマートテレビからNetflixが受け取る情報は、Netflixのパフォーマンス、および画面上での表示方法に限定されます。それ以外の情報は受け取っていません」とコメント。また、Facebookは「デバイスやアプリが、統合されているサードパーティーのサービスにデータを送信することはよくあることです。例えばログインインターフェースを生成するためにFacebookにデータを送るアプリや、いいねボタンを設置しているアプリもあります」と回答。

そして、Googleは「スマートTVアプリの開発者はGoogleの広告サービスを利用して、コンテンツに合わせて広告を表示したり、広告のパフォーマンスを測定したりできます。ユーザーがデバイス上で選択した好みに応じて、パブリッシャーはアプリやウェブ広告に使われるデータに似たものをGoogleと共有することができます」と述べ、「デバイスのメーカーやアプリの配信者によっては、Googleに送信するデータの中にユーザーの位置やデバイスの種類、特定のアプリ内でユーザーが見ているものなどを含む場合があり、これによって広告のターゲティングをよりパーソナライズできます」と答えました。

オックスフォード大学のコンピューター科学者であるマックス・ヴァン・クリーク氏は「人はスマートテレビやストリーミングデバイスにますます多くの時間を費やすようになり、こうしたデバイスは家の中の重要な場所に置かれます」とコメントし、「スマートデバイスが個人データを保存・共有していることはほとんど注目されていません。状況は悲惨です」と述べました。